見出し画像

お塩がつくと痒くなるのはなぜか?

先日、4歳の娘から、「お塩が体につくと痒くなるのはどうして?」という質問を受けました。うまく答えられなかったので、自分の整理のために記事を書きたいと思います。

水が吸い出されるとどうして痒く感じるのか?

確かに、海で遊んだあと、肌に塩がつくと痒くなることがあります。

痒くなる理由の1つ目は、浸透圧です。塩が「ナトリウム」という特別な物質でできていて、水をぐんぐん引き寄せる性質を持っています。スポンジが水を吸い取るように、塩も肌から水分を吸い取ります。この力を「浸透圧」と言います。

水が肌から吸い出されると、肌が乾燥してカサカサになってしまいます。想像してみてください。冬の乾燥した日に、肌が乾燥して白くなって、少し痒くなったことはありませんか?それと同じで、肌の水分が失われると乾燥し、肌のバリアが弱くなって、外からの刺激に敏感になります。乾燥した肌は通常よりもデリケートになるので、痒みを感じやすくなるのです。

理由の2つ目は、塩の粒がとんがっているからです。塩が肌に残ると、塩の結晶が肌に微細な刺激を与えます。これが痒みの原因になります。塩の粒が肌にチクチクと突き刺さるようなイメージです。

こうした物理的な刺激と乾燥が重なって、塩がついたときに痒く感じるのです。

浸透圧が起きる仕組み

ここで、浸透圧がどのように起きるかを簡単に整理しましょう。

「浸透圧」というのは、濃度が違う液体があるときに、水が濃度の高い方に移動する現象のことです。たとえば、塩がたくさん入っている水と、塩がほとんど入っていない水があったとします。この場合、塩が少ない方から多い方に向かって水が移動します。

では、なぜ水が移動するのでしょうか? 塩が少ない方(薄い塩水)は水分子が自由に動けるので、エネルギーが高い状態です。エネルギーは均一化しようとする性質があるため、濃度を均等にするために水か塩が動く動機を持ちます。しかし、液体を隔てる膜(たとえば肌)は塩を通さないので、代わりに水が動いてバランスを取ろうとします。これが濃度が違う液体があるときに、水が濃度の高い方に移動するメカニズムです。

この仕組みで、肌の外側に塩がたくさんあると、肌の中の水分がその塩の方に引き寄せられてしまいます。これが、塩を肌に塗ったり、海水から出てしばらくしたときに(塩水の濃度が高まることが)、肌を乾燥させる理由です。肌の中の水分が外に引き出されてしまうので、肌がカサカサして痒くなります。

砂糖との違い

砂糖は塩ほど水を引き寄せる力が強くないので、肌から水を吸い取ることはほとんどありません。そのため、砂糖が肌に触れても痒く感じることは少ないんです。また、砂糖の粒は塩ほどとがっていないので、物理的な刺激も少なく、肌に優しいと言えます。

なぜ砂糖の浸透圧が塩よりも弱いのでしょうか? それは、塩と砂糖の分子の構造に違いがあるからです。塩は細かい粒になって溶けやすいのですが、砂糖は溶けないで大きな粒のままで水を漂います。塩(塩化ナトリウム)は水に溶けると、ナトリウムイオンと塩素イオンという2つのイオン(電子を失ったり得たりすることでプラスまたはマイナスの電荷を持つ)に分かれます。これにより、塩の溶液では非常に多くの粒子が存在することになり、浸透圧が高くなります。一方で、砂糖は水に溶けてもイオンには分かれず、1つの大きな分子として存在します。このため、塩ほど多くの粒子ができないため、浸透圧が弱く、水を引き寄せる力が塩ほど強くならないのです。

そうは言っても、砂糖にも浸透圧はあります。これを利用して作るのが梅酒です。梅の実と一緒に氷砂糖を入れると、氷砂糖がゆっくり溶けて甘い液体ができ、梅の中から水分(エキスを含む)が外に引き出されます。このとき、梅の中の水分が氷砂糖に引き寄せられているのも、浸透圧が働いているためです。これによって梅の風味が甘い液体に溶け込み、おいしい梅酒ができるのです。

塩の梅干しは、天日干しを含めて1、2ヶ月で完成するのが一般的です。一方で、梅酒は半年から1年かけてようやく完成します。これは浸透圧の強さの差です。我が家でも梅酒を仕込んでから最初に飲めるようになるまで半年以上を要しました。娘が生まれる前に大瓶で仕込んだ梅酒を今もチビチビと消費しています。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集