議院内閣制における自民党総裁選党員投票というバグ

自民党総裁選のニュースが華やかというか鬱陶しいくらいですが、公職選挙法の対象外なので、報道やSNSにおいて、特定の候補者に対する擁護も批判もやりたい放題ですね。この点は問題だと思うのですが、報道する人も問題とは思っていないのでしょう。

その自民党総裁選における党員投票も当然ながら公職選挙法に基づかないので、住民票や戸籍とは関係なく、通常の選挙のような、一応はちゃんとした本人確認のルールもありません。法律に基づく選挙ですら、しばしば本人確認ミスのニュースが出るくらいですが、あれはミスの方が少ないからニュースになるのであって、本人確認がまともに行われない「選挙っぽいもの」はミスも存在しません。

若き日の竹下登を中心として導入された自民党党員投票は、死んだ人間や飼い猫まで投票したという逸話もあるくらいなのです。それくらい「いい加減」な党員投票なのですが、なぜか一部のニュースや識者は民意の反映として扱っています。議院内閣制なのですから、所属議員による投票だけでも民意(というか党員の意見)が反映されているはずです。死者や飼い猫まで投票しかねない党員投票よりも、議員投票の方がずっと厳格です。

この辺は議院内閣制のバグですよね。議院内閣制により、総選挙で勝った党が総理大臣のイスをゲット出来て、その党の総裁のイスを巡る選挙はルールが法律に基づかないというのは、民主主義の根幹に関わる問題だと思うのですが、議員投票のみよりも、党員投票があった方が良いと考える人が多数なんですよね。

ちなみに、現行の自民党総裁選のルールはこうなっているそうです。

一応、1年以上前から自民党員じゃないと党員投票には参加出来ないそうですが、党員になるにはこういった資格が必要です。

https://www.jimin.jp/involved/joining/

資格と言ってもぶっちゃけ、調べようがないですよね。年齢は偽らないとしても、自民党の綱領思想に賛同するかしないかとか、他党の党籍を持たないとかは自己申告ならいくらでもやりようがあります。

そんな党員による投票が、総裁選において結構な意味を持つのであれば、いっそのこと他党のシンパが自民党員として大量に潜入して、自党にとって有利な、つまり自民党にとっては一番ヤバい人間に投票して、ヤバい総裁を生み出すことも理論上は可能です。

ちなみにJリーグでは、アウェイ戦のチケットを確実に手に入れるためにアウェイ戦の相手チームのファンクラブに加入する人もいるらしいですが、それと似ている戦法ですね。

まあ、そこまでやって自民党の総裁選をコントロールするにしても、あまりにコストが掛かります。党費が年額4,000円ですので、総裁選に影響するくらいの人数となると、現状の人数(105万人)と同数くらいを用意するなら毎年40億円を自民党に納めることになるので、それはそれで結局自民党の懐を温かくすることになってしまいます。

こんな費用が掛かるなら、こんなアホらしい陰謀なんて誰も真面目に考えないでしょう。しかし、年間40億円準備したら日本の首相になる人間をある程度コントロール出来るというのは、GDP世界3位の国家の首相ということを考えると、意外と安いのではないでしょうか?

自民党総裁選を半分ハッキングするような、党員投票乗っ取りが出来るのは、議院内閣制のバグというか、仕様漏れと言った方が良いかもしれません。金額的にやる人はいないだろう、というだけのことで、実際に出来ないわけでは無いのですから。

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