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#08 宇宙よりも遠い場所と『旅のはじまり』
こんにちは、はたはた@土木写真です。今回は旅アニメの最高傑作の一つ『宇宙よりも遠い場所』をご紹介したいと思います。
視聴したのが2・3年前だったので『どんなアニメだったっけ』と1話だけ見たところ、『1話だけでもこんなに内容が奥深いのか』と改めて感じました。
今回は『宇宙よりも遠い場所』1話を振り返りながら『旅のはじまり』について考えていきます。たった24分のアニメの中に、『旅のはじまり』に関するエッセンスが詰まっています。
1話だけならニコニコ動画やバンダイチャンネルで見ることが出来ます。
1. 『宇宙よりも遠い場所』とは?
そこは、宇宙よりも遠い場所──。
何かを始めたいと思いながら、中々一歩を踏み出すことのできないまま高校2年生になってしまった少女・玉木マリことキマリは、とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬と出会う。高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。
http://yorimoi.com/story/?ep=story
このアニメの評判はここ数年でも高く、ニューヨーク・タイムズにおいて「2018年 最も優れたテレビ番組(The Best TV Shows of 2018)」の海外番組部門10作品の一つに選ばれたほどです。
ちなみに『宇宙よりも遠い場所』というタイトルは宇宙飛行士 毛利衛氏の発言が元になっているようです。南極は『宇宙飛行士も認めるほど遠い場所』であると言ったところでしょうか。
アニメのあらすじを聞くと
『南極なんてほぼ誰も行かないし、自分たちとは程遠いお話だな』
と思うかもしれません。
しかし、実際に南極に向かい始めるのは第6話(全13話)以降。第1~5話は全て日本国内でのお話です。いきなり南極に行くわけではなく、ちょっとしたきっかけから少しずつ世界が広がっていく。
そんな感覚をアニメ前半では体感出来ます。
2. 旅をはじめるのは『不安』?
群馬県に住む主人公のキマリが学校をサボって東京方面に向かおうとしたが、失敗したところから物語が始まります。
どうして失敗したのか。幼馴染とこんな会話をしていました。
キマリ:いやー、雨だし。ズル休みは行けないかな~と。
幼馴染:行きたいところ無かったの?
キマリ:あったよ!たくさんあった。京都でも、沖縄でも、北海道でも。
幼馴染:じゃぁ、なんで行かなかった?
キマリ:それはぁ、そのぉ… 飛行機堕ちるかもしれないし、新幹線大爆発するかもしれないし。
幼馴染:隕石、堕ちるかもしれないし?
(中略)
幼馴染:怖くなった?
キマリ:私、いつもそうじゃん。
(中略)
キマリ:全部直前まで来ると怖くなって。やったことないことを始めて、上手く行かなかったらどうしようって。失敗したら嫌だなって、後悔するだろうな~ってギリギリになるといつも。
幼馴染:ま、それは悪いことじゃないと思うけどな。
キマリ:でも、私は嫌い。私のそういうところ、大嫌い。
なんとなく気持ち分かります。私も『飛行機堕ちるかもしれない』はよく考えてしまいます。東京~大阪を移動するときに『飛行機なんとなく嫌だな』という理由だけで新幹線を使ったことがあります…
旅に限らず、何か新しいことをやろうとすると不安になる要素がいくらでも出てくるんですよね。途中で予定変わったりしたらどうしようとか、途中で怪我したりしたらどうしようとか色々懸念点が出てきてます。結局、旅行中も上手くいかないことだらけなのですが…
3. 遥か遠くへ。
その後、なんやかんやあって南極を目指す少女・小淵沢報瀬(こぶちざわ しらせ)と出会います。
キマリは、『報瀬が南極を目指すこと』を応援したいと伝えると
『キマリが本気なのか』確かめるためにある提案をします。
南極に行く船の下見をするため、『広島県呉市』に一緒に行く
彼女たちが住んでいるのは『群馬県館林市』。900kmほど離れています。東京方面の列車に乗ることが出来なかったキマリにとっては途方もない距離でしょう。しかし、彼女は覚悟を決めます。
私は旅に出る。今度こそ、旅に出る。
いつもと反対方向の電車に乗り、見たことのない風景を見るために。
怖いけど、やめちゃいたいけど。
意味のないことかもしれないけど。
でも…!
こうして報瀬と広島県呉市に向かうことになります。
4. キマリが『旅をはじめられた』理由。
※ここからは空想含めた私の解釈になります。ご了承ください。
それにしても、なぜキマリは『旅をはじめられた』のでしょうか。
ヒントは、キマリと報瀬が広島に向かう新幹線の中で慌てる様子にありました。
新幹線から富士山を撮りたいけれども太平洋側の席に座っていたため、反対側に座っている人が邪魔で上手く撮れない。
車内販売で弁当を買おうとしたけど高すぎたので、弁当一人前を二人で分けて食べた。
どちらも、東海道新幹線あるあるなのですが… おそらく東海道新幹線に何度か乗ったことがある人ならこんな失敗はしないでしょう。富士山が見える座席のきっぷを予約し、食費を抑えたい場合はあらかじめコンビニで購入するはずです。
ここから、報瀬視点で考えてみます。『彼女の旅の経験』については残念ながらアニメに描かれていません。しかし、新幹線内で慌てている様子を見ているとおそらく『今まで新幹線に乗車したことが無かった』のではと考えられます。彼女も初めて遠くへ旅に出たのかもしれません。
報瀬にとっても一緒に旅に来てくれたキマリの存在は心強かったのかもしれません。報瀬もキマリもきっと『旅を分かち合える仲間』を欲しがっていたのです。そういう意味では報瀬もキマリの出会いは運命的であり、お互いを惹きつける何かがあったのでしょう。
5. 旅に対する『不安』
『宇宙よりも遠い場所』1話では、『旅のはじまり』について描かれていました。しかし、その裏には旅に対する『不安』が具体的に何度も描かれていました。旅に関する作品を見ると『見知らぬ景色・人に出会えて楽しい』イメージを強調することが多い印象です。不安という側面をこれだけストレートに描いている作品は中々ないと思います。もしかしたらこういう感情を見つめることも旅を考えるヒントになるかもしれません。
皆さんに聞いてみたいことがあります。
旅に対する不安はありませんか?
6. あとがき
旅に対する不安?私は数え切れないくらい沢山ありますね。
それにしてもたった24分の動画だけでこんなに解釈を広げることができるとは。末恐ろしいアニメです…