『キツツキと雨』
以前stand.fmで配信した映画の感想についてまた書きたいと思います。
この映画は2012年公開、沖田修一監督のコメディ映画です。私はどんな映画か分からないままタイトルに惹かれて観ました。
この映画は、人里離れたある村でゾンビ映画の撮影が行われる、という話です。
小栗旬さん演じる幸一(こういち)君という若者にとって、このゾンビ映画が初監督となる作品。でも彼は自信がないのか、存在感がなく、ほとんど喋らない気弱な印象です。
一方、役所広司さん演じる岸さんは、この撮影が行われる村で木こりをしている男性。息子と二人暮らしのお父さんです。
岸さんは、職人としての腕は確かですが、父親としてはちょっと不器用。
この岸さんと幸一君の二人が、ゾンビ映画を通じて出会い、心を通わせていくというのがこの映画のメインストーリーです。
私にはゾンビ映画というところがすごく面白かったです。クスッとなるささやかな笑い。そこに岸さんが村中の人を巻き込んでいきます。
村の人は、ゾンビがどんなものかも分からないままエキストラとして参加します。ゾンビへの先入観がないので、すごく自由に演じているのが楽しいです。
また、この映画の最大の特徴は大切なシーンほど台詞が少ない、ということ。表情やしぐさ、背景など、言葉以外のもので様々なことを観ている人に伝えてくれます。
特に食事のシーン。
人が食事をしている姿を見ると、その人がどんな人柄か、今までどんな人生を送ってきて何を大切にしているか、なんとなく伝わってくるんだと気付きました。
私はこの映画を観て、不器用だったり、寄り道ばかりしててもいいんじゃないかな、と思いました。
不器用だからこそ、心の深いところで伝わるものがあったり、人の痛みを感じられたり、安心感を与えてくれたりするんだと思います。
また、寄り道してたくさんの人と出会い交流していく中で、色んな価値観に触れて、違いに気付く。独りでは気付かないことに気付かされる瞬間がある。それがこの上なく愛しい。そんなメッセージを映画から感じました。
特に最後の食事のシーンがぐっと来ました。
言葉じゃなくても伝わる、優しく流れる時間がとても好きな映画です。
また、エンディングで流れる星野源さんの「フィルム」がとても素敵です。映画の余韻に浸りながら聴けます。
気になる方はぜひ観てみてください。