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マチグヮーのお昼事情
4年近くに及んだ建て替え工事を経て、今年3月にリニューアル・オープンを果たした第一牧志公設市場。「県民の台所」と呼ばれる市場の1階には、食材がずらりと並んでいます。2階は食堂街になっていて、1階の精肉店や鮮魚店で購入した食材を、2階の食堂で調理してもらう「持ち上げ」システムは観光客にも人気で、食堂街はいつも賑わっています。
この5年間、この牧志公設市場界隈を取材するなかで、何軒かの食堂にも話を聞かせていただいてきました。今回はマチグヮーで美味しいランチを食べられるお店をまとめてみたいと思います。
道頓堀
牧志公設市場の2階には、何軒かの食堂が軒を連ねています。マチグヮーで取材を始めたばかりの頃、最初に目に留まったのが「道頓堀」でした。
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この食堂を始めたのは上原寛太郎さん。戦前の沖縄は、仕事を求めて海外や県外に移り住む人がたくさんいて、明治生まれの寛太郎さんは大阪に移り住みました。終戦後、家族で沖縄に戻ってきたときに始めたのが食堂で、大阪の繁華街のように賑わう店になればと、「道頓堀」と名付けたそうです。
現在は寛太郎さんの孫世代にあたる方たちが、「道頓堀」を切り盛りされています。フロアに立つ上原佐和美さんにおすすめを尋ねると、ふたつのメニューを挙げてくれました。
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ひとつめは、舟盛定食(1800円)。名前の通り、お刺身がたっぷりと舟盛りになった定食です。ごはんにあさりの味噌汁、もずくと海ぶどう、それに島豆腐の冷やっこもついてきます。
今年の春にリニューアルオープンを果たし、市場にふたたび大勢のお客さんが訪れるようになって、旅行で沖縄を訪れたお客さんに喜んでもらえるものを提供したいとの思いから、この舟盛定食を出すようになったそうです。
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舟盛定食のほかに、グルクンの唐揚げとゆし豆腐がセットになった「ゆし豆腐汁定食」(1200円)や、ラフテーやミミガー、スクガラスにもずく、パパイヤキムチにアーサ汁と、沖縄ならではの料理がずらりと並ぶ「琉球料理定食」(2000円)もあります。
「道頓堀」のメニューには、沖縄そばやタコライス、ゴーヤーちゃんぷるーに豆腐ちゃんぷるー、もずくやゴーヤーの天ぷら、ヒラヤチーにポーク玉子、ビーフステーキに海鮮丼、沖縄風の味噌汁に中味汁などが並び、食堂街の中でもとりわけ幅広い料理を提供しています。僕はよく、天麩羅3種盛(630円)を頼んで生ビールを飲んでいます。
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もうひとつ、佐和美さんが「私のおすすめ」と教えてくれたのがソーメンちゃんぷるー(600円)です。そうめんにこだわっているだけあって、さっぱりと上品な味わいです。
沖縄で取材を始める前だと、「ちゃんぷるー」と聞いて真っ先に浮かぶ料理のひとつは、「ゴーヤーチャンプルー」でした。ただ、水納島という小さな島の取材をしていたとき、「豚肉や卵をたっぷり使った料理なんて、昔は滅多に食べられなかった」という話を伺いました。
素麺は、琉球王国時代には高級品でしたが、次第に手頃な食材となり、広く食べられるようになっていきます。お中元やお歳暮に送られることも多く、昔は各家庭にそうめん箱があったのだと聞きました。この素麺と、同じくお中元などに用いられることの多いシーチキンとをさっと炒めたソーメンちゃんぷるー(正確にはソーメンたしやー)は定番の一品だったそうで、台風などの影響を受けやすい離島では非常食として食卓にのぼっていたのだ、と。
そんな話を聞かせてもらってから、ちょくちょくソーメンちゃんぷるーを注文するようになりました。取材で聞かせてもらった話を反芻しながら、その味に舌鼓を打っていると、自分が目にすることのなかった昔の沖縄に少しだけ触れているような心地がします。
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道頓堀
沖縄県那覇市松尾2-10-1
8:30-21:00
※第4日曜は市場の定休日です
赤とんぼ
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今や沖縄のソウルフードとして取り上げられることも多くなったのが、タコライス。味付けをしたタコミート(ひき肉)と、トマトやレタスといった食材――つまりタコスの具材となるものを、ごはんの上にのっけたのがタコライスです。基地のある金武町で、「米兵たちに安い値段でお腹いっぱいになってもらえるように」と、1980年代に考案された料理です。
