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フェンダージャパンジャズベースの調整依頼を受けて行ったこと

ベーシストの楽器の出したい音を出すお手伝いをしているhirokiと申します。
主にエレクトリックベースを弾いていて楽器の調整や楽器、pu製作、ジャズベースタイプのpu集めが好きなことから、puはじめとしたパーツ選びの相談を受けることが多いです。


こちらの記事で書きましたがフェンダージャパンのベースの調整依頼を受けて納品完了したため今回行ったことについて記事にすることにしました。


前に一度ピックアップ選定など調整依頼を受けるまでの経緯など書いた記事がありますが今回は調整内容に絞った記事になります。


依頼者様の現状と依頼内容は以下の通りです


《現状》
・既に別なメインのフェンダージャズベースを所有していてそちらがメインであるのでほとんど弾いていない。

・メインがあるので少し別な方向性にしたい。




この内容で調整を行い先日依頼者様にお渡しをしました。

お渡し前にライン直でオーディオインターフェースから録音した音源です(私が弾いた演奏なので演奏内容についてはご不満ある点についてはご了承ください)。



高音質版としてwavファイルも用意してみました。


フェンダーカスタムショップに負けない音質を目指せたらいいなぁなんて思って調整しています。


一部あれ、と思う見た目をしていますが、

・ピックガードが黒
・バダスブリッジ

になっているのは依頼者様がもともと交換していたものになります。



では、調整内容の詳細です。







1 トラスロッド調整



今回持ち込んでいただいた時、ほとんど締まっていない状態でした。

フレット擦り合わせとの兼ね合いもありますが少し締めました(緩める方向に少しだけ残る感じ)。



トラスロッドはネックを真っ直ぐにしたり弓形にしたりを六角レンチなどで調整する作業になります。


ネックエンドあたりに少し見えるネジのようなものでトラスロッドを調整する。



私個人的にはネックの状態にもよりますが極力締めすぎなくて良いなら締めない方向で調整します。


締めた方が音が締まった感じ、芯が出るというか倍音が少なくなる印象があります(これもそう感じる、というだけできちんと計測したわけでないですが)。


トラスロッドを緩めるとどうしようもないくらいにネックが順反りになってしまう場合に仕方なく締める、という感じにしています。


あとはジャズベースのように本体で結構シャープでタイトな音が出しやすい楽器(ブリッジピックアップがある楽器)については結構トラスロッドは緩めにしたいと考えています。

プレベのような1ピックアップで音で音に芯が出にくい、ぼやける、といった場合にはトラスロッドを締めていることが多いです。




2 フレット擦り合わせ


高フレット全体に加えて、特に2・3弦を中心にフレット擦り合わせを行いました。


トラスロッドをある程度調整した後に擦り合わせをやっています。

今回主に調整したの内容は、


① 11フレットあたりから20フレットあたりをかなり削る。

② 個別に気になったフレットを数カ所を少し削る。

③ 2、3弦の15から20フレットあたりを一番多く削る。


私が調整依頼をいただく場合にこれは必ずやっています。

場合によってはフレット交換まで必要なこともありますが、よっぽどひどくない限り、もしくは依頼者様がフレットまで交換したい、という希望があれば交換します。


私の調整は比較的弦高を低めに調整しながらも、

・低くすることによって気になる弦とフレットがぶつかって出るノイズが一定になるようにすること

・強く弾くことによって発生するビリつきが一定になるようにすること

・低くなって弾きやすくなるのは良いけど音が細くなったように聞こえることがないようにすること

・フェンダーのような7.25ラジアスのRのキツい指板で、弦高を低くしてもベンド、チョーキングしてビビらないこと


を目指しています。


これやるなら指板修正(指板のRを緩やかに(平らになる方向に)削って直す)をすればよいのですが、それをやらなくてよいならやらずにフレットの高さを利用して、2、3弦の高フレットを少し多めに削る、という作業を行なっています。




3 ナット交換、調整


元々ついていた牛骨ナットよりタスクナットの方が音が豊かになった(感覚としては高音の倍音が聞こえやすくなり軽いタッチで音程感のある音が出しやすくなった)ため交換しました。

交換したのはTUSQのナット。



TUSQはこの他にTUSQ XL(BLACKもこれに該当)という似てるようで違うものがありますがTUSQの方にしました。


私がインスタでナットを落とした時の音の響き方をざっくりとした設定(大きさも形も完全に揃っていないし完全な比較にはなっていない)で試した動画を見てください。


これで結構聞こえ方の印象が変わります。

1番最後の白い素材を使ったナットを今回採用しています。


TUSQは落とした時と高い煌びやかな音がしているのがわかるでしょうか?

