所有した楽器から私が学んだこと(購入する時の基準) その2
ベーシストの楽器の出したい音を出すお手伝いをしているhirokiと申します。
主にエレクトリックベースを弾いていて楽器の調整や楽器、pu製作、ジャズベースタイプのpu集めが好きなことから、puはじめとしたパーツ選びの相談を受けることが多いです。
私が今の楽器製作、pu製作、調整をするにいたるまでに、色んな楽器を所有して、よいなと感じたり、所有する前に気づかなかったことに気づいたり、不満があってパーツを買ったり調整楽器屋に出したり自分で調整したりを繰り返してきました。
楽器に限らず失敗の経験から色んなことを学んで成長していくと思うので、今手元にある楽器から教えてもらったこと、特に、
こんなはずではなかったな、
ここを確認してから買うべきだったな、
という視点を中心に楽器を紹介していく、という記事の2回目になります。
1回目の記事はこちらです。
所有してきた楽器については、Xのプロフの画像、結構前のもので朝から夜中まで毎日働いててストレスと物欲が凄く沢山勢いで購入して並べた自己満足写真がわかりやすいです。
2回目はこの写真の右から3番目から紹介していきます。
1 ken smith design Brooklyn
1-①購入経緯、理由
・中古でたまたま見つけて決定、5弦ベースとしてはInnerwoodに続き2本目で、Innerwoodで自分にとって足りなかったよりアクティブっぽい音が出るベースを、と探していたのと、この頃からこちらを取り扱っているsleekeliteさんのRichardcocoの弦がお気に入りだったことはじめ信頼していたというのも理由。
sleekeliteさんの企画モノのようなベースでken smithの木材使ってT's guitarsさんで組み込みというコンセプトも特別感を感じました。
詳細は以下の通り。
更にはsleekeliteさんのウェブサイトに、大好きなベーシスト、メルビンリーデイビスが弾いたサンプル音源、
http://www5d.biglobe.ne.jp/~KSB/sound/KSDBROOKLYN/KSDBrooklyn.mp3
コレ聴いて、この音に近づけるのでは!?という期待感もありました。
あとはベースの見た目も1番心から欲しい、とときめいたのも理由です。
1-②買って学んだこと
<5弦ベースのピックアップの大きさ>
5弦ジャズベースタイプのピックアップは4弦と異なり大きさの企画が主に3つあります。
この大きさについて詳しく説明しているのが、こちら
https://fatbasstone.com/collections/5-string-jazz-bass-pickups
引用すると、
• Fender American Standard: ~4.1" (104mm) X 3.9" (99mm)
• Long/Long: ~3.73" (94mm) X 3.73" (94mm)
• Long/Short: ~3.73" (94mm) X 3.60" (91mm) → これは4弦ベースと同じ
という3種類あります。
フロントピックアップとネックピックアップの長辺の大きさの組み合わせを示していて、
この表記を、Fender American Standardを例に読み替えると、
ブリッジピックアップカバーの長辺 104mm(4.1インチ)
ネックピックアップの長辺 99mm(3.9インチ)
ということになります。
何か図でわかりやすいのないかと探していたところやっぱり全ての大きさを作っている大手、バルトリーニのウェブサイトにありました!
