降格を賭けてまで攻撃的なサッカーを最優先にするべき?
今シーズンが始まる前、こんなnoteを書きました。
この時には、現状がこうなるとは全く思ってもいませんでした。
これからの今シーズンがどうなるかは新監督次第ではありますが、そもそも昨シーズン2位だったチームがここまで苦しむ直接的な要因は、攻撃的なサッカーへの転換にあります。
あくまで報道の限り、という情報になりますが、昨シーズンまでのある程度守りを固めて攻撃には常態的に多くのリソースを割かない仕組みのサッカーから、攻撃面を重視したサッカーへの変更に失敗した感があります。
昨年までのサッカーでは川崎フロンターレに勝てない、リーグ優勝できない、という判断はおそらく正しいでしょう。さらに守備を固くすることを極めたとしても、攻撃力をアップしなければ勝ち点でも直接対決でも川崎を上回れない、というのは素人目にも分かります。
ただ、昨シーズンまでの2年半の宮本体制で蓄積した内容を放り投げてまで取り組むべきことだったのかというと、結果論になってしまいますが疑問もあります。
特に今年は20チーム中4チームが降格する過酷なシーズンです。割り切って今年は守備重視のサッカーをベースに、個の力での得点を増やすということであれば残留争いはせずに乗り切れたでしょう。タイトルを取れるかどうかは分かりませんが、ここまでの惨状にはならなかったはずです。
そもそも、ガンバ大阪は攻撃的なサッカーをしなければならない、というお題目が苦しみの元でもあります。
もちろん、今のガンバ大阪の栄光は西野監督時代に始まりました。2002年からの10年間で、J1リーグ、ナビスコカップ、ACL、そして2度の天皇杯優勝を成し遂げ、ガンバ大阪がJリーグの強豪クラブと見なされるようになったのは、その時です。
そしてその10年間を通じて、守備よりも攻撃、失点覚悟での得点狙いという攻撃的なサッカーが結果と内容を伴ったことで、多くのファン・サポーターの獲得につながりました。
この過去は忘れられませんし、輝かしいものでありました。
ただ、西野監督退任直後の2012年には守備が完全に崩壊して、得失点差プラス、リーグ最多得点で降格するという、嬉しくもない偉業を達成しました。
これに懲りて守備を整えられる長谷川監督の招聘となり、2013年J2優勝、2014年昇格即3冠、2015年ACLベスト4・J1準優勝・天皇杯優勝という結果がもたらされました。
ただ、この2014年・15年の成果は攻撃・守備のどちらかというと、守備の内容の良さで獲得した栄光です。そしてそれをもたらした長谷川体制は、その2年をピークにサッカーの内容がずっと右肩下がりとなって、最終的には2017年の終盤は一試合も勝てずに終了しました。
そこでまた、攻撃的なサッカーをお題目に掲げてクルピ監督を連れてきたわけですが、残留争いに加わった結果、監督解任・宮本U23監督の内部昇格という手段をクラブは取る羽目になりました。
状況が状況ですので結局は守備を重視するサッカーに戻り、終盤の9連勝もあって順位も9位まで上がってシーズンを終え、翌年も夏場の戦力大量放出に見舞われながらも7位になりました。
そして2020年はコロナ禍で大変な中、ギリギリの試合で勝ち点を積み重ねて2位で終え、天皇杯も変則的なレギュレーションでしたが準優勝となりました。
長谷川監督の5年、そしてクルピ監督を挟んで宮本監督の3年を通じて、守備ベースのサッカーがガンバ大阪の土台となってきたのです。これを急に入れ替えるとろくなことにはならない、というのが現状なのでしょう。
そして8年という時間は長いです。ガンバにおいて西野監督の下での試合経験があるのは今のガンバでは宇佐美・倉田・藤春の3名だけです(菅沼は若い頃はガンバでの出場経験は無かったはずです)。
攻撃サッカーの夢よもう一度、と願うのは無理もありませんが、無理をすれば道理が引っ込みます。
守備的なサッカーで残留するくらいなら攻撃的なサッカーで降格した方が良い、とまで割り切って応援できるファンはごくわずかでしょう。何より降格してしまえばスポンサーが黙っていませんし、選手も有望な人から離れかねません。
降格を盾にして守備的なサッカーを受け入れろ、と脅すつもりはありませんが、降格を賭けてまで攻撃的なサッカーを最優先にするべきなのでしょうか?