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汚職の値段

汚職は世につれ、世は汚職につれ。権力は隙あらば汚職をします。隙が無くても汚職をします。

古今東西どんな権力でも汚職とは無縁ではありませんでした。だからといって汚職を当然のものとするととんでもないことになってしまいますので、歯止めも糾弾も必要です。

とは言っても、例えば100億円の予算を扱うような部署で100円の汚職も見逃されないようなシステムを作り上げてしまうのも、効率性からはかけ離れてしまいます。

もはや世界中のインフラになりつつあるインターネットの可用性とか、あるいはAmazonのAWSみたいなクラウドコンピューティングなどのシステム可用性だって、重大極まりないものであってもパーセンテージでは100%では決してありません。保証されているのは99.9999%とかですが、これだってそれを超えた不具合が出たら返金するだけの話です。

可用性100%のシステムが存在しないように、1円たりとも汚職できない汚職防止性100%の行政組織などは出来ないでしょう。

汚職を完璧に防ぐために非効率な運営をするということは、経費が余計にかかって結局税金に跳ね返ってきます。また、汚職に対して完全に防ぐシステムによって、面倒が多くなり痛くもない腹を探られることを人々が嫌がれば、政治家・官僚のなり手が無くなります。なり手を集めるために高い報酬をトレードオフにすると、結局税金から賄われることになります。

もちろん、だからと言って逆に汚職に対してルーズすぎれば、本来適切に配分される税金が悪人の懐に入り、最終的には税収不足となり、高率の税金が個人や法人に課されることになってしまい、これもコストが余分にかかります。

汚職にしろ癒着にしろ、収賄にしろ横領にしろ、厳しく取り締まるのであればお金の使い方のところで厳しくチェックするしかありません。入札や競争を経ての契約ではなく、随意契約でちゃちゃっとまとめてすぐにお金を払ってしまうのは、金額によってはいくらでも不正のやり放題になります。

決裁に手間暇がかかるのを嫌ってショートカットしてしまうという理屈は、そもそも公的機関が税金で運営されている時点で屁理屈でしかありません。

本来は決裁はお金を出す人が下します。しかし税金を支払う国民・市民・法人などがいちいち一つ一つの決裁を検討する余裕などありません。だから代理で決定権者が決裁しているだけなので、決定権者が決裁を下すに至った証拠を残さないといけない以上、公的機関のお金の使い方が面倒になるのは当たり前です。

それを無視して随意契約でなんでもかんでも出来るようにしてしまったら、やっていることは独裁政治と変わりません。随意契約の方が上手くいくという論理は、みんなの雑多な意見をいちいち聞かずに、有能な独裁者が素早く決断する独裁政治の方が上手くいくというのと同じ理屈です。

急を要するためであれば随意契約も認めざるを得ませんが、後で検証されるのも当然です。その検証を嫌って、契約するカウンターパートの企業が値段をつり上げたり、あるいは入札でかかる経費や時間が必要になるのもしようがありません。それは民主主義国家を適切に運営のための必要なコストです。

企業側だって政府や自治体と取引をするメリットとデメリットがあります。

メリットは概ね高い値段で確実な支払いをしてくれることですが、一方のデメリットは、契約のために政治家・役人と硬軟織り交ぜた、合法違法も取り混ぜた関係性を築くことが必要だったり、契約履行そのものが面倒なことでしょうか。それらが嫌なら民間同士でさっさと商売すれば良いだけの話なんですが。

ここまで官庁や税金としての話をしてきましたが、株式公開している上場企業でも理屈は似ています。会社内で従業員でも役員でも、会社としての経費を好き勝手に使えるわけではありません。株式公開して投資家から得たお金を適切に使っているかどうかのチェックのため、何かを買う場合でも相見積もりを取ったり、コンペで選んだりすることだってあります。

政府だろうが大企業だろうが、動かしているお金の所有者は決定権者ではないのですが、動かしている人自身は自分の物と思ってしまうのでしょうね。それもまた権力の怖さです。

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