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先ずIT人材の人件費より始めよ

デジタル庁の発足に伴い、有識者と言われるお偉いさん方が集まって行われるデジタル庁社会構想会議の第1回が先月実施されました。

驚いたのですが、楽天の三木谷氏が日本のデジタル化、IT活用が遅れている状況への対策として、IT人材不足解消のために移民を導入すべきと言っていることです。

アメリカ合衆国では移民やその子孫によって世界に冠たる巨大IT企業が作られた、あるいはCEOをやっているという説明をしていますが、そもそもアメリカはIT以前に建国からずっとあらゆる業種で移民を受け入れてきました。ITだけではないのです。

若年層でのIT教育は不足しているとは思いますが、一番の原因はIT人材に人件費をかけていないことでしょう。ITだけではなく技術系の専門職全般と言った方が良いかもしれません。

90年代から2000年代にかけて、苦境に立つ日本の家電企業が韓国や中国から高額報酬での引き抜きがありましたが、バブル崩壊後ずっと、企業側が人件費を削れば利益が上がるという理屈に染まっていたことが一番の日本の不幸かも知れません。

GDPもインフレ率も一向に上がらず、30年間低迷し続けている日本ではIT人材の給与を上げることが難しいという理屈が経営側にはあるのでしょうけれど、それならなぜ移民が日本に来ると思うのでしょうか?

IT技術に優れた人材が、アメリカのような巨大IT業界ではなく、大して給与を払わず、敬意も払わず、権限も与えてくれない日本企業に勤めてくれるとなぜ考えられるのでしょうか?

移民なら日本人みたいにブツブツ文句も言わずに劣悪な環境でもIT業界で働いてくれると思っているのでしょうか?

労働市場を自由主義的に考えれば、供給が不足しているIT人材の価格は値上がりするはずです。そこを上げずに供給だけを増やして価格を下げようと考えるのなら、結局優れた頭脳を持った人材は日本のIT業界を選びません。別の業界か、アメリカのIT産業に行きます。

三木谷氏からみたら日本の現状のIT人材は大したことがなく、人件費を高くする気になれないのかも知れませんが、おあつらえ向きの格言があります。

「先ず隗より始めよ」という故事成語はしばしば引用されます。

元々は古代中国の戦国時代、今の北京付近にある燕という国の国王が、
「隣国の斉が我が国を苦しめた屈辱を晴らしたいが、今は国力が不足していて無理なので優れた人材を得て雪辱したいので紹介してくれ」
と郭隗という人物に言い、それに郭隗が
「昔の君主で、馬を買ってくるよう頼んだ部下が死んだ馬に大金を積んで買ってきたことに怒った人がいました。それに対して部下は、『死んだ馬に大金を積んだのだから生きている馬ならもっと高く買うだろう』考える馬売りが今に良馬の売り込んでくるでしょう、と答えたそうです。そして一年経たずに優れた名馬を売り込みに3人も来ました」
「もし、王が優れた人材を欲しいなら、まず私、郭隗を破格の待遇で雇ってください。そうすれば、私より賢明な人がいくらでもやってくるでしょう」
と言ったことから出来た言葉です。

ちなみに、燕の国にはその後、実際に優れた人材が集まり、斉の国を滅亡寸前に追いやるほどの雪辱を果たしました。

別にライバルを滅ぼす必要はないでしょうけれど、今回で言えばまずは楽天でのIT関連の人材に多額の給与を払ってみてはどうでしょうか?

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