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樹木の、チートシート

8月、ホロカトマム山林の昆虫類調査で、植物層と昆虫類の組み合わせでのマッピングができたらいいなと考えているのですが、せっかく2年にわたりBenに調査してもらった植物たちが全然頭に入っていないため、急いでチートシートを作成しています。

チートシート=虎の巻、早見表、もしくはカンニングペーパー。チラ見をするだけで記憶にたどり着く、自分のための、自分用のまとめ表のことを指します。

人を恐れて逃げる、もしくは夜行性のため、ほぼ一瞬しか出会うことのない動物類と違い、植物はいつ出かけてもいつもそこで我々を迎え入れ、短い間、長い間を問わず好きなだけ眺めていることができるのですから、そして、一度きりしか訪ねることがない場所と違い、うちの山はうちの山、このカーブを曲がった先にあるこの木はこれという覚え方もできるわけです。初心者にも取り組めるまずは基本のき。

ほぼ肉眼では困難なコケ類は最後の最後に余裕があれば表を作ることとして、一番とっつきやすい樹木からチートシートを作りました。ホロカトマム山林内で見つけることのできる樹木は31種類。

植生調査をしてくれたベンは、さすが日本はホットスポットと大感激。

「スコットランドで31種の樹木をみるには東西南北隅々までスコットランド全国土の広さを含めないと無理だけど、日本ではたったの50ヘクタールの中に31種も見つけることができるなんて、すごいな」

と言ってくれたのです。

私のチートシートはこんな感じ

チートシート

Acer=もみじ類だけで4種あり、葉っぱの切れ込みの数が5、7、9の違いであったり、シワぽいイメージだったり。イタヤカエデについては誰かが、小雨が降ってきたらイタヤカエデの木の下で雨宿りができるよう「板で作られた屋根のよう」から命名されたと教えてくれて、イタヤカエデの葉を見るたびにその教えを思い出します。まあ、問題はスコットランド人の昆虫博士クレイグを案内する際に、クレイグに通じるようにラテン語で「Acer Pictum」と出てこないといけないので、チートシートをチラ見です。


イタヤカエデ Acer Pictumの葉っぱは切れ目が浅い



Benは別枠で学術的ではないレポートも作ってくれて、ベンのコメントも面白い。例えば、スコットランド人の植物学者として、おいおい、これはあり得ないだろう?と思ったという2種の樹木。

(1)ハリギリ と、(2)ホオノキ


(1)ハリギリはベンのレポート内ではこういうページになっておりまして

イギリス人の私にとって、その辺の自然にある樹木が幹にトゲを持ち、大きな星型の葉を持ち、黒く熟した実を実らせるとはあり得ない . . . 。英語名が prickly castor oil tree =トゲのあるひまし油の木という名前を見た時に、ちょっと変だと思っていましたが、本当に存在していて、驚きました。これに比べると、イギリスの樹木は地味だなあ。

(2)ホオノキはこんな感じになっております

ホオノキも私の中ではこの世にあり得ない木。葉は巨大(30cm以上のものも)でスムースな縁を持つ楕円形で、すぐに同定できます。巨大な葉は5〜8まとまって枝の先に育ちます(輪生体 whorls)。 葉は秋には茶色に変わります。夏には目を見張るような大きな白い花をこの輪生体の中央に咲かせ、 後に濃いピンク色の円錐状の実になります。実の中には赤い果実がたくさん入っているのです。すごい!

私もホオノキは本当に大好きで、30cm以上もある巨大な葉っぱを見るたびに感嘆し、マグノリアの白い花に感動し、大きな実にわなわなします。だからBenの感想にも、うんうんと頷いてしまいます。


ところで、note内でこんな素敵記事に出会いました。

なんと、北海道の針葉樹の解説です。しかもわかりやすく針葉樹御三家とな。

チートシートで言えば最後の方の28、29、30

針葉樹御三家のトドマツ、アカエゾマツ、エゾマツ

トドマツは、日照条件が良い林縁・ギャップが大好きな、典型的なパイオニア樹種タイプ。→葉っぱが直線

アカエゾマツは、湿地・溶岩流跡地・海岸沿いなど、他の樹種が生育できないような過酷な環境に積極的に進出する、チャレンジャータイプ。

エゾマツは、肥沃な平地・緩斜面で悠々と生活する、おぼっちゃまタイプ。→葉っぱがカーブ

日本花卉文化株式会社さんの記事より

ホロカトマム山林内にはほぼ自生するアカエゾマツはなく、トドマツとエゾマツが北斜面で育っています。アカエゾマツは村による植林のみで、植林に特徴的な一直線に軍隊のように足元暗く周りに存在しているので、そのコントラストはくっきりでアカエゾマツの区別は容易です。

植林されたアカエゾマツの森は暗い
天然林(自然林:ホロカトマム山林)と植林(アカエゾマツの植林)のコントラスト


日本花卉文化株式会社さんのエゾマツ女神の記述を読んでいるうちに、「エゾマツの独特な優美さ・気高さ・品格」を今度じっくりと観察しようと嬉しくなってきました。

そして、開拓時代前の昔の北海道の森には、この品格のあるエゾマツが豊富に自生していたのに、記録によれば1950年代の半分以下にまで減っているとのこと。うちでは大事に大事に育てております。安心してゆっくり大きくなれ〜。



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山林
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