見出し画像

パソコンと自動車の現地生産現地販売

アメリカ車が日本で売れない理由は日本市場に合わせた自動車を作らないからだと思っていますが、これはパソコンでも以前はある程度通用した話でした。

日本市場ではバンドルソフトが多く、特にマイクロソフトオフィスがプリインストールされていることが非常に大きな購買理由となっていました。そのため、パソコンの日本市場ではNEC、富士通、東芝などが大きなシェアを持っていて、日本にルーツがあるThinkPad(IBM)も人気がありましたが、今ではそれらの大手国内PCメーカーが軒並み苦しんでいる状態です。

その一方で、DELLやhpのような受注してから生産(とはいっても組み立てるだけですが)するタイプのメーカーがシェアを伸ばし続け、ついに四半期での数字ながらも、日本国内トップシェアをhpが奪いました。

国内PCメーカーが史上初の首位陥落の衝撃! Intel製CPU供給問題が業界勢力図を変えた
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/gyokai/1187862.html
日本のPC市場で、歴史的な出来事が起こった。
 それは、日本のPC市場が誕生して以来、NECや富士通といった、日本に本社を置く国内PCメーカーが守り続けてきたトップシェアの座を、初めて、海外PCメーカーが奪取したからだ。
 と言っても、年間を通じての数字ではない。最新四半期となる2019年1月~3月(2019年第1四半期)の数値だ。しかし、四半期と言えども、外資系PCメーカーが首位となるのは初めてとなる。しかも、この四半期は、日本の企業や官公庁の決算が集中する時期であり、年間最大の商戦期。むしろ、日本のPCメーカーが優位性を発揮する時期でもある。ここで、首位の座を、日本のPCメーカーを退け、外資系PCメーカーが奪取したことは大きな意味を持つ。

詳細はリンク先の記事をお読みいただければと思いますが、日本hpは国内生産もしていますので、純粋に海外からの輸入製品がトップシェアになったというわけではありません。しかし、日本の国内PCメーカーの凋落と、国内市場における消費者の厳しい選別が当たり前のものになったと思われます。

すなわち、国内メーカーの提供する製品とそのコンセプトが消費者のニーズと合致しなくなっているということになります。

バンドルソフトの豊富さはある程度パソコンに詳しい人にとっては煩わしいだけのものになります。使わないソフトがストレージの空き容量を圧迫しているのは不便なだけですので、購入直後のPCからソフトを削除する手間が必要となります。また、国内メーカーは季節毎に新製品を投入していますが大半は前期モデルのマイナーチェンジばかりであり、ラインナップが多くなりすぎると消費者にとってはかえって選びづらくなります。

選択のパラドックス 選択肢が増えることは良いことか?
https://www.asahi.com/articles/SDI201801151206.html

ラインナップが多いのはDELLやhpも同じですが、受注生産メインであれば在庫を減らせますから国内PCメーカーに比べると利益率は高くなり、その分売値を安く出来るはずです。

また、スマートフォン・タブレットの普及により、パソコンを使わないようになりつつあります。パソコンでないと出来ないことというのがかなり少なくなりました。年賀状印刷でさえスマホから可能ですし、そもそも年賀状自体が大きく数を減らしています。

少し前では平日の東海道新幹線の朝晩、パソコンを使っているサラリーマンの大半はパナソニックのLet's noteを使っていましたが、今ではマイクロソフトのSurfaceがかなり増えました。頑丈さ・国産であることよりも薄さ・スタイリッシュさが選ばれている理由かも知れません。

そういう時代の流れもあり、国内PCメーカーのシェアが減っているわけですが、日本のPCメーカーを嘆く声もあるでしょうし、海外メーカーを否定的に見る人も出てくるでしょうけれど、hpやDELLを日本人が購入するのは、アメリカでトヨタ車をアメリカ人が購入するのと同じことのはずです。特に日本HPに関しては東京生産モデルもありますので、トヨタが現地生産した車を現地販売している構図と全く同じになります。

消費者のニーズを理解している製品を選択することと、国産品を国産品であるという理由で選択することのどちらの方が資本主義にもとづく自然な行動かは言うまでもありません。

パソコンのようにコモディティ化してしまった商品は、人件費が高く輸入部品に頼るところが多い日本メーカーには不利です。先に挙げたパナソニックのLet's noteなんかは頑丈さと軽さに特化して一定のファンをつかんでいます。ただ、その性質上、トップシェアにはなり得ません。パナソニックもそれは分かっていて、ニッチなノートパソコンを提供しています。他のメーカーもそう割り切る時代が来ているのかも知れませんが、あまりその兆しは見えないですね。NECや富士通はLenovoにパソコン部門で提携していますが、LenovoがHUAWEIのような制裁を食らうと大変なことになるんじゃないでしょうか。シェア拡大路線ではなく、ニッチ路線に行った方が良いと思いますが、大企業としては難しいんでしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?