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「貧富の格差」よりも「知識・教育の格差」の是正を

格差社会到来とか格差拡大による問題などが言われていますが、その「格差」というのは一般的には「貧富の格差」のことです。
その「貧富の格差」の定義自体は、世帯収入や個人収入、あるいは資産の多寡が目安になっていますが、あくまで計量可能な金銭面の話です。

しかし、社会に存在する格差としては「貧富の格差」よりも、「知識の格差」の方が大きいかも知れません。

知識と言っても単純な記憶の問題ではなく、知識を得ることや進学することの重要性について知っているかどうか、の格差のことです。「教育格差」とも言っていいでしょうけれど、そう書くと教育制度の問題として捉えられがちですので、あえて「知識の格差」と呼ぶことにします。

もはや常識になりつつあるかも知れませんが、親世代が高学歴の場合、その子どもも高学歴な確率が高いと言われています。都会と地方での格差もありますが、当然ながら同じ地域に住んでいても格差があります。
そして残酷なことに、学歴の格差がそのまま貧富の格差にもデータ的にはほぼ反映されています。

極端なことを言えば、貧富の格差に関しては政府が富の再分配によってある程度の是正は可能です。累進課税自体がそういうものですし、それによって得られた税収が生活保護や各種手当などに回されればさらに富の再分配が行われることになります。

しかし、知識の格差に関しては再分配が難しいです。なぜなら、富の再分配と知識の再分配では当然ながら全く異なるからです。具体的にいうと、富の再分配を受けることを拒む人はまずいません。定められた金額以上の税金を払う低額所得者なんているわけありません。また、生活保護や手当など、申請すれば貰えるお金ですから申請を知らない人はいても申請してもらわないという選択肢はあり得ません。

一方で、知識の再分配のために教育への重点的な予算配分、例えば学費無料などの施策を打ち出しても、進学より就職を選ぶ(正確には子どもに就職を強要または誘導する)選択をする人が出てきます。

大阪市では塾代助成事業と銘打って、大阪市内の塾に通う費用に関しても、収入などの制限がありながらも助成しています。

大阪市塾代助成事業
https://www.juku-osaka.com

これにしたって、塾の重要性を認識していない親御さんにしてみたら子どもを塾に通わせるのも面倒だと思って利用されないでしょう。進学させないから塾に行かせなくていい、と考えている親に育てられる子どもが、勉強して進学したいと思ってもなかなか親の言うことを否定して自己主張するのはまだまだ日本では難しい家庭環境だと思います。

ちなみに東京にも似たような制度があります。

受験生チャレンジ支援貸付事業
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/seikatsu/teisyotokusyataisaku/jukenseichallenge.html

知識あるいは教育が重要だと考える人に囲まれて育つのと、重要だと考えない人に囲まれて育つのとではおそらく、その子の将来を大きく左右するでしょうし、そして多くの場合、収入に直結してさらに貧富の格差が増大していくことになります。

日本国内で言えば都会と地方の間の問題でもありますし、同じ都会(地方)の中でも大きな差があるはずです。多分これは日本だけの問題でもなくて、先進国と発展途上国の間でも、そして先進国間・発展途上国間でも似たような問題はあるのだと思います。

この知識・教育の格差の是正はなかなか難しく時間のかかることだと思います。日本でいうと、明治維新後に教育によって富国強兵を実現するという期待があったにせよ、その前から町人レベルでは寺子屋に通わせることが行われていました。今の日本国憲法には国民の義務として子どもに教育を受けさせないといけません。15歳までの義務教育の実施は間違いなく教育格差の縮小(少なくとも拡大防止)には役立っていました。しかし、大学進学率が年々高まっていく中で、義務教育が15歳までであることが知識・教育格差の拡大防止に役立たなくなりつつあります。

高校無償化や大学無償化などはそうした文脈で捉えるとそれほどおかしな政策ではないと判断できます。事実上、高校や大学が半分義務のようになっていて就職するために大学に進学するという社会状況なのですから、学費が抑えられてないとおかしいという解釈もできるのではないでしょうか。

もちろん、大学の名に値しない大学をゾンビのように延命させる措置になりかねないという懸念は真っ当なものです。それを防ぐために文科省が大学あるいは高校への関与を強めれば、なおさら反発も大きいでしょう。無条件・無制限の無償化ではなく何らかの上限や制限をつけた方がいいのかもしれません。

しかし、大学に進んだ親世代が増えれば、その子どもに対して知識・教育の重要性を教えてくれ、そうなれば知識の格差の是正になっていくはずです。長期的に見れば教育の無償化は将来に役立つはずです。


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