マチグヮーにも、美味しいタコライスを提供するお店があります。サンライズなは商店街にある、創業30年を数えるテイクアウト専門店「赤とんぼ」です。新鮮な食材とオリジナルソースにこだわったタコライスは絶品で、わずか2坪のお店に、お昼時には行列ができます。
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空いているときであればお店の脇で食べていけるかも。
タコライスは、小が450円、中が550円、大が650円。また、「赤とんぼ」のメニューにはタコスもあり、こちらは1本300円、3本750円となっています。タコライスに比べると、タコスは提供に時間がかかるので、電話で注文しておくか、注文しておいてどこかで時間を潰すのがおすすめです。
創業者の仲村敏子さんは、西表島出身。1944年生まれの敏子さんがこどもだったころは、島でよくトンボの姿を目にしたそうです。そんな郷里の風景を思い、「赤とんぼ」と名前をつけたそうです。
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マチグヮーで取材をしていると、離島出身だという方とよくお会いします。戦後間もない時代に、「きょうだいを食べさせるために」と中学卒業と同時に那覇に出て、それから60年近く働いてきた――そんな語りを、あちこちで聞かせてもらってきました。
敏子さんは子育てをしながら働き、「いつか自分のお店を持ちたい」という長年の夢を叶えて、50代で「赤とんぼ」を開業しました。その頃は那覇にはタコライスを出すお店はほとんどなく、沖縄本島中部の店をまわって研究を重ねて、今の味に辿り着いたそうです。現在は敏子さんは高齢になったこともあり、お子さんたちが中心となってお店を切り盛りされています。
赤とんぼ
沖縄県那覇市松尾2丁目21-16
11:00-19:00(月曜 定休)
むつみ橋かどや
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国際通りから、牧志公設市場へと続く市場本通りの入り口がある交差点は、「むつみ橋交差点」と呼ばれています。かつてはここにガーブ川が流れており、むつみ橋という名前の橋がかかっていました。
このむつみ橋交差点で、70年以上続くおそば屋さんがあります。「むつみ橋かどや」です。ここの沖縄そばを初めて食べたとき、こんなに上品で滋味深いスープがあるのかと惚れ惚れしました。こちらのお店は鰹節を使わず、丁寧に下処理をほどこした豚骨だけで出汁をとっています。
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「かどや」の創業は1952年。最初にお店を構えたのは、国際通りを挟んだ向かい側、現在はドンキホーテが建っているあたりでした。交差点の角にあるからと、シンプルに「かどや」という名前をつけたそうです。
「琉大が首里にあった頃だと、お金のない学生さんが『この時計でそばを食べさせてくれ』と言ってくることもあったみたいですね」。父の跡を継ぎ、2代目としてお店を切り盛りする石川幸紀さんはそう教えてくれました。「『この時計なら20杯』と親父が決めて、棚に時計が何個か並んでいたんですけど、何年か経って質屋さんみたいに引き取りにくる人もいて。今思うと、良い時代ですよね」
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今のように各地にスーパーマーケットがなかった時代には、遠方からバスに乗り、マチグヮーまで買い物にくる人で界隈はごった返していました。せっかく買い物にきたのだからと、ちょっとしたご馳走として沖縄そばを食べて帰るお客さんも多かったのだと、幸紀さんは聞かせてくれました。
父の代は「そば」のみでしたが、現在は少しメニューが増えています。
僕がいつも注文するのは、あっさりめのチャーシューがのった「ロースそば」(600円)。その他にも、じっくり煮込んだ三枚肉(豚バラ肉)がのった「三枚肉そば」(700円)や、たっぷりボリューミーなソーキ(豚のアバラ肉)がのった「ソーキそば」(800円)もあります。昔ながらの「そば」は、現在「かけそば」(400円)として提供されています。
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また、メニューの中には「おかわり麺」(100円)があります。いわゆる替え玉です。ここ最近の物価高の煽りを受けて、「むつみ橋かどや」でもちょっとだけ値上げされましたが、このおかわり麺だけは値段を据え置かれています。
「たとえばお母さんと小さいお子さんが、ふたりで1杯のおそばを食べるとなると、ちょっと物足りないですよね。そういうときに、100円でおかわり麺を追加して食べてもらえるようにしようと思ったんです。そうすれば2杯頼むより経済的でしょ。うちはもともと1杯10セントだったもんだから、なるべく安く提供したいという気持ちがあるんです。なかにはひとりで3杯、4杯とおかわり麺を頼むお客さんもいますよ」
むつみ橋かどや
沖縄県那覇市牧志1-3-49
11:00-17:00(火曜 定休)
大衆食堂ミルク