ちなみに今回のken smith design Brooklyn、前に紹介したInnerwood、これから紹介するAtelierZ、SadowskyはこのFender American Standardサイズではなく、
Long/Long: ~3.73" (94mm) X 3.73" (94mm)
になります。
これだけみるとLong/Longサイズが標準のように感じますが、世の中の単品で交換用に売っている5弦ジャズベースタイプのピックアップの大きさはほとんどがFender American Standardサイズです。
ということは交換用のピックアップを買うと、
ピックアップを取り付けるボディの穴が合わない(長辺の長さが小さくて入らない、取り付けネジの位置が違う)
ということが発生します。
今回はピックアップを交換してみたい、となんとなく思ったことがきっかけ気付きました。
ピックアップ交換はハンダ付けある程度できれば自分でやれるのですが、穴を大きくする作業が必要になるとハードルが高くなりリペアマンに頼むしかなく、しかも交換した結果は、試さないとわからず失敗して同じ状態戻すのもできないのです。
この結果私は何十種類のピックアップ買ったり借りては試していますがこのベースについてはピックアップをはじめ、配線にかかる部分をはほとんど何もいじっていない、という現状です。
<プリアンプの機能の多さと使いやすさの関係>
このベースにはAudere Audioの3バンドのイコライザー付きプリアンプ(Z-Mode Onboard Preamp )が入っています。
アクティブオンリーの仕様、コントロールはボリューム&トーンのスタックポット(つまみが重なっているタイプのもので上がボリューム、下がトーン)、トレブル、ベース、ミドル、プリアンプの効き方を3種類選ぶトグルスイッチ(レバータイプのスイッチ)がついていました。
更にはこのプリアンプがとても複雑で、
1 アクティブの中でもプリアンプの効き方3種類(High Z、Mid Z、Low Zという名前)に切り替えできる。
2 プリアンプ本体についている小さなマイナスドライバーで動かせるつまみ4つがあり、ピックアップのゲインの調整やピックアップの傾向(キャパシタンス、とメーカーウェブサイトには記載)を変えられる(ここは未だに完全に理解できていませんが、つまみを変えることでピックアップの特性(体感としては高音のピークが動く感じ)が変えられます)。
参考 http://www.audereengineering.com/3ZB.htm
の2点が可能になり、初心者にはとても難しいです。
買った当初、プリアンプだけでとても複雑でプリアンプの入っているフタをあけて調整までできてからなず好きな音が見つかります、的な印象を受けましたが、この機能が人によって合う合わないあると思います。
私は結構苦手でした。
色々できてしまい迷いが生じるのと、自分の好きな音に出会えるのがとても難しく、当初は曲中に使い分けたり、曲ごとに使い分けるといったことを考えていましたが、私はそこまで必要ない、と思ってしまいました。
マルチエフェクターと似ていますが色々いじって使い倒すのが好きな人には楽しいと思いますが、私は苦手でした。
今でこそsnsで世界中のベーシストとコンタクトとって同じ楽器持っている人に質問したりとかできますがなかなか出くわさず、機能はわかっても使いこなし方の情報得るのはとても大変です。
そして運良く好きな音が見つかったのですがそこまでが難関で更には結果好きな音ではなかった、なんて方もいらっしゃると思います。
<買った後の改造のしやすさ>
この時は楽器をあまりいじるのをそこまで興味持ててはいなかったものの、いじりたいってなった時に、プリアンプが複雑すぎるのと、このプリアンプがプリアンプと各ポットが一体化していて、半田を外せばプリアンプだけとれる、といったものでもなく改造がとても難しい(プリアンプ含めて全て取り替えになってしまう)ことがわかりました。
1-③学んだことから他の方に伝えたいこと
<色々プリアンプで設定できるからといって好きな音になるかわからないこと>
色々できても結局1種類しか音を使わないこと、も充分あり得て、色んな機能があるベースであればあるほど購入時にそこまで理解して買うのはとても困難であり、かなり上級者向けであることです。
私はとても好きな音だったからよかったですが失敗する方もいると思います。
