脳科学から考える催眠術 #2 催眠導入編

#2では催眠術の仕組みについてお話します

では、早速参りましょう。

まずは、催眠にかかるまでの全体の流れをご説明いたします。

1.表面意識に隙をつくる
2.潜在意識に影響を与える(暗示をかける)
3.脳が潜在意識と現実を整合させようとする

早くも難しい言葉を使って申し訳ないです。

以下、順を追ってご説明します。

1.表面意識に隙をつくる

このステップをさらに細分化して説明すると下記のような流れになります。

ホメオスタシスから現実の臨場感をはずす⇒変性意識状態になる⇒暗示の臨場感に固定される

ここで重要なのが、脳科学の本に出てくるホメオスタシス(恒常性維持機能)というものです。この作用を主に司っているのが間脳視床下部であり、その指令の伝達網の役割を自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っています。

たとえば、鳥類や哺乳類の体温調節機能は、生体恒常性のひとつです。
鳥類や哺乳動物の活動時の最適温は40℃付近(種や生理状態でこの温度は異なる)です。
これより体温が高い場合は自律神経系や内分泌器系などにより発汗、皮膚血管の拡張で体温を下げようとし体温が低い場合はふるえ(悪寒戦慄)や、非ふるえ熱産生(代謝の亢進による発熱)によって体温を上げようとします。これは反射とは異なります。

つまり、ホメオスタシスは外界の情報を脳へフィードバックすることで常に自分の中の情報を更新し、自分自身を最適な状態に保っているのです。

そして、この機能が特徴的なのは仮想空間ともフィードバックの関係を保てるということです。

この機能により、私たち人間は映画やゲームの画面上の出来事を、高い臨場感を持って、まるで自分がその世界に入り込んでしまったかのように体験出来るのです。

そして、もうひとつ特徴的なことがあります。

それは、臨場感を同時に2つ以上の世界で持つことができないということです。

この特性を利用し、催眠では「催眠にかかりやすいかチェックしましょう」という被暗示性テストというものを行って、徐々に現実の臨場感を仮想空間(想像)へと移行させていきます。

では次に、変性意識状態という言葉をご説明します。

変性意識状態とは、通常の覚醒時のベータ波意識とは異なる、一時的な意識状態をさします。

他人の体験を共有することが可能であり、社会学分野においても研究対象となっています。

この変性意識状態になると、人がいつも物事を判断している「表面意識」の働きが弱まり、「潜在意識」の働きが強くなります。

そして、その潜在意識は判断力がないため、言われたことをそのままの情報として受け入れてしまうという特性を持っています。

実はこれが被験者の「脳が持つ機能」であり、催眠が術士の能力よりも被験者の能力が重要である所以なのです。

では、この潜在意識に次のnoteで言葉による暗示を使った働きかけについてお話いたしましょう。

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