Jリーグのホームタウンとネーミングライツを巡る今回の報道の個人的感想
一部報道で、Jリーグの大きな変革について取り上げられています。その一部報道の一部内容については、Jリーグ事務局がきっぱり否定していますし、Jリーグクラブでもあえて否定する発言を出している社長もいたりして、結構勇み足的な報道だったのかなという印象を個人的に持ちました。
実際にその報道の通りになるとしても、Jリーグやクラブにしてみたら公式発表する前に出したらまとまる話もまとまらんだろうが、と怒りたくなるでしょう。
元々の一部報道にあった過激な文言の「ホームタウン制度撤廃」というのは、各種反論を見るに相当無理のある見出しでした。その一部報道を取り除いて考えると、ホームタウンの規制を緩めて、ホームタウン外での普及・育成・広告・営業活動をするというのは、登録上のホームタウンをむしろ守る動きにもなるはずです。
登録したホームタウンでしか活動できなければ、人口密集地をホームタウンにするクラブが増えるはずです。逆に考えると、本来のホームタウンは残しつつ、営業宣伝活動を近隣自治体で行うことが自由に出来るようになるのなら、ホームタウンを移転する必要が無くなります。
ガンバ大阪で言えば北摂14市3町がホームタウン地域です。
【北摂】
吹田市 茨木市 高槻市 豊中市 池田市 摂津市 箕面市 島本町 豊能町 能勢町
【北河内】
交野市 門真市 四條畷市 大東市 寝屋川市 枚方市 守口市
と、おそらくはJクラブの中でもかなり自治体の数が多い方だと思います。クラブの成り立ち、親会社であるパナソニックの会社や工場の立地などを考えると当然ではありますが、最初からこうではなくてクラブ関係者が地道にホームタウンを広げてきました。
これが、今回のJリーグの改革を受けて変わるとしたら、メインターゲットは大阪市でしょう。Jリーグ当初は本社所在地でしたし、何より人口も経済規模も異なります。ただ、当然大阪市をホームタウンとするセレッソ大阪との争いになりますので、そんなすぐには関わらないんじゃないかなと思います。今のホームタウンになっている自治体からすれば、あまり良い気がしないかも知れませんし。事前の説明や了承や根回しなどは必要でしょうね。
同じ一部報道の中に、数年後にはクラブ名にネーミングライツを認めるということも書かれていましたが、これは嫌がる人は確実にいるでしょう。ネーミングライツを入れることで巨額のスポンサー料が入る代わりに、特定の企業が大看板になっているクラブに他のスポンサーが付かなくなる可能性もあります。チーム名の伝統と連続性が断たれることにファン・サポーターからの反対が起きることも容易に想定できます。
破綻したヴィッセル神戸の経営を楽天の三木谷社長が個人資産を出して救済し、その恩人がチームカラーとエンブレムを変えたいと言ったときに神戸サポの反応は賛否両論でしたし。
チーム名のルールは今のままで個人的には良いと思うのですけどね。オーストリアのレッドブル・ザルツブルクはガンバから宮本恒靖が移籍したクラブですが、その名の通りレッドブル社が買収してチーム名を変えました。その一方で、大量の資金が投下されているイングランドのプレミアリーグでは、チェルシーもマンチェスター・シティもチーム名は変わっていません。
Jリーグが一番大切なのは何か、ということになってくるのだと思います。とにかくクラブを継続させる、大きくさせるためには巨額のスポンサー料が必要で、それを最重要視するのであれば、ネーミングライツも当然あり得るでしょう。
しかし、今のFCバルセロナを見て明らかなように、巨額の資金・売上があっても、それ以上に使い過ぎたら破綻します。子どもでも分かる話のはずなのですが、出来ない組織は世界中にたくさん存在します。
ただ、サッカークラブ経営はより良い成績と悪くない経営の両立が必要であり、非常に難しいものです。かつて、溝畑社長時代の大分トリニータは売上の前倒しなど無理に無理を重ねて強化を続けて、2008年にはJ1で4位、そして九州のJリーグクラブとしては今に至っても唯一のタイトルであるナビスコカップ優勝という成果を出しました。その翌年には無理がたたって破綻して、Jリーグから安定化基金を受け入れる始末でしたが、「優勝」「残留」「昇格」といったはっきりした成果のために無理な経営をしてしまう、というのは、どのクラブの経営陣にとっても抗いがたい魅力なのかも知れません。
ともかく、まだJリーグ側が正式に発表していないのだから、サポーターとしては静観するしかないですね。公式発表を待たずにTwitterで反応して炎上している選手もいるようですけれど。