【私の好きな曲#1】Beabadoobee / She plays bass
ひとことまとめ
フィリピン生まれ、ロンドン育ちのBeabadoobeeによる2019年のシングル。まるで90年代のインディー・ロックのような、ローファイな疾走感が印象的な曲だ。
目を閉じて聴いていると、スマートフォンやSNSがなかった頃の空気の匂いがするようだ。
世界はまだシンプルな謎に満ちていて、情報はいつも不足していて、空想をどこまでも自由に広げても邪魔するものは何もなかった時代。必要なものはTシャツ、ジーンズ、スニーカー、そしてギター。それだけあれば世界の全てにアクセスできたような気がした時代。
解説
ビーバドゥービー(とカタカナで書くとなんだかすごくファニーなのだけど、本名はBeatrice Ilejay Lausという)は、フィリピン生まれ、ロンドン育ちのシンガー・ソングライターである。
彼女は2000年にフィリピンのイロイロ市に生まれ、3歳のときに両親とともにロンドンへ移住している。10代の頃には、Karen O、Yeah Yeah Yeahs、Alex Gなどを熱心に聴いていたというから、アメリカのローファイなテイストのインディー・ロックが体に染み付いているのだろう。
彼女はもともとバイオリンを習っていたのだが、17歳で中古のギターを入手し、YouTubeを見て独学で弾き方を学んだ。(教則ビデオじゃなくてYouTubeというところがいかにも今っぽい。)
そして2017年9月にはじめてギターで書いた曲「Coffee」をYouTubeにポストし、それが話題を呼ぶこととなる。
それがきっかけで、Dirty Hit Recordsと契約し、2018年にEP「Lice」でデビューする。
なるほど、2000年生まれの新世代らしいヒストリーだ。
今回取り上げるシングル曲、She plays bassのサビの歌詞をみてみる。
ベーシストの女の子に片思いしているナイーブな男子の心情を綴った歌詞である。イントロから続くベースのリフレインがとても可愛らしいメロディーで、一度聴いたら忘れない。
そして、サビのところからクリーントーンでかなりリヴァーブの効いたギターが被さってくるのだけど、この音色がノスタルジックでスゥイートないい湯加減なのと、メロディーがさりげなく複雑な展開をしていて、そのヒネリ具合に、何度も飽きずに聴いてしまう。
よく晴れた休日(きっと夏がいいな)、青空の下、車で田舎をドライブ中にFMラジオからスカスカな音質でこの曲が流れてきたら、きっと最高にちがいない。