日本酒コラムVol.2 中沢酒造様(神奈川県)酒蔵見学レポ
ひやおろしって何? 日本酒初心者でも安心「松みどり」のススメ
FoodGrooveJapan(フードグルーブジャパン)という食のコミュニティで日本酒コラムを書いています。
FoodGrooveJapan通信では、各担当の食材や食文化について定期的に発信をしていますので、合わせてお読みいただけましたら幸いです。
2021年10月1日公開
〖ひやおろしって何? 日本酒初心者でも安心、松みどりのススメ〗
小林舞依です。
今回日本酒コラムは2投稿目となります。
前回は私の地元、宮城県より一ノ蔵様のすず音(ね)の夏の楽しみ方と、日本酒を鑑定する級別制度についてご紹介させていただきました。
このコラムでは日本全国にある 1,400 以上の酒蔵にバトンを渡す、酒蔵がおすすめする酒蔵のご紹介からできております。
今回お話をうかがったのは、神奈川県足柄上郡松田町にある中沢酒造様、11代目の鍵和田亮(かぎわだ あきら)氏です。
鍵和田氏は東京農大で醸造科学科で学んだのち、株式会社一ノ蔵に入社。酒づくりの基礎を修行されに行かれていたご縁からご紹介いただきました。
■中沢酒造の歴史
中沢酒造株式会社は、1825年(江戸・文政8年)から約 200年もの間、全量手造りにこだわって酒造りを行なっている酒蔵。神奈川県は47都道府県の中でも特に酒蔵が少ない県ですが、松田町は小田原からの南風が吹く暖かい気候ということもあり、寒づくりであっても温度管理が難しい地域。
もともとは松田周辺の庄屋を生業とする一方で、神奈川県産の足柄米を使い、日本酒造りをしていたのだそう。当時、小田原藩の御用商人として大久保家に出入りしており、お酒を献上したところ、藩主大久保氏より「松美酉(まつみどり)」の名を与えられたのだそうです。
この「松美酉」の名は、“松”は蔵の横を流れる、酒匂川沿いの松並木を。“美”は松田町の美しい風景と、この美酒を。“酉”は酒壷の形を表し、一文字で酒を意味する。このように代々語り継がれているとのこと。
今回は鍵和田氏にお願いして特別に酒蔵見学をさせていただきました!
■中沢酒造の酒のつくり方
松美酉は厳選した良質の酒米と、丹沢山系の清らかな伏流水から作られています。今でも昔ながらの麹造りに始まり、「ふね」による上槽まで全量手造りにこだわっています。
このふね、私は初めて拝見したのですが、歴史と風情を感じる存在感がありました。
蔵には、木製のふねと鉄製のふねが 2 つありました。一度麹を入れると搾りきるまでに 3 日もかかるのだそうです…!しかも、松美酉の酒造りは、純米酒と生酒にこだわっている酒造りだからこそすべて手作業で行なっているそうで、酒蔵は 1 階建てになっていました。
毎年 10 月頃になると岩手県から蔵人が 3 人来て、鍵和田氏をはじめとする 3人と計 6 人で酒造りを始めます。昔は倍以上の蔵人たちと仕事をしていたことから、機械よりも人の手で作業をする蔵になっているとのこと。
鍵和田氏や 10 代目を中心に杜氏をされているとのことで、自分たちで毎年テーマを決めて酒造りに臨んでいるというお話がとても印象的でした。
■蔵直結の販売所では試飲もできます!
専用コインを購入し、1 杯 200 円〜日本酒の試飲ができます。
しかも 1 杯 40〜60ml、6 種類の日本酒が冷やされており、全部飲むと 2 合分で 1,000 円と飲兵衛にはたまらない居酒屋状態(笑)。酒蔵見学の後に複数本購入したのは言うまでもありません!
販売所では私たちの他にも多くの方が買いに来られており、ここでしか売っていない地酒も。全国燗酒コンテスト 2021 において最高金賞を受賞した松美酉の定番酒「松美酉 本醸造」は贈答用に購入されているお客様がいらっしゃいました。
■この秋おすすめの一本は・・・
蔵見学をし、販売所でたくさん試飲させていただいた後、鍵和田さんに伺った質問は「この秋、そしてコロナ禍でどのお酒を飲んでほしいですか?」でした。
即答でお答えいただいたのが、秋季限定「松みどり純米吟醸・秋あがり」そして「松みどり純米吟醸・ひやおろし」です。
「秋あがり」は、春先に搾ったお酒を瓶詰・火入れを行い、低温で 6 ヶ月熟成させた、まさに秋にぴったりのお酒。
お米は長野県産の美山錦 100%使用。“穏やかな香りとまろやかな味わい“という説明に納得する、とても飲みやすく秋晴れの空の下でゆっくりと頂きたいお酒です。こちらはまもなく売り切れとのこと、急ぐしかありません!
「ひやおろし」は、春先に搾ったお酒を瓶詰・火入れを行い、低温で 7 ヵ月熟成させたお酒です。10 月上旬の発売です。
お米は岡山県産の雄町 100%使用。フルーティーな香りと濃厚な味わいが特徴だそう。早く飲みたいですね!
季節で楽しむ日本酒日本酒は冬に醸造されて絞られたあと、劣化を防ぐために二度、火入れ(ひいれ)
と呼ばれる加熱処理が行われます。冬に絞られたその状態のまま、火入れを行わずに卸される日本酒は「生酒(なましゅ・なまざけ)」と呼ばれています。
「ひやおろし」とは、日本酒を造る段階で二度目の火入れを行わず卸される日本
酒のことを指します。
冬に絞った日本酒を春以降に保存する際に、火入れを一度行って貯蔵します。秋になり、外の気温と貯蔵庫の温度が同じくらいになる頃に出てくる日本酒が「ひやおろし」です。
常温の意味を指す「冷や」の状態で「卸す」こと、これが「ひやおろし」の語源となっています。
冬に絞ったまま卸した「生酒」がフレッシュな味わいであるのに比べ、「ひやおろし」は一度火入れを加えた後に、貯蔵庫で夏のあいだ寝かせてあるため、時間によって程よく熟成されています。
絞りたての粗さが取れ、味わいにまろやかな丸みが出て、味わい深さとを楽しめるひやおろし。
飲み方は、よく冷やして生ならではの爽やかな味わいを楽しむのも、ぬる燗でコクを楽しむのもおすすめ。
冷やして飲むことで、スッキリとした口あたりと繊細な味わいが際立ちますし、ぬる燗はお酒の旨味とコクを存分に味わえるでしょう。秋刀魚や牡蠣、根菜やきのこなどと合わせていただきたいですね。
■酒蔵からのバトン
このコラムでは、日本全国の酒蔵をつないで酒蔵がおすすめする酒蔵をご紹介して参ります。
中沢酒造様からご紹介いただいたのは、京都府伊根町にある向井酒造株式会社の向井崇仁(むかいたかひと)社長。
鍵和田氏の農大時代の同期で、同じ研究所に所属し、学生生活最後の一年を共に過ごした仲だそうです。現在は同業者として切磋琢磨しておられるとのこと。友情を感じるバトンとても楽しみです。
次回のコラムでは向井酒造様にお話をうかがいます。お楽しみに!
<インタビューご協力>
中沢酒造株式会社 11 代目 鍵和田亮様
神奈川県足柄上郡松田町松田惣領 1875
https://www.matsumidori.jp/
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