YouTuberに憧れたって良いじゃない?
子どもがなりたい職業ランキングにYouTuberが入って来たことで、いろいろ批判したり呆れたりする人がいますが、子どもの夢なんて本来そんなものでしょう。
楽しそう、楽できそう、稼げそう、好きなことでお金をもらえる、といったことで憧れるのは当たり前です。
なりたい職業でよく出てくるような、プロスポーツ選手とか芸能人とかだって、子どもからしたら似たようなモノでしょう。
YouTuberも当然ながら成功できません。というかほぼ全ての人間は稼げません。毎日のように動画を撮影して、編集して、タグやらキャプションやら頭をひねり、そもそもどんな動画にするか企画を考えるのにも大変で、そこまで苦労して動画を公開しても大して再生されず、チャンネル登録者数も増えない中、既に有名な芸能人が参入してきたらさっさと莫大な登録者数と再生回数をかっさらっていくという、えげつない社会の縮図が存在します。
そういう現実を子どもに突きつけて諦めさせるというのもどうだかとは思います。理想と現実に大きな差があるのはどんな職業でも同じです。
プロ野球選手になりたいと思う子どもに、小学生の時からエースで四番でキャプテンという才能を持っている選手が、さらに人一倍努力し続けて中学・高校・大学・社会人で活躍した上でプロ入り出来ても、大半の選手は一軍に出ることなく二十代の内に第二の人生を歩むことになるのだ、と言い放つ大人とか嫌でしょう。
職業に就くことがそれほど難関では無かったとしても、例えばお花屋さんになれたとしても、朝早くから花卉市場のセリで良い花を仕入れても、売れ残ったら容赦なく廃棄物として捨てざるを得ないということを、お花屋さんになりたいと思っている子どもに言わないでしょう。
今、YouTuberに憧れていたとしてもそのうちまた気持ちは変わるでしょうし、そもそもYouTuberが憧れの仕事になっている時代だってこの数年だけのことかも知れません。とりあえず放っておけばいいと思うんですが。
もちろん、YouTuberになる!と言ってYouTubeばかり見て他に何もしなかったら問題ですし心配にもなりますが、それならそれでYouTuberになればいい、と言えば良いんじゃないですかね。動画撮って公開すればそれであなたもYouTuber!なんですし。
野球中継を見るだけで野球選手にはなれないように、YouTubeを見るだけではYouTuberにはなれません。プロ野球選手にはだいたい18歳〜40歳くらいまでしか出来ませんが、YouTuberは10歳でも80歳でもなれます。参入障壁が限りなく低い職業です。
やって見ないと分からないことをやる前に教えても不信と不満しか沸いてこないでしょう。
G・K・チェスタトンの「知りすぎた男」という小説の中で、こんな一節がありました。
「若者を動揺させて、腐りきった理想の轍から逸らせることには、一つ、じつに厭な責任がある」
「何なんだね?」
「そんなことをすると、若者は同じ力を使って、もっとずっと悪い方向へ行きがちなんだ」
これは小さな子どもに関する発言ではありませんが、多分、大人が思っているほど子ども・若者は放っておいても悪い方向には行かないですし、大人が正しい筋道を用意して枠にはめようとすると上手く行かないものなのでしょうね。