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サントシャペルのステンドグラス

サントシャペルは、1248年にフランス国王ルイ9世の命によって建設されました。ルイ9世は「聖王(サン・ルイ)」として知られ、フランス史上でも特に敬虔なカトリック信者です。カトリックは、キリスト教の最大の宗派であり、ローマ教皇を頂点とした世界的な教会組織を指します。カトリック教会はイエス・キリストの教えに基づき、聖書を信仰の基盤とし、聖礼典や教義を重視します。ルイ9世が建設したサントシャペルは、特にその華麗なステンドグラスで有名です。

この礼拝堂の建設に大きな動機となったのが、ルイ9世が手に入れた聖遺物の収蔵です。これらの聖遺物の中には、「イエスの茨の冠」も含まれており、キリスト教信仰における非常に重要な存在です。イエス・キリストは、紀元1世紀にローマ帝国の支配下にあったユダヤで、彼が自らを「神の子」と称し、多くの人々を引き付けたことから宗教指導者たちやローマ当局から脅威とみなされました。結果として、ローマ総督ポンティウス・ピラトによって十字架刑に処されました。十字架刑は、当時最も過酷な死刑方法の一つで、イエスの死はその後、キリスト教徒にとって贖いと救いの象徴となりました。

サントシャペルの美しいステンドグラスには、イエス・キリストの生涯を描いた場面のほか、旧約聖書と新約聖書の物語が描かれています。特に注目されるのが、聖母マリアが象徴されるの色です。青がマリアを象徴する色となった背景には、中世ヨーロッパで青色の染料が非常に高価で、貴族や宗教的な重要人物の象徴色として使われていたという事実があります。青はまた、純潔や忠誠、信仰を表す色とされ、聖母マリアの清らかさと母性を表すために用いられるようになりました。

さらに、サントシャペルのステンドグラスには、旧約聖書の物語も描かれています。旧約聖書の最初の書物である創世記は、神が世界を創造し、人間が誕生し、エデンの園での出来事が描かれる重要な部分です。創世記には、アダムとエバ、ノアの箱舟、アブラハムとイサクといった物語が含まれており、神と人類の関係の起源が記されています。この物語は、ユダヤ教とキリスト教の信仰の基礎となり、サントシャペルのステンドグラスを通じて、当時の信者たちに神の意志を伝えるためのビジュアルな教えとなっていました。

ルイ9世の深い信仰と彼の宗教的・政治的な遺産は、サントシャペルを通じて今なお感じることができます。サントシャペルは、カトリック教会の歴史的な象徴であり、また中世のフランス文化と職人技術の最高峰を示す建造物です。訪れる人々は、その美しい光と色彩の中に、キリスト教の信仰と歴史を感じ取ることができるのです。

サントシャペルのステンドグラスは識字率を補うためなのか?


サントシャペルの壮麗なステンドグラスは、その美しさで多くの人々を魅了してきましたが、その主な目的は識字率を補うためではなかったと考えられます。

当時、サントシャペルに入ることができたのは、フランス王室や貴族、聖職者、学者など限られた特権層だけでした。聖職者は識字率100%、貴族は70%、商人や学者は60%程度と仮定すると、サントシャペルにアクセスできる層全体に対する識字率の割合は、75%程度に上ります。この割合からもわかるように、サントシャペルに入ることができる人々の多くは読み書きができ、聖書の物語や宗教的な教義を文字から理解できる層でした。したがって、街の教会に掲示された宗教画のように布教のために識字率を補う目的で作られたものではないと考えれることができます。

しかしながら、文字を読める層であっても、私たちが日常的に感じるように、絵やビジュアルの方が文字よりも印象に残りやすいという効果は、当時も同じであったと考えられます。ステンドグラスという形で宗教を説明することは、単に文字を補完する以上の役割を果たしていたのです。美しい形で神聖な物語を表現すること自体が、信者にとって強い感銘を与え、精神的な深みを増す重要な手段でした。サントシャペルのステンドグラスは、その色彩と光の演出によって、神の教えや宗教的儀式の崇高さを一層引き立てていたのです。

美しい形で説明することには、宗教的な教義を深く心に刻みつけるという点で、非常に大きな価値があったと考えられます。ステンドグラスは単なる装飾ではなく、視覚的に信仰の力を伝える手段であり、それゆえにサントシャペルの空間は、信者にとっての神聖な啓示の場として大きな役割を果たしていたのです。

Apple Vision ProのアプリにはEnvironmentという機能がありますが、将来的にサント・シャペルの内部に没入できる日が来たら嬉しいです。360度カメラで撮影した画像や動画でも十分満足できそうです。実際にその場所を訪れたかのように、細部まで楽しむことができるでしょう。そこまで行かなくても、パノラマ写真を見ているだけでも良いかもしれません。Apple Immersiveでこのようなコンテンツが豊富に提供されることを期待しています。歴史的な建造物や美術品の新たな鑑賞方法が広がりそうです。

Apple Vision Proで建造物を鑑賞したい

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