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マチグヮーには、昔ながらの食堂が何軒かあります。そのひとつが、「大衆食堂ミルク」。カウンターが4席と、テーブル席が6つだけのこぢんまりした食堂です。
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ずらりと並んだメニューを眺めるたびに、何を注文しようかと迷ってしまいます。お店の方によると、「地元のお客さんだと、チャンプルーを頼む人はチャンプルーばかり注文するし、揚げ物を頼む人は揚げ物ばかり注文しますね」とのこと。迷った挙句、僕はいつもチャンポン(500円)を注文します。
「内地の方は、チャンポンというと麺の上に野菜がのったものを思い浮かべますよね」と、お店を切り盛りする宮城初江さん。「でも、沖縄のチャンポンは、野菜とお肉を炒めて卵でとじたものが、ごはんの上にのってるんです。それから、ポーク玉子というのは沖縄では定番の料理ですけど、これはポーク・ランチョン・ミートに玉子焼きを添えて出してます。ポーク・ランチョン・ミートは缶詰に入った豚肉で、ポーク玉子やチャンプルーに使ってますね」
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店名の「ミルク」とは、牛乳ではなく、神様の名前からとったもの。仏教の弥勒菩薩が、沖縄のニライカナイ信仰と合わさり、海の彼方から豊年を運んでくる五穀の神様「ミルク様」として祀られています。
初江さんが「大衆食堂ミルク」を始めたのは、今から50年ほど前、この場所にちとせ商店街ビルが完成したばかりのころでした。ちとせ商店街ビルは、1階は4つの建物に分かれていて、上がひとつに繋がっているという、不思議な建物です。初江さんのお母さんが、ちとせ商店街ビルの1階に空き物件を見つけ、「ここでお店をやりなさい」と初江さんに提案します。
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初江さんの夫・宮城啓さんは、二十歳のころから料理人として働いたこともあり、「お店をするなら、大衆食堂にしよう」という話になったそうです。現在は夫婦ふたりと、妹の良子さんの3人で、お店を切り盛りされています。最初は少ないメニューで始めたものの、お客さんのリクエストに答えているうちに、今の品数になったとのこと。
「まだ水上店舗ができる前、私はガーブ川のほとりで豆腐を売っていたんです」。取材でお店にお邪魔したとき、初江さんはそんな昔話を聞かせてくれました。初江さんの両親は豆腐屋を営んでいて、小さい頃から初江さんが売り子を担当していました。
「頭にタライを乗せて運んで行って、ガーブ川のほとりで卵を売ったり、豆腐を売ったりしてました。うちは弟や妹が大勢いて、子供が増えれば食べるものがなくなるから、私が売りに行って稼がんといかんわけよ。あのときはすごい人通りだったから、誰かにぶつかって豆腐を落としたことがあるんですよ。ああ、どうしようと思って途方にくれていると、通りかかった方が『これは私が買っていこうねー』と言ってくださったこともあります」
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マチグヮーの老舗を訪ねて、こんなふうに昔の話を聞かせてもらっていると、「戦後」というのは遠い昔のことではなく、今と地続きなのだと感じます。戦争で荒廃した時代があって、アメリカに占領された復興の時代があって、今がある。その復興を支えてきた方たちが、今もマチグヮーにはたくさん働いているのです。
大衆食堂ミルク
沖縄県那覇市松尾2丁目10-20
10:00-19:30(日曜定休)
丸安そば
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那覇のマチグヮーには、第一牧志公設市場の他にも、いくつか市場がありました。20年ほど前までは、第二牧志公設市場もありましたし、新天地市場という布市場もありました(現在も「新天地市場本通り」という名前の通りがあって、界隈には婦人服や紳士服のお店、あるいはお直しの店が建ち並んでいます)。
そしてもうひとつ、「農連市場」という市場があります。農家の人たちが、自分が育てた野菜を直接販売できる市場として、1953年に整備されたのが農連市場でした。周辺の再開発計画により、古い市場は解体されることになり、2017年に「のうれんプラザ」としてリニューアル・オープンを果たしています。
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のうれんプラザの一角に、「丸安そば」という食堂があります。1973年創業の「丸安そば」は、時代が昭和から平成に変わるころに一度閉店してしまったのですが、市場界隈で精肉店を営む仲里悦雄さんが経営を引き継ぎ、現在は悦雄さんの三男・亨さんが切り盛りされています。
