ウクライナの過ちはロシアの正しさを保証しない
アムネスティインターナショナルが、ウクライナ軍がロシア軍に抵抗するために人口密集地域で軍事拠点を設けており、戦時国際法に違反していると非難する報告書を公表しました。
ロシア側の一部の主張を認める形の報告書であり、当然ながらウクライナ側は強く反発しています。
これをロシアやその侵攻を支持する人たちは、この報告書を持って鬼の首を取ったようにウクライナ批判とロシア擁護を行うのでしょうけれど、ウクライナが間違っていることが、そのままロシアの正しさを証明するわけではありません。
また、そもそもロシアにはウクライナの戦時国際法違反をあげつらう資格はないでしょう。あくまで特別軍事作戦と言い張り、ロシア国内で「戦争」と言う人間を処罰しているのですから。
そもそもこの軍事拠点にしてもロシアによる侵攻がなければそもそも無かったものです。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をアムネスティインターナショナルが認めたわけではないのです。
対立関係の一方が間違っていたら、無条件でもう一方が正しくなることなど、現実世界ではありません。たいていの場合は、両方間違っています。両方間違っているから両方を非難して自分は蚊帳の外にいる、というわけにもいきません。中立というのは、両方から敵扱いされる覚悟が必要です。
中立と言えば、旧ソ連勢力圏にあった中央アジア各国が、今回のウクライナ侵攻に関してはそれほどロシアを支援していないことが意外でした。特にカザフスタンはこの2022年の初めから大規模なデモが起き、権力闘争も相まって国家を揺るがす動乱になっていましたが、ロシアが軍隊を派遣して鎮圧し、同国におけるロシアの影響力を大いに強めたと言われていました。
それがあってもトカエフ大統領はロシアが生み出したウクライナ東部のドネツク・ルガンスクの両非承認国家を、諸外国同様承認しないと表明しました。
プーチン大統領も了解済みなのかも知れませんが、それ以外にもウクライナ侵攻反対デモを認めたり、ロシアからの軍派遣要求を拒否したりしていて、カザフスタンはロシアの属国とは到底言えない動きをしています。ベラルーシとは大きな違いがあります。
ウクライナ侵攻の原因を、ウクライナがEU・NATO側に入ることを阻止するためであり、かつてウクライナはロシア勢力圏に留めることを欧米がロシアに約束したことを反故にしたからプーチン大統領が暴発したのだ、と主張する人も結構いましたが、中央アジア各国もそれほどロシア寄りとも言えません。本当にロシアと協調して動いているのはベラルーシだけでしょう。
ウクライナ戦争がロシア側の勝利に終わり、ロシアが余力を取り戻してプーチン大統領も権勢を維持したままだったとしたら、最初に懲らしめにかかる相手は、今回制裁に加わっていた欧米や日本よりも先に旧ソ連勢力圏でロシアを支援しなかった国々なんじゃないですかね。
ともかく、旧ソ連勢力圏の国々ですらロシアを支援せずに中立的立場にいるのに、欧米に近い立場の日本の立ち位置は自ずと決まってきます。ウクライナに非難されるポイントはもちろんあってもおかしくはないのですが、それよりも先に非難する対象があるということです。