国旗問題のフランス大統領選挙への影響
この大晦日と元日だけ、パリの凱旋門に掲げられているフランス国旗をEU旗に代えて掲揚していたそうです。
当然ながら右派の政治家からはフランスそのものへの侮辱だと非難の大合唱となりました。無断でやったらそらアカンだろうとは思いますが、事前に言ったら言ったでどうせ反対されるから黙ってやったのでしょう。
しかし、本来大事にされているはずのフランス国旗自体も、実は右派を含めて誰もそんなによく見ていないのかも知れません。
こんなことがありましたし。これだってなんで変更する前に言わへんねん、というような話ですが、一流のフレンチジョークなのでしょうか。間違い探しとしたら超難度ですし、むしろ答えを教えたら分かるかと言って怒られるレベルでしょう。
ちなみに日本の国旗である日の丸の赤色は実は紅色だそうで、いわゆる真っ赤な赤色よりはすこし暗くなっています。とはいえ、白地に赤丸のデザインを見れば日本人なら国旗の日の丸を連想します。
白米を敷き詰めた中に梅干しがあれば日の丸弁当と言うのですから、とりあえず白い中に赤丸があれば日の丸です。細かいカラーコードなど、日常的には誰も気にしません。もちろん、国旗として制作される本物の旗ならちゃんとカラーコードは決まっているのでしょうけれど。
フランスのトリコロールだって、青白赤に並んであればフランス国旗なのでしょう。フランス人がどう考えているかは知りませんが、青色が微妙に変化していても青白赤ならフランス国旗です。どの辺まで色を微妙に変えていけば気が付くか、水曜日のダウンタウンみたいなチャレンジをマクロン大統領にはやってほしかった。
ともかく、「旗印」という言葉が戦場での目印という元々の意味に加えて、集団の目標として掲げる主張の意味を持つように、「国旗」には国家の目印たる役割よりも国民を統合する役割があります。だからこそ、国旗を侮辱することは国民を侮辱することに直結するので、冒頭の記事にあるようにフランス国旗がEU旗に代えた人は、フランス国家への忠誠よりもEUへの貢献の方が重要だと思っている、と非難されても宜なるかなと思います。
フランスでは、今年の4月に大統領選挙を控えています。マクロン大統領が当選した時ですら、極右のマリーヌ・ルペンを勝たせないために中道右派から左派までが協力して決選投票での勝利でした。その後、黄色いベスト運動や、イギリスのEU離脱、新型コロナの感染蔓延など、不安定な5年間を過ごしたマクロン政権が再選出来るか微妙な情勢です。政治情勢を考えると、凱旋門国旗問題では極右につけ込む隙を与えてしまったと言わざるを得ません。
その極右がルペンの他にもゼムールという有力候補が出てきたために分裂しそうなのは、中道・左派陣営にとってはありがたい状況です。ルペン、ゼムールの両者とも決選投票に進めない可能性があります。逆に、どちらかが降りて協力し合えば、極右の大統領の誕生の可能性が高くなります。
イギリスは歴史的にヨーロッパとの統合・依存は少な目でしたが、フランスはヨーロッパそのものです。もしフランスが極右の大統領の下にEU離脱を言い始めたら、EUはドイツとその他の一部の国々、程度の連合体に成り下がります。喜ぶのはプーチンだけでしょう。
フランスの左派やエリゼ宮関係者はもうちょっと国旗を元にしたフランス国家を大事にした方が良かったんじゃないでしょうかね。