【仮説】イラストレーションは芸術作品ではなく工芸品である
朝からTwitterとかいう非生産的な事をやっていたらこんなツイが流れてきた
依頼する側の「手抜きでいいので安く」は気持ちはわかるんだけど、商品になった時「安く描いたから安い絵」なんて情報は無いので、描く側からしたら「下手な作品履歴が残る」だけなのでわかって欲しい
— 藤ます_Vtuberうさます🐡 (@momoge911) November 9, 2021
依頼する側の「手抜きでいいので安く」は気持ちはわかるんだけど、商品になった時「安く描いたから安い絵」なんて情報は無いので、描く側からしたら「下手な作品履歴が残る」だけなのでわかって欲しい
まあ、絵描きがフォロワー数の権力を振り回して好き放題言ってるなぁ…というルサンチマンめいた感情が自分の中に浮かんできたことは正直認めますが、そういう醜い考えはとりまゴミ箱に放り込んでおき、この際なので自分の中にある割と重要な考え/仮説について触れておこうと思います。それは
イラストレーションは芸術作品ではなく工芸品である
というものです。
とはいえイラスト頼む方は絵に精神性とかそういう大層なもん求めてなくて、求めてるのは本質的に「なんかいい感じの飾り」「工芸品の壺」くらいなもんなんで、ちょっと見栄えさえすればいいからなるべく安く済ましたいってそれなりに切実な事情があるんも判って欲しい https://t.co/Q1BVzTMNc7
— ふるべ/Hrubešová (@hrubeshovaa) November 9, 2021
精神性とかを求めるならもうイラストじゃなくて芸術表現なんですけど、現状イラストってのは芸術じゃなくて工芸品だってのは絵描きの人は認識すべき課題だと思うんすよね…だから依頼者もコストカットしようとする。芸術では基本その発想にならないはず
— ふるべ/Hrubešová (@hrubeshovaa) November 9, 2021
「とりあえずいい感じの雰囲気にしときたい」みたいな理由で偽物の九谷焼の壺応接間に飾ってる人とか、結構居ると思うんすよね…(無断転載の絵RTしてる人も似た感覚なのかもしれん) https://t.co/z2e1su7ZZb
— ふるべ/Hrubešová (@hrubeshovaa) November 9, 2021
まあこんな感じで自説をツイしたのですが、加えてイラストレーションが芸術品ではなく工芸品であるという自分の仮説を裏付ける証拠(自分が観測した範囲ですが)を少々…
・芸術作品はギャラリーや美術館に展示されるが、大半のイラストレーションはそうではない(ただ一部の高品質なイラストレーションは展示会やギャラリーでの販売がある事は事実で、そういうのは実際芸術作品の方に足を突っ込みつつあるとも思っています。「でない」とは言いましたが、おそらくその境界線はファジーなもので、芸術作品と工芸品はスペクトラム/連続体的に繋がっているのでしょう)
・用途に於いてイラストレーションと既存の芸術作品は全く異なる様態を持つ。芸術作品とは詰まるところ資本家が購入し、独占的に所有、飾るか、美術館が購入しある程度高尚で高潔な意図を以て大衆に提供するする用途が主だが、イラストレーションは広告等、もっと大衆的な用途が主である(これは自分の中で世界史上最初のイラストレーターだったミュシャが広告業界と深い繋がりを持っていた事でも裏付けられるし、そもそもミュシャが属していたアール・ヌーヴォーはアーツ・アンド・クラフツと呼ばれる芸術と工芸の融合を目指した運動をその源としていた)
・芸術作品の単価に対して一般にイラストレーションの単価は低い
→この事によってイラストレーターに於いては作業効率、作品の単価が非常に重要視される。芸術家が作業効率を気にするというのはあまり聞いたことがないし、作品単価に対して自分の作品を買ってくれた、という事実以上にごちゃごちゃ言う人もあまり見たことがない
・イラストレーションはかなりデジタル化が進んでいる。芸術作品というのが作品の唯一性をその価値の中枢に於いている側面がある(アンディー・ウォーホルなど、ポップアートでは若干例外がありますが)故に未だにアナログが中心である事とは齟齬が生じる(事実これがイラストの無断転載が発生する根本的理由でしょう)