特にラインで録音したりヘッドフォンで聴くより、アンプを通して耳で聴いたときの音の印象がかなり変わります。

弦のビリつきや押弦した時のアタックノイズ、スラップのサムの音、プルの音など耳にフレットと弦が当たった時の音が飛んでくるスピードが早くなったように感じます。



4 ピックアップ交換


オリジナルのフェンダージャパンのピックアップからフェンダーのPURE VINTAGE '66に交換しました。


以下サウンドハウスのリンクです。

・FENDER ( フェンダー ) / PURE VINTAGE '66 JAZZ BASS PICKUP SET

https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/344677/


元々のフェンダージャパンのピックアップはフォームバーというオレンジ色のワイヤーで、このPURE VINTAGE '66はエナメルという茶色いワイヤーで結構音が変わります。

エナメルの方が綺麗な高音が出る印象で、ノイズとして耳障りなガリガリ、ジャリジャリとした成分が少なく、ベースアンプ高音上げて、スラップやるぞーというようなバキバキの音に設定しても比較的嫌な音が出にくいと思います。


私もとても好きなピックアップです。

この動画がPURE VINTAGE '66のピックアップの魅力を最高に紹介していると思います。




5 ピックアップ高さ調整


極力ピックアップを弦に近づける調整をしました。


具体的な作業を順に書くと、

① ブリッジピックアップの1弦側を極力弦に近づける。

② ブリッジピックアップの4弦側を1弦側より少し離すけど極力近づける(1弦と4弦同じピッキングしても音量差が出にくくする)。

③ ①・②と同じことをネックピックアップでも行う。結果ブリッジピックアップよりネックピックアップの方が弦からの距離は離れる。

④ ①〜③を行いながらネックピックアップとブリッジピックアップをミックスした時の音を聞いて、ブリッジピックアップの音寄りになりすぎないようにブリッジピックアップの高さを下げていく。


といった調整を行いました。



正直ドライバーのネジ回すだけの作業なんで誰でもできますし地味な作業ですが、ピックアップの高さ調整は私が調整を行う工程の中で1番といっていいくらい大事にしています。

もしかしたらネックの調整より大事かもしれません。


ピックアップ交換するのももちろんかなり大きな効果が得られますが一番は高さ調整。

これをどうするかで全然音が変わります、本当に大事です。

もしかしたら今ある楽器のポテンシャルをいかせていないかもしれませんし、この楽器の音が自分の好みと合わないと思っていたら、実は調整が良くなかっただけ、だったということも結構あります。



今回取り付けることとなった、このPURE VINTAGE '66のピックアップは取り付けた時に最初に気づいたこととして、ブリッジピックアップの音が結構細い音が出やすいなと思いました。


ジャズベースのブリッジピックアップのみにした時にストレスなく弾くには、極力ピックアップを弦に近づけて弦を頑張って強く弾かなくてもアンサンブルの低音を支えられるような音(ミュート奏法しても十分な音量が得られるくらい)になるように調整して、これを軸にしてネックピックアップの高さを調整することが必要だと私は考えています。


これはフレットレスベースを弾いたことがある人は気づいていることではないかなと思います。


基本的には私はジャズベースタイプのピックアップの高さ調整する際はブリッジピックアップから高さ、特に高音弦側からまず決めていきます。




6   コンデンサ交換


元々取り付けられていたコンデンサ(元々のコンデンサは容量0.047μF)から容量が0.022μFのフィルムタイプに交換をしました。


元々乗っていたコンデンサの出どころが不明ですがよくついている緑色のガムみたいなフィルムコンデンサ、

コレみたいなものがついていたので交換。


コンデンサ実物


私個人的に容量が0.022μFのフィルムタイプが好み(元々のコンデンサは0.047μF)なので、以下サウンドハウスリンクですが、


https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/17062/


手元にあったこのタイプをつけました。

目的は楽器の音の出方にもよるのですがトーンを全開にしても少し高域の出方が物足りない時に交換しています。

少し高域がトーン全開の時に出過ぎるくらいにして少しだけ絞ってちょうどよい感じが好みです。



7   その他(クリーニング、弦交換など)


最後に10年以上弾いていなかったということで金属パーツのくすみや指板等の汚れをクリーニングして、指定のあった弦への交換など細かな調整を行いました。




8   最後に


今回は調整ついてより詳しく書いてみました。

音を変えたい、という相談を受ける中で、この楽器買いたいけどどうですか?とか相談受けることあります。

購入しないと難しいこともありますが、楽器そのものを購入しなくても手持ちの楽器を少しパーツ変えたり調整してもらったりで解決することもあります。
 

とはいえ、パーツ交換して試奏なんてできないし、という交換して違った音になるかと、という心配もあるか思います。私もそうでした。


楽器の調整やパーツ交換の経験からこんな音になりそうだよ、とか何となく今の楽器の音が不満で音を変えたいんだけど何からてをつけていいかわからない、といった悩みを聞いて、

その人にとって意味のある楽器の調整
その人にとって意味のあるパーツ交換

をするお手伝いをしてプレイヤーを幸せにしたいと思って私自身楽器を調整したり日々勉強しています。

皆様にそれぞれにとっての、弾いてて心地よい楽器に出会えて弾くのが楽しくなるヒントになればと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。


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