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飛行機雲ができるのはなぜ?
飛行機が空を飛ぶと、その後ろに白い線状の雲ができることがあります。いわゆる「飛行機雲」です。4歳の娘も知っていました。
「飛行機雲知ってるよ。でも、なんで飛行機が通ると飛行機雲ができるの?」という質問を受けました。いつものようにその場で満足する回答ができなかったので、反省のためにその仕組みについて整理したいと思います。
飛行機雲ができる背景には、飛行機のジェットエンジンでの燃焼プロセスと酸素の化学的性質、そして上空の気温が関わっています。
ジェットエンジンの燃焼プロセスで生じた水蒸気が-40度で冷やされるから
飛行機のジェットエンジンは、ケロシンという灯油によく似た燃料を燃焼させることで推進力を得ています。ケロシンは炭化水素であり、炭素(C)と水素(H)から構成されています。燃焼という化学反応は、これらの炭素や水素が酸素(O₂)と結びつくことでエネルギーを放出し、飛行機を前進させる推進力を生み出します。
燃焼の際、炭素は酸素と反応して二酸化炭素(CO₂)を生成し、水素は酸素と結びついて水(H₂O)を生成します。
そして、飛行機が高度8,000メートル以上の冷たい空気(-40度ほど)のなかを飛行していると、燃焼プロセスで生成された水が、急速に凝結し、小さな氷の結晶や水滴となり、空気中を漂います。これが、飛行機雲の正体です。
したがって、冒頭の「なぜ飛行機雲ができるのか?」に対しては、「飛行機が飛ぶときにジェットを吹き出しているが、そのジェットを作るときに出てしまうお水があって、これが空の冷たい空気で冷やされると、粒として空に漂うから。」という回答ができます。
なぜ元に戻らずに酸素と結びつくのか?
では、なぜ炭素や水素は燃焼時に酸素と結びつくのでしょうか? 炭化水素と酸素を加熱、つまり激しく振動させることで、分子の結合が一時的に壊されるとしても、壊れた後に元の炭化水素と酸素として再結合してもおかしくないのに、そうではなく、酸素と結びついて二酸化炭素(CO₂)や水(H₂O)といった新たな化合物を形成するのはなぜかという疑問です。
この現象には電子的な理由が関わっています。
炭素と水素が燃焼時に酸素と結びつくのは、酸素のほうが炭素と水素が結合するよりもより結合しやすいからですが、そうなってしまうのは、酸素のほうが電気陰性度(原子が電子を引き寄せる力)が強いためです。
関係しています。酸素は周期表の中でも非常に電気陰性度が高く、他の原子、特に炭素や水素から電子を強く引き寄せる性質を持っています。この電子的な力の差が、燃焼時に炭素や水素が酸素と結びつく原因です。
酸素の電気陰性度が高いのは、酸素の電子の数に由来します。酸素は8つの電子を持つ(原子番号8)のですが、内側の電子殻に2つ、そして外側の電子殻に6つの電子を持っています。外側の電子殻は最大8つの電子が入る構造になっているので、あと2つの電子が入るスペースがあります。酸素はこの外殻を満たして安定しようとするために他の原子から電子を奪うか共有しようとします。この性質により、酸素は他の原子、特に電気陰性度が低い炭素や水素から電子を共有することで、安定した結合を形成しようとします。これが燃焼後に炭化水素に戻らずに、二酸化炭素(CO₂)や水(H₂O)になる理由です。
ちなみに、炭化水素が二酸化炭素や水になると、より安定した状態、言い換えるとエネルギーが低い状態になることを意味します。そのとき余ったエネルギーは消えず、外に放出されます。これが光と熱です。ジェットの光やジェットエンジンからガスが膨張して吹き出すための熱です。
温暖効果ガスである二酸化炭素(CO₂)を吸収するのが難しい理由は、主にその安定性と濃度の低さにあります。CO₂は非常に安定した分子であり、自然界のプロセスや技術で分解したり取り除くには多くのエネルギーを必要とします。(例えば、産業革命前との差分である713ギガトンのCO₂を光合成の力だけで1年間で分解しようとすると、地球の陸地の44倍に相当する葉っぱの面積が必要になるというう計算が可能です。)また、大気中のCO₂濃度は約0.04%と低いため、広範囲に拡散していることから、一度に大量のCO₂を効率よく集めるのが困難です。さらに、CO₂を取り除くためには、専用の吸収技術や素材が必要で、コストやエネルギー消費が大きいことも課題とされています。