細野晴臣「銀河鉄道の夜」サウンドトラック

これはアニメ映画「銀河鉄道の夜」(1985年)のサウンドトラックで、あのYMOの細野晴臣氏が手がけたものである。
筆者は小学生の頃にテレビで放映された映画を観て、音楽と共にその不思議な世界観に圧倒され、数年後にサウンドトラックをわざわざ探しに行って買った。あれから40年経つが未だに愛聴盤である。
全編、どこまでシンセサイザーでどこまで生楽器なのかわからない。人の声はもちろん生なんだろうが、細野さん程になればシンセサイザーでこのようなアナログな世界を作ってしまう事も可能ではないかと思ってしまう。
このアニメ映画を見たその日は、あまりに幻想的というか作品の世界観にどっぷり支配されてしまってなかなか寝付けなかったほどだった。そしてこのサントラの最後にある「エンド・テーマ」がずっと頭の中にリピートしていた。後に中学生になり国語の授業で宮沢賢治の原作に触れ、「ほんとうのさいわい」「イーハトーヴ」など賢治の世界観に触れた。この映画がいかに原作に忠実に作られているかがよくわかった。登場人物は全て猫であるが、それもこの映画の独自の世界を作っている。
音源の中身に少し触れていくと、宮沢賢治作曲の「星めぐりの歌」がある。それもオルゴールのような音で(最後にテンポが落ちていくので本当にオルゴールのイメージなのかもしれない)。
このサントラでエンドテーマの次に好きな曲が「プリオシン海岸」。アンビエントなシンセサイザーだけで演奏される幻想的な雰囲気。同じメロディが数回繰り返されるだけの曲で、それほどドラマ性もない。もちろん、タイトルは原作に出てくるので、映画のために作曲されたものだろうと思っていた。
ところが、驚いたのは、これは映画以前の細野さんのオリジナルだった。「オムニ・サイトシーイング」というCDに入っている「プリオシーヌ」という曲が全く同じ曲だった。ただしこちらはドラムやベース、さらにはヴォーカルまで入っていた。この「銀河鉄道の夜」とは全く違うテクノ・ポップなハーフタイム・シャッフルなアレンジで、もちろんこちらも凄く好きだ。
そして何と言ってもこの映画のメインテーマ、映画を初めて見たその日から頭の中でエンドレスで流れ続けた曲が「エンド・テーマ」である。
汽車がゆっくり走るようなビートが流れて、謎のコード進行でAメロ→サビと進んでいく。実際この曲をピアノ・トリオで演奏するために楽譜を作った際、コード進行が本当にわからなくて、共演者に大分相談に乗ってもらった覚えがある。国も時代も既存のものに特定されない独自のもの、本当にこのメロディというかこの曲の世界観に頭を支配される。映画を見ながらだとなおさらである。全く小学生の自分に何てことするんだ細野さん!
エンド・テーマは以下に、しかも細野さん本人のチャンネルにアップされていた。
https://youtu.be/a-Rx2D32Ygc

このサントラ、他にミュージシャンが関わっているのかちゃんと情報を得られていないのだが、コシミハルさんというアーティストが共同で制作に関わっている事がわかった。
筆者はドラマーとしてコシミハルさんのアルバムレコーディングに参加した事があり(「Moonray」https://www.amazon.co.jp/MOONRAY-ムーンレイ-コシミハル/dp/B01698W040)、レコーディングの時ミハルさんに「細野さんの「銀河鉄道の夜」大好きなんです!」と思わず言ってしまった。
ちなみに「Moonray」には細野さんがシェイカーのオーバーダブで参加しており、別録りながら共演も叶ってしまっていた。いつかお会いできたら、「銀河鉄道の夜」の世界に影響されて40年後こんなんなりましたって言おう。

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