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遅刻するあの生徒

久しぶりに高校生の時のことを思い出していた。

彼は生徒会の役員なのに必ず学校に遅刻した。
いつも一限がはじまるギリギリか、始まって少ししてから来た。

そう言う学校だったわけではない。
100人いだとすれば97人は時間内にしっかり席に着いていた。
私は97人の内の1人だった。

彼は別に道から外れるタイプではない。そもそもそう言う人は生徒会の役員に立候補したりはしない。
いたって普通で、律儀で、言うことはまともで、男子高校生の中でも大人しい類いだった。
なのでその遅刻は彼の人柄とはとても不釣り合いに思えた。

凄いと思った。

それで聞いてみた事がある。
遅刻しているのが悪いと言う事ではなく、
そのような彼が、なぜいつも遅刻するのか、
単に気になったからだった。

同じ生徒会役員でそれなりに普通に話す中だったけれど、その事に関しては口が重くあまり深い事は聞けなかった。
ただ、遅刻には家庭的な事情があるらしかった。
先生たちも強く叱れない所から察する事も出来たか…と聞いた事をあとで少し後悔した。

のうのうと生きている自分と対照的に、
彼がまだ10代にして周りに気を使いながら何か巨大なモノを背負っていると知り、苦しくなった。

高校三年生の時、彼には確か小柄でかわいい彼女ができていた。ふたりの幸せそうな笑顔を薄ら覚えている。

懐かしい。元気ならいいな。

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