エキセントリックなCEOが引っ張る赤字ベンチャー企業をどう扱うか
アメリカを始めとして世界中で賃貸契約に革新的なサービスをもたらしているという触れ込みで巨大化しているウィーワークのCEOが色々なところから圧力をかけられて辞任ということになったようです。
ウィーワークCEO辞任、IPO控え収益性や企業統治に疑念
https://jp.reuters.com/article/wework-neumann-idJPKBN1W92LX
日本のメディアではあまり取り上げられていないようですが、ウォールストリートジャーナルなんかではここ最近は毎日のように何らかの記事が上がっていました。どうやら巨額の出資者であるソフトバンクグループの辞任要求があったみたいです。
辞任したニューマンがこれまでやってきた奇矯な行動からすればしょうがないのかなとも思いますが、彼を失ったウィーワークが果たして成長し続けられるのか。
問題は確かにありましたが。そういうエキセントリックなところがある人間だからこそ、既存ビジネスの隙間や矛盾を突いたベンチャー企業を立ち上げて大きくすることが出来たはずです。普通の人は「そんなビジネス無理だろ」「儲からないだろう」「失敗したらどうするんだ」と思ってチャレンジしないビジネスに、エキセントリックな人だからこそ果敢に挑戦することが出来るはずです。言い方を変えると、無難な行動しかしない人は無難なビジネスしか出来ません。
もちろん例外はあるでしょうし、エキセントリックな行動をする上にビジネスの才能も無い人間の方が圧倒的に多いのでしょうけれど、百に一つ、万に一つの少ない可能性を実現させることが出来るのは、無難なCEOではないと思います。
IT企業にはなかなかすごい個性を持った創業者がたくさんいます。かつてのビル・ゲイツや、Oracleのラリー・エリソン、Facebookのマーク・ザッカーバーグ、Googleのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、テスラのイーロン・マスクなど、口を開く度にニュースになるような人間だらけです。もちろん、ごく普通の常識を持った経営者もたくさんいるのでしょうけれど、とてつもない成功を収める人はとてつもない個性を持っているといってもそれほど的外れではないでしょう。
今後のウィーワークが果たして成功できるのか。赤字の削減とIPOの成功、それまでの手持ち資金の確保といった難題が続きますが、ソフトバンクはどこまで付き合えるでしょうか。
さて、その一方で、巨額の赤字がありながらも株式を上場できる仕組み自体にも疑問を覚えます。今回のウィーワークのCEO辞任は、このままではIPOできず出資の回収が出来ないという判断をしたから、ソフトバンクがかなりの圧力をかけたのだと思いますが、そもそも赤字を垂れ流し続けながら巨大化する企業が株式公開していいものなのでしょうか。
もちろん、経営や投資やビジネスとかの分野においてとてつもなく頭の良いお偉いさん方が決めていることですから、赤字が続いていても上場できる仕組みそのものには良いところもあるのでしょうけれど、株式会社はその経営を継続することが必要条件という大前提があるはずです。お金は企業にとっては血液のようなものです。血液を大量に流し続けている人間が「いや、私は健康ですよ」と言っても誰も信用しないでしょう。ちょっとした不注意などで怪我をして血が出た、というレベルならともかく、ずっと血が出続けていたら周りにいる人間は誰もが「病院に行け」と言うでしょう。
そんな企業が上場するのもどうかと思いますが、その企業の株式を買う人がいるからこそ作られた仕組みであるとも言えるかも知れません。今、赤字なのは急速にビジネスを大きくしてシェアを確保して競合を排除し、それによって将来の巨額の利益を得るためなのだ、という理屈があまりにも横行してしまっている気がします。物事は予定通りにはいきません。今の赤字が未来の黒字を保証するわけではありません。将来大成功するかどうかは誰にも分かりません。巨額の資本を持つベンチャーキャピタルであれば、複数のベンチャー企業に分散投資できるでしょうし、IPO時やその直前ではなくもっと早い段階での出資が出来るので利益も大きくなりますが、一般の個人投資家では公開後にしか買えませんので利益の幅は小さくなります。
株式投資はギャンブルではない、とはよく言われますが、赤字企業のIPOやその直後に購入するのは限りなくギャンブルに近いのではないでしょうか。