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保険を最適化するための手順

リスクマネジメントでは、A領域リスクとB領域リスクという2つのリスクがあります。それぞれ性質の異なるリスクですが、どちらを優先して管理すべきでしょうか。


1. A領域リスクの特徴と対策

A領域リスクは、発生する頻度は低いですが、一度発生すると会社に大きなダメージを与える重大なリスクです。具体的には、次のようなものが含まれます。

  • 経営者の死亡

  • 工場やオフィスの火災、地震などの大規模な災害

  • 高額な損害賠償や訴訟(人身事故や重大な労災事故による訴訟など)

これらのリスクは、起きたときの損害額が非常に大きいため、現金ではどうにもならない金額のリスクです。対策が不十分だと会社の存続に関わる問題になります。そのため、A領域リスクへの対策は最も重要で、優先的に行う必要があります。

2. B領域リスクの特徴と対策

B領域リスクは、発生頻度は高いものの、損害の規模が比較的小さいリスクのことです。具体的には、次のようなものがあります。

  • 短期間の病気やけがによる入院や通院

  • 車や機器の一部が壊れるなどの軽い事故や損傷

これらのリスクは日常的に発生しやすく、頻度が高い分、経験を積むことで予防することも可能です。こうしたリスクに対しては、あらかじめある程度のお金を準備しておくことで対応できることが多いです。そのため、B領域リスクの管理も大切ですが、A領域リスクに比べると優先順位は低くなります。
また、公的保険に頼るべき分野でもあります。従業員のケガによる入通院であれば政府労災。プライベートでのケガや病気であれば健康保険が公的保険として整っています。

加えて、B領域リスクは頻度が高いため、経験を積むことで予防策を強化することが可能です。

B領域リスクと保険料の内訳

B領域リスクに関する保険商品は、発生頻度が高いため、保険会社がリスクを分散するために保険料が高く設定されがちです。例えば、自動車保険では車両保険の保険料が高くなりやすいです。これは、自動車の損傷や盗難のリスクが頻繁に起こる可能性があるからです。一方、対人補償(無制限)は、発生頻度は低いものの、大きな損害を補償するため、内訳保険料は車両保険に比べて低めです。

自動車保険の保険料内訳の例

  • 対人補償(無制限):内訳保険料は比較的低め。事故の頻度は低い。

  • 車両保険:保険料が高い。小さな事故や盗難のリスクが多いため。

B領域リスクにおける免責の活用

免責(自己負担)を設定することは、B領域リスクの管理において有効な方法です。免責を設定することで、小さな損害は保険を使わず自己負担で対応します。これにより、次のようなメリットがあります

  • 保険料の削減:免責額を設定すると、保険会社のリスクが減り、その分保険料を下げることができます。

  • 割引率の進行:頻繁に起こる小さな修理費用などは自己負担にすることで、保険の使用頻度を減らし、保険料割引率が進行する可能性があります。

3. リスクマネジメントの優先順位

経営者としては、まずA領域リスクの対策を最優先に検討することが必要です。万が一のことが起きたときに会社が存続できるように、重大なリスクに対してしっかりとした対策をとることが求められます。一方で、B領域のリスクについては、内部留保や予防で対応し、経営に大きな負担をかけない範囲で管理することが適切です。