映画『鬼畜』
子供の頃にテレビで見た衝撃的映画のひとつ『鬼畜(原作:松本清張、監督:野村芳太郎)』、先日放送されてたのを録画視聴したので、超有名作品を今更だけどメモ。
●ネタバレあらすじ
妻・お梅(岩下志麻)と印刷屋を営む宗吉(緒形拳)。
突然二人のもとに、宗吉の愛人・菊代(小川真由美)with隠し子(利一6歳長男・良子4歳長女・庄二1歳半次男)が来襲。
火事や業績不振を理由に生活費を渡さなくなった宗吉に、ブチ切れた菊代が怒鳴り込んできたのだ。
長年にわたる夫の裏切り、愛人発覚と隠し子爆誕に、ショック&激怒のお梅。
菊代はお梅と口論の末、煮え切らない宗吉にしびれを切らし、子供達を置いて失踪してしまう。
他人の子なんか面倒見ないからねッ!と毎日不機嫌MAXでネグレクトお梅。
仕事の傍ら、慣れない育児とお梅への負い目に心身疲弊していく宗吉。
子供達を連れて菊代探し転居先に行きつくも、他の住人達から「先日引っ越してったよ、男と一緒に」の情報に詰んだ宗吉。
ある日、栄養失調で衰弱し寝ている次男の顔に、故意か偶然かシートが被さって亡くなってしまう。お梅の仕業?!とビビるも、密かに肩の荷が降りた感もある宗吉は、お梅のそそのかしもあり子供達の排除を決断。
宗吉は、お出かけをよそおって長女を都会に連れ出す。置き去りを何度か試み、最終的に東京タワーで望遠鏡を覗かせている隙に逃げ帰り、その後長女は消息不明に…。
親の名前や住所が言える長男には別の手段を、ということで食べ物に青酸カリを入れ毒殺企むも失敗。宗吉は号泣しながら自責の念にかられ悔やみまくるが、お梅の再プッシュで後日長男を連れた旅先で決行することに。いざとなるとふんぎりつかずあてのない旅を続ける宗吉だが、とうとう長男を崖から海へ落として立ち去る…。
ところが、崖の木にひっかかっている長男を漁師が偶然見つけ無事救助!
刑事達に事情聞かれても長男は黙秘貫くが、所持していた石蹴り遊び用の欠片が石版印刷のものだった為、そこから足がつき宗吉は逮捕される。
宗吉は刑事に付き添われ、長男が保護されている警察を訪れる。
刑事が「この人が坊やのお父さんだろ?」と問うも、長男は涙をためた目で「父ちゃんじゃないよぉ、知らない人」と否定する。宗吉は長男に「勘弁してくれぇぇぇ」とすがりつき罪悪感と後悔で号泣。
そして長男は刑事達に見送られ車に乗り児童養護施設へ…。
●感想
前に見たのは小学校低学年の時なんだけど、あの有名な虐待シーン(次男の口に手掴みでご飯詰め込みとか、長女の頭から洗剤かける等)を、妹と「きちくごっこ~」と言って真似してたなあ笑。そして幼くて理解できてないとこもあったけど、覚えてる場面も多くて、相当強烈だったんだな…。まとわりつく蒸し暑さ描写とかも印象的だった。
当時、自分が思ってたのは「言うこと聞かないし迷惑もかけてるからおばさん(岩下志麻)が怒るのに、なんであの子達はいい子にしないんだろう?お父さん(緒形拳)は頼りにならないから、おばさんに嫌われないようにしないといけないのに」だったんだよね。そして、出てくる人の中で一番怖いのはお母さん(小川真由美)で。子供を置いていったってこともあるけど、冒頭の移動や食堂でのイライラシーンが怖くて。自分の母が日々イライラしてる姿と同じで子供がわかりやすい怖さだったんだと思う。なんかこの辺は、育ち故の"大人の顔色うかがう子供"的発想で、過去の自分にちょっと不憫さ感じるが笑、自分があの子達だったら、却って余計にお梅の癇に障ってたとも思う笑。
今回大人になってから見て印象的だったのは、序盤のお梅vs菊代のバトルシーン。
単に妻vs愛人の怒りというだけでなく、子供の有無とか夫に裏切られとかお手当なしでは生きられないとか、哀しさ悔しさ惨めさとかが込められた熱演名演で切なかった。
良いお兄さんポジションかと思いきや、虐待を見て見ぬふりの印刷屋従業員(蟹江敬三)も大概で。
終盤で「子育て放棄する親が増えてるから、今は施設はどこも満杯」みたいなセリフがある1978年の映画。
ニュースの度、無責任父親よりも、圧倒的に母親が責められ追いつめられる2024年の現在。
実母なのに子供置いて逃げた菊代が一番悪いと思うむきが多いのだろうか?
自分が一番酷いと思うのは、宗吉。宗吉自身も捨てられた生い立ちなのは気の毒だけど、そもそも宗吉が調子にのって愛人囲って3人も子供産ませたのが発端だし、無責任で意志弱で流され、結局アグレッシブに決行する鬼畜っぷりじゃん…。(なのに、気弱で根は善人そうなお人よしフェイスと、醸し出す苦悩・葛藤・後悔・哀れさで、一見憎み切れないろくでなしに思わせてしまう緒形拳すごい。)
長男の「父ちゃんじゃない!」、自分は明らかに父親を拒絶・父親との決別に見えたけど、父親をかばってるともとれるように演出したそうで、どんなにひどい親でも子供は親を慕う的な幻想勘弁って思った。上映当時のポスター見たらキャッチコピー「でも僕だけは、父ちゃんから離れない」にも違和感。
そしてラストが自分の記憶と違っていてびっくりした。自分の記憶だと、最後は…
長男が警察署を出ると、長女(妹)の姿が。
「よっこ?!」「おにいちゃぁ~ん」喜ぶ二人(セリフは棒読み)。※よっこ=長女・良子の愛称
なんと長女も無事発見されていた!
婦警(大竹しのぶ)「これからは妹と一緒に暮らせるわよ」
刑事「施設には君達みたいな子供がたくさんいるから大丈夫だよ」
車に乗り、後部座席で寄り添う二人。
海沿いの道路を走る車が小さくなっていく引き映像で<完>
…というもので微妙に記憶捏造だった!!置き去り妹がかわいそうで、幼いなりに補完してしまったのかも笑。