「もともと丸安そばは、24時間営業の店だったんです」と、亨さん。「近くに農連市場もあれば飲み屋街もあって、24時間温かいものが食べられる、コンビニ感覚で寄ってもらえる店だったと思うんです。タクシーの運転手さんも、パッと車を停めて、すぐ食べられる。安い・早い・うまいの三拍子揃っていて、地元のお客さんに愛されるお店だったのを、父が引き継いだんです」
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亨さんは小さい頃から精肉店の手伝いをしていて、「丸安そば」まで重い肉を担いで歩くことも多く、「小さい頃は家から逃げたかった」と、笑いながら振り返ります。ただ、精肉店も「丸安そば」も大忙しで、これは自分が手伝うしかないと、家業を手伝う道を選びました。
市場界隈に限らず、沖縄には家族経営のお店がたくさんあります。「家族で切り盛りしてきた食堂」と聞くと、どこかほっこりしたエピソードとして消費してしまいそうになりますが、そこにはさまざまな思いがあるのだと思います。それを見落とさないようにしなければと、取材者のひとりとしてよく思います。
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亨さんが「丸安そば」を手伝い始めたのは、今から10数年前のこと。精肉のことは食肉学校にも通って専門的な知識を身につけていたものの、調理となると不慣れなことも多く、最初のうちは父から「そばだけ売っておけ」と言われて、店番をされていました。
「ただ、そばだけ売っていても、『なんでチャンポンが作れないのか』と言われるんですよ。『そばしかないなら帰る』と言われることもあって、段々こっちも火がついて、だったら作ってやろうと、親父や夜勤のおばさんに教わりながら、そば以外も出すようになって、お客さんの反応を聞きながら料理を覚えました。だから僕は、お客さんに育てられたようなものです」
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「丸安そば」の券売機には、さまざまなメニューが表示されています。その一部を、ちょっと書き出してみます。
丸安そば(500円)
ソーキそば(800円)
ポークたまご(650円)
豆腐チャンプルー(650円)
ゴーヤーチャンプルー(700円)
チャンポン(700円)
ナス味噌炒め(700円)
トンカツ定食(800円)
しょうが焼定食(800円)
牛焼肉定食(800円)
カレー(600円)
カツカレー(800円)
カツ丼(800円)
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「丸安そば」は当初、農連市場の近くに店を構えていましたが、再開発によって立ち退きを余儀なくされ、のうれんプラザで再スタートすることになりました。昔の店舗と違って、雨漏りの心配はなくなったものの、「昔のほうが風情があってよかった」という声もあるとか。
「地元の人も、観光の人も、新しいジョートーじゃなくて、慣れ親しんだ町を求めてると思うんです」と、亨さん。「せっかく良い雰囲気があるのに、どうしてそれを壊してまで新しいことをするのか、って。ただ、もう再開発をしてしまったんだから、ここをどういう場所にしていくかだと思うんです。地元の人たちが求めるものが揃っていれば、また自然と活気がある場所になるんじゃないかと思っています」
丸安そば
沖縄県那覇市樋川2丁目3-1
9:00-22:00(木曜定休)
おわりに
マチグヮーには、古い建物がたくさん残っています。その街並み自体が、戦後の闇市の名残を感じさせてくれる場所でもあります。ただ、地震が多い日本では、建て直しを余儀なくされることもあります。第一牧志公設市場も、耐震強度の問題から建て直しが検討され、新しい建物に生まれ変わりました。
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建物が新しくなると、どうしても「昔の建物のほうが風情があってよかった」という声が聴こえてきます。古い建物のほうが味わい深いのは間違いないことですし、僕自身もまた、昔の市場のほうが風情があったと思います。
ただ、どんなに古い建物にも、ぴかぴかだった時代があります。そこに一日、また一日と時間が堆積していくことで、味わい深い建物になっていくのではないかと思います。
市場の魅力は人に尽きる――この5年ほどマチグヮーの取材を続けてきた今、そう感じています。建物が新しくなったとしても、そこで働いている人たちがごそっと入れ替わらない限り、市場の日々は続いていくのだと思います。
今回紹介した5軒は、この5年のあいだに取材させていただいたお店です。マチグヮーの歴史と今とを記録しようと、毎月那覇に通って、2019年に『市場界隈 那覇市第一牧志公設市場界隈の人々』を、2023年の春に『そして市場は続く 那覇の小さな街をたずねて』をそれぞれ出版しました。もし今回の記事を通じて興味を持っていただけたら、ぜひお手に取ってもらえると嬉しいです。
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