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【公務員to公務員】社会人経験者試験受験記①

転職のきっかけ

入庁当初は今の組織を辞めるなんて微塵も思ってもいなかったし、定年まで勤めて、退職金をもらってどこかの企業に”天下り”して悠々自適な生活を送ろうと考えていた。

全国転勤はあるものの、妻も私も異動は割と楽しみにしていた。
勿論、引っ越しの準備は毎回大変だし、新しい職場の上司の良くない噂を聞いたり、その職場にいる同期からこれから始める仕事の内容を聞いて萎えることはあったけれど、それ以上に自分が想定もしていなかった土地に住み、そこで生きるということが好きだった。
妻がコロナ禍以前からテレワーク形式で仕事をしており、割とフットワークが軽かったというのも一因かもしれない。

夫婦ともども九州出身なので、雪国への異動となれば高く積もった雪に子どものようにはしゃぎ、美味しい海鮮や肉に舌鼓を打ち、関東への異動であれば電車1本でいつもテレビで見る”あそこ”にいける事実に飛び跳ねた。

令和4年に子どもが生まれた。
我々にとっては待望の子どもである。

SMAPの「らいおんハート」という曲がある。
曲の中で、主人公は「子どもが生まれたとしてもパートナーが1番で子どもは2番」と歌っていて、私も同じような感覚を抱くのだろうかとも考えていたけれど、そんなことはなかった。
24時間全力で欲望をぶつけてくるその小さな存在は、確実に自分の人生で最も大切な存在になった。

子育てを始めてから気付かされたことがたくさんあった。

保育園に通わせるためには多くの労力、時間、そして運が必要なこと。
子どもにとって、地方での生活は可能性を絶たれるのと同義であること。
子どもにとって、転校は不登校の引き金に大いになりうること。
…etc

子どもを育てることに関して、予習していなかったわけではないけれど、全然足りなかったのだと身に染みた。

今後の全国転勤を含めた勤務を考えると、率直に「無理だ」と感じた。

夫婦2人だけで生きていくのであれば、今の仕事を続けることは全く問題ない。
しかし、子どもの未来や妻への負担(保育園に入れない場合の退職)を考えると、私の全国転勤という職務環境が原因で、途方もないストレスに家族をさらし続けることになってしまう。

この悩みを抱き始めた当初、職場の先輩に相談したことがある。
「早めに単身赴任に切り替えたほうがいいね」と言われた。
その先輩も、同じ悩みを抱えそのように選択したのだそう。
職場を改めて見渡した時に、お子さんがいる家庭の職員の単身赴任率に驚いた。

私は一人で子どもを見続ける大変さを分かっているつもりだ。
妻が美容室に行くとき、たった数時間ワンオペになる際でさえもそわそわしてしまう。
単身赴任という選択をし、「子どものためだから」と妻に全てを押し付けて、自分は赴任先の飲み屋街で飲んだくれる。
そのような選択はできないと考えた。

何のために仕事をするのだろうかと考えた。
生活の為?自己実現のため?志を貫くため?

私の答えは、「子どものため」だった。
勿論、それは子どもが生まれてからの話だけれど。

収入の面では目的は達成しているかもしれない。
ただ、父親として、数か月に一度しか子どもに会えない生活を続けることが、果たして子どものためなのかと考えると否である。

そうして私は現職からの転職を決心したのである。

つづく

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