小選挙区制度がもたらす改憲の国民投票の読みづらさ
日本で小選挙区制度が導入されたのは90年代中頃のことでした。当時はアメリカやイギリスのような二大政党制をもたらして政権交代により政治の活性化・透明化を図ることを目的として説明されて導入となりました。
その十数年後には実際に自民党から民主党への政権交代がありましたから効果はあったのかも知れませんが、その後のもう一度の政権交代後は安倍内閣の歴代最長政権が出来てしまいました。その自民党安倍政権を今では痛烈に野党の立場で非難している小沢一郎は、自分が強引に導入した小選挙区制度に対してどう思っているんでしょうね。
安倍一強の理由は別に小選挙区制度だけではありませんが、中選挙区制度だったら総裁や幹事長の言うことを聞かない非総裁派閥もある程度は存在していたはずですから、他党への政権交代はなくても自民党内での政権交代・安倍おろしは起きていたかも知れません。そう考えると中選挙区制度の中で長期政権を築いていた佐藤栄作の凄さを感じざるを得ませんが、それはともかく現時点で小選挙区制度自体の改革や廃止を訴える声は小さいので、当面はこのままでしょう。
総裁3期目となった安倍政権にとって、悲願の憲法改正はずっと悲願のままで存在し続けています。改憲に必要な衆参両院で国会議員の3分の2という数字をクリアしないといけないからですが、例え選挙でそれだけの議席を党として得たとしても、実際に憲法改正の議員投票を行った時には造反する議員も出てくるでしょう。そう考えると3分の2を大きく上回るレベルでの議員数にならないと発議すら出来ないでしょうが、安倍一強体制が続く割にはそれほど議席数は伸びていません。あくまで有権者は衆院にしろ参院にしろ3分の2を超えるか超えないかというラインで行ったり来たりする程度の支持に留まり続けています。
また、例え大幅に議席数を増やして衆参両院を通過したとしても、最後に国民投票が待っています。国民投票は過半数でクリアですので国会の3分の2という数字よりは楽そうに思えますが、ここで小選挙区制度の仕組みがかえって逆に票読みを出来なくしてしまいます。
小選挙区制度では、一選挙区に一人だけが当選しますので、多くの死票が出ます。トップ(つまり当選者)がその選挙区において過半数の得票をしているとは限りません。3割4割でも当選できます。そうやって当選した議員の数が3分の2を超えていたとしても、得票率では過半数を超えていないことも充分にあり得ます。
現に、直近の2017年衆議院選挙では与党で3分の2の議席数を確保できましたが、得票率では小選挙区でも比例代表でも5割を切っていました。この結果だけを見れば今は憲法改正出来ないと安倍総理が判断するのは当たり前です。憲法改正の発議をして国民投票にまで持ち込んでもそこで過半数を取れなければ、改憲派としては大きなダメージを食らうことになります。
自身の政権の安定に寄与している現行選挙制度が、その一方で国民投票で勝てるとは限らないことも補償してしまうのは大きなジレンマでしょうし、だからといって選挙制度を変えるのも本末転倒でしょう。選挙で勝てなくなったり議席数が減ったりしたら政権自体が危うくなってしまいます。
結局のところ、安倍政権3期目においても多分、改憲については何も進まないんじゃないでしょうか?
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