Jリーグに新国立競技場はいらない
後藤健生氏の記事に「パナソニックスタジアム吹田」という文字がちらっと出ているので反応してしまいましたが、新国立競技場の取扱いについては最初から最後まで失態続きのようです。
やっちまったな、新国立競技場。五輪後改修せずで、負の遺産化懸念
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/other/2019/07/12/___split_33/index.php
そもそもは建築案で一度採用したザハ案を取り止めにしたことから始まり、建築費用が当初の予定よりも高くなったり(公共建築物ではよくあることですが)、五輪後の利用方法については陸上トラックを撤去して球技専用スタジアムにすることでJリーグで日常的に使用するという方向で決まっていました。
しかし、上記記事にあるように、五輪後も陸上トラックを存続させて、球技専用スタジアムではなく陸上兼用とするという方向に転換しました。
陸上で使いたいなら使えばいいんじゃないと思いますが、問題は陸上でのまともな大会なら必ず必要なサブトラックが新国立競技場には存在しません。東京五輪では仮設で対応するだけで、五輪後に陸上トラックを残したとしても、子どもの遊びのような大会ならともかく、普通の陸上競技大会ではサブトラックがないので新国立競技場を使用できません。何のために残すんでしょうね。
サッカー側としても、陸上トラックを残して球技専用スタジアムではなくなる、ということであれば積極的に使用する理由がなくなります。莫大な維持費を考えるとあえてJリーグクラブのどこかがホームスタジアムとして使用する可能性も低いはずです。そもそも前の案でもFC東京や東京ヴェルディがホーム移転するということも決まっていたわけではありません。
かつての国立競技場では天皇杯決勝やナビスコカップ決勝、ゼロックススーパーカップが行われていましたが、箱の大きさのためではなく中立地になることと東京の真ん中にあるからという理由が大きかったはずです。この新国立競技場も中立地かつ東京にあることを理由にそれらの試合で使うことは充分あり得ますが、逆に言うとそれら以外の試合で使う可能性が非常に低くなります。何せ、莫大な維持費を賄うために使用料も高くなるはずで、特別な試合以外、すなわちリーグ戦などで使用するメリットがJリーグ側には存在しません。
ではJリーグではなく代表戦での使用はというと、こっちの方がまだ使用可能性は高いです。交通至便ですから観客動員も見込めます。ただ、特に外国人監督の場合にあるのが、球技専用スタジアムによってもたらされる観客の圧力をホーム開催の利点としたい、という理由で、さいたまスタジアム2002をW杯予選のようなガチンコの試合で利用することを望みがちです。確かジーコは間違いなく言っていたはずです。その後もW杯予選は埼スタで行われていますから、今後の代表監督も同じことを要求するのではないでしょうか。キリンカップなどの強化試合であれば新国立の出番もあるでしょうが、そうなると満員になるとは限らず、結局新国立でやるメリットも薄れてしまいます。
陸上界にもサッカー界にも望まれていない鬼っ子のような立場になる新国立競技場ですが、いっそのこと屋根をつけて、完全に多目的ホールとして使用すればいいのではないでしょうか。
確か山手線内には数万人が入るようなこれほどの大きな箱は東京ドーム以外になかったはず。東京ドームもだんだん老朽化していますし、ここらでいっちょ、デカい屋根付きのホールを作っちゃいましょう。
大阪には京セラドーム大阪と大阪城ホールが中心にありますが、山手線内の大型ホールは人口比率や商業規模を考えると明らかに不足している気がします。
多目的ホールにするなら陸上トラックも天然芝も要りません。アスファルトやコンクリ打ちっぱなしの床でも別に構わないでしょう。スポーツで使う場合は人工芝を持ってくればいいんじゃないですかね。使うところがあるか分かりませんが。
それよりも、ライブ・コンサートに利益の軸足を移しつつある音楽業界にとっては、使い出があるホールになるでしょう。周辺への音漏れや振動対策は必要でしょうけれど。
とりあえず、オリンピックスタジアムを五輪後もスポーツで使わないといけないという理屈はおかしいはずです。どこも使いたがらないようなスタジアムをそもそも作るなって話です。使うために作るのではなく作るために作るという、日本のハコモノ事業のテンプレのような展開をたどっている新国立競技場です。多目的ホールとしても使えないのであれば、更地にしてホテルかマンションでも建てた方がマシでしょうね。