<パッシブの音は出ない>
プリアンプの効き方3種類(High Z、Mid Z、Low Zという名前)を選べますが、やっぱりどれを選んでもパッシブの音は出ませんし、パッシブっぽい音も出ないなという印象です。
2 Sadowsky metroline
2-①購入経緯、理由
中古で一度も弾かずに購入。
この頃は狂っていましてサラリーマンの仕事で月80-100時間残業あったり体力的にもかなり消耗する働き方していてお金はそれなりにあるけど休日何もする気もなく食べるか寝るか、ギリギリバンド活動やっている感じで、ちょうどストレス溜まってしまってネットで発見して購入に至った商品でした。
もともとsadowskyは90年代のナチュラル、アッシュ、メイプルのシャーラーブリッジの頃の4弦のものを知り合いが持っていてその音があまりにもカッコよすぎて欲しいと思っていたところに、metrolineという少し安めに買えるシリーズがあると知って当時18万くらいで購入しました。
この時に買ったのが名古屋のGraciasさんで問い合わせしたらとても感じもよく当時Innerwoodも扱っている数少ないショップで調整も信頼できるな、と思って購入したところ本当に素晴らしい状態で届いて嬉しかった記憶があります。
2-②買って学んだこと
<ベースの重さ、重量バランス>
このベースは3.9kgくらいと5弦ではかなり軽く、何となく軽いのはいいなと思ってはいたものの所有してみて、てライブを沢山やっていた当時はとても楽でいいなと感じました。
一方軽いけどこのベースはネック幅も比較的広めでヘッドの厚みもかなり厚くてボディの割にはネックが重めであり、ペグがヒップショットの軽量ペグを使っている恩恵もほとんどなくヘッド落ちします。
そこでコレを解消するのに幅広のストラップを買ってストラップの身体に当たる方の素材がが滑りにくい素材(スウェードなど)にすることでいくらか解消でき、ストラップの重要性を学ぶことにつながりました。
<楽器の配線>
とにかくsadowskyの楽器の配線はとても美しくて美しければよい音(正確にいうと自分の好みの音)が必ずするわけでもないですが、配線がみやすいことで配線がどうなっているかに興味をもてました。
人の楽器を調整させていただくようになった今、色んな楽器の中身を見させてもらっていると、この仕事の美しさはとてもプロフェッショナルな仕事だと感じます。
これだけ配線が綺麗だと、
配線を変える改造とかしやすく、何よりトラブル起きたときの原因究明がしやすい
と感じます。
得てしてこの楽器での配線にかかるトラブルは皆無です。
<楽器のコントロールのし易さ、個性的な音>
ボリューム、バランサー、トーン(引っ張るとパッシブに切り替え)、トレブル(ブーストのみ)、ベース(ブーストのみ)ですがこれがても使いやすく調整しやすくて環境がかわったときにも手元で音を短時間で作りやすいこと実感しました。
前がkensmithdesignでつまみ沢山だったのもあり尚更でした(補足しておきますとつまみが沢山あるのと少ないのはどちらがよいとか優劣はなく、私は少ない方が使いやすい、というだけです。)。
最初はプリアンプがブーストしかできずアッシュメイプルのバキバキの音がするのでハイをカットできるとよいな、と思っていたところですが特にカットは不要でした。
トーンがついているのもあるのですがカットが不要、と感じることが多かったです。
それはこのプリアンプの優秀なところでブーストしない状態でベース単体で聞くとハイをカットしたくなるところが何もしない状態がアンサンブルだとちょうど良い、と感じられるところ。
この設計がすごいな、と感じています。
<個性的な強い音>
良くも悪くもSadowskyの音がします。
一番いいな、と思ったのはスタジオのアンプどれで弾いてもこの音がします。
セッティングが楽だな、と感じることが多かったです。
エフェクターをコンプと歪みくらいしか使わない私もコンプ不要だな、と感じる暗い素の音で結構音が完成されていて、楽器本体の調整(弦高、ピックアップの高さ、弦の種類)くらいで音が満足できました。
<楽器の完成度とそれを活かす楽器の調整>
これはこの楽器そのものから学んだことではないのですが、購入したショップがgraciasさんだったからというのがとても大きいです。
