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聴読感想文#2 「ガラスのうさぎ」
今回聴いたのは、高木敏子著の「ガラスのうさぎ」。
第二次世界大戦を生き抜いた、敏子が自身の体験を綴ったノンフィクションである。私はこの本を聴いている間は、この作品がノンフィクションであることを知らずにいた。第二次世界大戦の間、耳をふさぎたくなるような悲惨な出来事はたくさんある。私はこの本もそのような出来事を総合して著者はこの一つの作品にまとめたのだろう、と勝手に思いこんでいた。そのくらい、これが一人の人に起こった出来事だという思考を避けくなるほど、敏子の体験は聴くだけでも苦しかった。これを書き残された著者にとって、戦争の思い出したくない記憶、頭から消したいような光景を思い起す作業はどれほどしんどいことであっただろうか。。
この本を読み/聴いていけば分かることだが、敏子は父、母、妹たちを戦争中に失くした。彼女自身、生きていけないと思ったときが当然にもあった。しかし彼女が最後に思わされたことは、生きる使命感、戦争が二度と起こされないよう、後世に戦争の体験を伝えることであった。この作品もそのようなご本人の意思によって書かれたものである。
不幸という言葉では表しきれないほどの体験をされた著者。戦争の中で彼女が見させられた無残で想像を絶するような光景、奪われた家族、そして日常。食糧難の中で、生と死のはざまで見る人間の必死な自己中心さ、無慈悲さ。それらを幼くして経験された著者。このような経験の後、どうして人は立ち上がれるのか、、と思ってしまう。
この本では戦争中に敏子が体験し、目にしたそのすさまじい事実とともに、彼女がどのように思ったのか、どのような心境だったのかも赤裸々に書かれていた。彼女の弱音が出てきたり、ショッキングな事実を受け止められないで無の感情になるような場面もこの本では出てくる。それらでこの本が溢れていても何の異様さも感じられないほど彼女の経験はあまりにも惨い。しかし印象的だったのが、そのような惨く悲惨な状況の中でも力強く生き抜き、それに直面しようとする敏子の姿だった。彼女は立ち上がれなくなるときにも、その状態にとどまり続けることをせず、その後には思い切って行動をする。著者も自分で書き残しているように、敏子は無っ鉄砲で、あまり恐れを持たずに、決心したことをする力があった。その彼女の決断、意志の強さ、行動力、それらはこの本が書かれたということにも表されている。
この本を書き残してくださった著者に感謝するとともに、この本が過去の作品として読まれなくなることのないように願う。私を含め、この作品を通して、悲惨な形で奪われていった尊い人の命、その人の日々を思い、戦争の愚かさ惨さを痛感し、平和を作る決断、行動が促されるように。