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楽天のエコシステムに組み込まれる携帯電話というライフライン

先日、楽天モバイルにMNPしましたが、楽天という会社は手広く事業を行っています。

楽天のどこかのページの末尾には、「楽天グループサービス」として数十個のサービス名がリンクとして列挙されています。

大元は楽天市場ですが、ショッピング関係はサービス名が違えど本質としては同じとみてもいいでしょう。自社経営かそうではないかの違いはありますが、楽天市場、楽天ブックスやトラベル、チケットなどは似たようなモノです。

よく比較されるAmazonはオンライン書店としてスタートして、扱う物品の種類を増やしつつ、サーバを拡大してクラウドサーバ、クラウドコンピューティングを世界に広げました。リアルとクラウド、またBtoCとBtoBの両方で大きな利益を上げています。

Amazonに比べると楽天グループは買収に次ぐ買収で広げていったこともあり、事業が整理されていないようにも見えます。それぞれのサービスごとの利益率(あるいは赤字の割合)としてはどうなんでしょうね。

売上収益に占める各セグメントの比率(2019年度第4四半期)
https://corp.rakuten.co.jp/investors/financial/segment.html

大まかな分け方を見れば、
インターネットサービス・・・57.8%
フィンテックセグメント・・・33.1%
モバイルセグメント・・・9.1%
だそうです。

モバイルセグメントはこれから大きくなっていくのでしょう。Amazonとの大きな違いは、銀行・証券などの金融部門を持っていること、そして通信事業に乗り出したことです。逆にAmazonにあって楽天に無いのは、自社端末が電子書籍のKoboだけということですかね。Amazonはスマホでは失敗しましたがKindleに加えてタブレット、TV接続端末、スマートスピーカーでは結構な市場シェアを持っています。どれも赤字覚悟で安く販売しているからでもありますが、Amazon内のエコシステムに対する消費者の信頼(あるいは依存)を勝ち得ているから利用されるとも言えます。

楽天は端末を固定して利用してもらうのではなく、他社の端末で楽天のサービスを使ってもらうという仕組みになっているようです。それもコンテンツ消費というよりはもっと生活に密着したレベルでの消費者との関わり方を深めています。

銀行、証券、電子マネーは象徴的です。それに携帯電話事業が加わりました。いわば消費者のライフラインを楽天エコシステムに組み込み始めた格好です。これを取れれば企業としての巨大化、安定化は間違いないでしょう。逆に企業向けのクラウドサーバなんかには手を出さないんですかね。まあ今さら、AWS・GCP・Azureなどに一から立ち向かうのも大変でしょう。

そうは言っても携帯電話事業だって、docomo・au・SoftBankに立ち向かうのも大変です。

SoftBankは国内ではボーダフォン、イーモバイル、ウィルコムを買収して一気にビッグプレイヤーになりましたし、アメリカでもスプリント・Tモバイルを買収しました。楽天はMVNOから始めてMNOになったので経緯がかなり異なります。SoftBankが乗り出した頃にはMVNOが一般的ではなかったこともあるでしょうけれど、一からアンテナを立てていく費用や時間を考えると無理してでもボーダフォンを買った方が勝算があると判断したのでしょう。そしてそれは正しかったわけですが、では逆に楽天が一から始める決断をしたのはなぜか?

既に楽天モバイルにはMVNOで200万人のユーザーがいるのと、auのローミングが使えるのでアンテナ数が最初は少なくても、赤字に耐えうる状況ならいつかは黒字に転換できるとの目算を立てたのでしょうし、その一つの方策がネットワーク機器のクラウド化だそうです。

楽天モバイルネットワーク、世界初のエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワークにおいて実証実験に成功
https://corp.rakuten.co.jp/news/press/2019/0212_06.html

素人には何を言っているのか分からないレベルの話ですが、ネットワークを構築する上で必要な機器の汎用化とクラウド化によって、コストダウンと共にシステム構築を素早く出来るのだろうなということはなんとなく分かりました。

いわば今だからこそ出来る技術で、これもSoftBankが十数年前にボーダフォンを買収したときには出来なかった話でしょう。

この楽天モバイルの採用した技術が果たして信頼できるのかどうかが利用者にとっては問題で、既に何度かトラブルは起きていますが、他のキャリアも時々障害が起きるのですから、どっちの方がマシか、値段とリスクの兼ね合いをコストパフォーマンスとして判断して、ダメなら既存キャリア、構わないなら楽天を選んでも良いでしょうね。

ちなみにこのクラウド化技術についてはこちらの記事が個人的には分かりやすかったです。

楽天が導入する携帯電話のクラウドネットワークは世界でどう評価されている?
https://dime.jp/genre/701963/

石野氏:ドコモの(社長の)吉澤さんの言い方だと「やろうと思ってもすでに(専用機器が)置いてあるしな」という感じ。そこを一気に仮想化するメリットは現段階でないと。

そうですよね。既存キャリアはあえてクラウド化する必要が無いんですよね。専用機器が既にあるのだから。逆に言うと、一から立ち上げる楽天モバイルだからこそ採用できたモノでもあったのでしょう。専用機器は年々劣化していって交換が必要でしょうけれど、汎用サーバを用いていれば交換費用も安く済みますし、何せチップやストレージなどは毎年性能アップとコストダウンがされていきますから、ネットワークの維持費用も年々安くなっていくはずです。その辺の皮算用もあるんでしょうね。

ただ、それが上手く行ったとしても、最終的には日本全国に自社アンテナを立てないと黒字になるわけないですから、そこが一番重要かつ大変です。

ちなみに、楽天モバイルで使用出来るRakuten Linkというアプリがあります。これを使えば通話やSMSが無料になるということになっていますが、無線LANさえつながっていれば携帯回線がつながっていなくても通話できるそうです。そうなると、携帯用のアンテナが少なくても利用にはさして不都合がないと踏んでいるのでしょうかね。フリーのWi-Fiがもっと普及しないとダメでしょうけれど。

どちらにせよ、イーモバイル以来の新規参入キャリアとして、楽天モバイルは成功してほしいです。失敗したら失敗したでSoftBankが買収しそうな気もしますが。

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