sadowskyは憧れがあり中古ででてきたら試奏にもいっていましたが、私が憧れを感じた友人のもっていたあのsadowskyとは全然違う、というのが当時の知識経験からも感じ取れて、こんなものなのか、と思っていたところ一度も弾かずに買ったgraciasさん調整の楽器がとても素晴らしく弦高を少し好みにする以外何も問題なかったことです。
買ったこの楽器と同じモデルを別なお店で弾いた時の印象とも全然違いました。
これが楽器店の調整力というか、同じ楽器の個体差は勿論、どの楽器店で買うかの大切さが理解できた瞬間でした。
当時はplekもないときでしたがplekある今も調整の信頼感は変わらないです。
瞬間と書いたもののこの買ってすぐとのきもいいな、と感じてその後もあの時の調整よかったし、細かな調整自分でやるようになってからも、今の音が不満で調整というよりもう音は充分満足だけどもっと追い込みたいってレベルの調整を定期的にしています。
この調整に答えるだけのネックの丈夫さや楽器そのもののトラブルの少なさに作り手の丁寧な仕事をじわじわと感じています。
後にこれが多分Redhouseさんの仕事であることを知りNYCに憧れあったものの日本の技術力に感心しコレで満足して今に至ります。
2-③学んだことから他の方に伝えたいこと
<Sadowskyは5弦の選択肢の一つとしてお勧め>
Sadowskyのように長年愛されているブランドはよっぽど音の好みが合わないということがない限りアクティブのジャズベースタイプのサウンドが好きなら選択肢として入れて良いということです。
私のはMetroLineというシリーズですがかなりオススメします。
私は5弦買う時個性を求めて、
Innerwood → ken smith design Brooklyn
を経て3本目でしたが、最初からSadowsky選択肢にあったのに遠回りしたな、と感じます。
他の人が持っていないから、という理由で回り道をしましたが、これから買う人にで5弦買いたいけど好みまで定まっていない、わからない、という人に、
Innerwood(当時新古品25万)
ken smith design Brooklyn(当時中古16.5万)
Sadowsky(当時中古18万)
の3本を薦めるならSadowskyを薦めます。
<好みが分かれる点>
軽くてとても楽な面、先ほど書いたとおり軽くてもボディバランスが悪いです。
また軽すぎることや、私個人的な見解でペグがヒップショットの軽いタイプということも影響していて重低音は出ません(同じタイプでNYCのチェンバード(ボディーに空洞があり軽いタイプ)ボディのものはさらに音が軽く聞こえます)。
この重低音でないことが悪いことではなく、個性的な音であるということです。
プリアンプでいくらローを上げられる、と言っても出ていないローを持ち上げることはできない、ということです。
軽いけど指板の幅が広く、弦間19mmなので結構広く感じます。
2回目はここまでにします。
この後の購入にも沢山の学びがありました、もちろん購入だけでなく人の楽器を弾かせて頂いたりと沢山の学びの機会があり今も毎日学んでいます。
3 最後に
読んでくださっている方がいらっしゃって感謝しています。
私以上に沢山のベース購入されたり沢山改造したりしてる方は沢山の気づきを得ていると思います。
気づきは楽しいし素晴らしい楽器に出会えるとすごい物欲にがられたり、私の場合ビルダーにあってみたいとか調整したの誰だろう?という気持ちになり心動かされ人生楽しくなります。
今回購入して気づいて次買う時はという学びを少し書いてきましたが購入しなくても済む場合もあります。
最後に、
実は楽器そのものを購入しなくても手持ちの楽器を少しパーツ変えたり調整してもらったりで解決することもあります。
とはいえ、パーツ交換して試奏なんてできないし、という交換して違った音になるかと、という心配もあるか思います。私もそうでした。
楽器の調整やパーツ交換の経験からこんな音になりそうだよ、とか何となく今の楽器の音が不満で音を変えたいんだけど何からてをつけていいかわからない、といった悩みを聞いて、
その人にとって意味のある楽器の調整
その人にとって意味のあるパーツ交換
をするお手伝いをしてプレイヤーを幸せにしたいと思って私自身楽器を調整したり日々勉強しています。
皆様にそれぞれにとっての、弾いてて心地よい楽器に出会えて弾くのが楽しくなるヒントになればと思います。