※註:未だにアナログのみで活動してらっしゃるイラストレーターの方は相当数おり、そしてそういう方たちこそがギャラリーで自分のイラストを販売しているイラストレーターの核を担っているというのが自分の観察です。彼らは実際もうイラストレーターと言うより芸術家なのでしょう…
・芸術家が批評家と強い繋がりを保ち、2陣営による強いフィードバックループを形成していること、そもそも現代では芸術表現自体が批評的側面を持ちつつある事に比べ、イラストレーションでは批評家の立場は極めて弱く、大半のイラストレーターはそもそも批評自体を一切受け入れようとしない(前自分が「イラストレーターは態度がクソデカい」って言ったらぶっ叩かれましたが、要はそういう所なんですよ…)
・ぶっちゃけた話だが、芸術というのはハイカルチャー、メインカルチャーに属している一方で、イラストレーションとは未だにサブカルチャー的な世界観に属している感覚が強い
またこれは自分がこのツイ
イラストが芸術ではなく工芸品であるという事実、イラストに於いてその作者への敬意が一般的に少ない理由なのかも。九谷焼の壺の作者なんて誰も知らねーしそもそも誰も気にしねーしな…
— ふるべ/Hrubešová (@hrubeshovaa) November 9, 2021
でも述べた事なのですが、イラストレーションに於いてその作者への敬意が非常に低い人が一定数居ること、またイラストの無断転載やトレパクをするのに一切の躊躇いのない層が見られる事の本質的な理由なのかも知れません。工芸品の作者に注目する事、確かに全然ないもんなぁ…骨董品結構好きな自分ですらそうですから、普通の皆さんならさもありなんでしょう
この仮定を前提としたイラストレーターの皆さんに対する建設的提案
ここで終わったら単にフォロワー120人の有象無象が神絵師の皆さんにうんこを投げたというしょーもない結果に終わってしまうので、自分なりに出来る範囲で建設的提案を幾つか投げておきましょう。そりゃイラストレーターさんも人間だから、お金ないと生きていけないし、現金な話、お金持ちになってウハウハしたいもんね。一応自分経済左派なんで、そういう感情には厳しくないですよ…
一つ容易に考えつくのは、イラストレーションを芸術の側に寄せていくことです。その為には
・イラストレーションの作品の唯一性を確保し、イラストの単価を上げる
→デジタルからアナログへの移行
※註:この観点からNFTに首を突っ込んでる絵描きの人を一定数見ますが、個人的にはNFTは全くおすすめしません。まあ幾つか自分でNFTに関する記事を調べて頂ければ分かるとは思いますが、端的に言うなら、暗号資産周りは日常的に詐欺紛いの話がポップアップする愉快で危険でヤバい世界なので、ヲチするだけならこんな楽しい界隈もないですが、自分の金を突っ込むべきじゃないです…
・イラストレーションのサブカルからメインカルチャー/ハイカルチャーへの移行によるイラストレーションの地位向上
→これに関連して、批評家との関係性を築き、イラストレーション表現の批評性を高め、批評家とイラストレーターの間で正のフィードバックループを確立する
・もっと言えばぶっちゃけた話、資本家との関係をもっと深め、イラストレーションを彼らの独占的なものにしてゆく(余談ですが、最近のCommissionやSkebの流れは、おそらくこれの先駆的なものなのではないでしょうか?)
・もうイラストレーションはやめて漫画を描く。漫画の単価はイラストより遥かにデカく、利用価値も高い
…とパッと見思いつくのはこんな感じでしょうか。ま、僕は芸術批評家でも芸術家でもなんでもなく、ちょっと絵が描けるだけの一般ツイッタラーなんで、そんな真に受けなくても結構ですがね…
あ、後追記ですが、これは【事実】ではなく【仮説】でしかないので、皆さんがおかしい、気に食わないと思われたらガンガン批判していただいて全然大丈夫です。後自分は政経クラの人間なんで、多少うんこ投げられる事には耐性があるから、そこら辺も大丈夫です(ただスパム垢使った一斉スパブロで垢凍結とか、そういうんはやめてネ…)
というわけで以上でした。このNote記事が、イラストレーターの皆さんのお役に少しでも立てることを祈っています