業績評価の大前提は武器を与えていること(コントローラブルであること)
前回記事で書いた内容は、新規事業創出のためには、事業責任者に対するスクラップアンドビルド基準を明確にした上で、インセンティブとしての評価報酬制度を整備することでした。
(あと現場の人たちがチームワークを発揮できるような、非金銭報酬体系設計もですが、それは今回の記事とは関係しないので割愛)
この時の評価報酬制度は、いわゆる業績評価制度、といわれるものになるわけですが、その大前提があることを書いておこうと思いました。
それは、業績にかかる活動について、権限をちゃんと持っていること。
つまり、評価の指標となる事柄について、自分の采配で何とかできる権限を与えておくことです。
たとえば店長の評価を売上という指標で設定するのなら、売上を上げるための諸活動についての権限を与えておかなければいけません。
それはアパレル店舗でいえば、商品陳列の自由度であり、働くスタッフへの指示命令権であり、シフト管理の権限であり、評価の権限であり、商品仕入れの権限であり、お客様への接客手法を定める権限だったりします。
これらの権限をあたえずに、単に「売上で評価します」と言っても、業績評価の仕組みは機能しません。
このことについて、おそらくほとんどの人が納得されると思います。
さて、では新規事業責任者に対してそれらの権限を与えている会社はどれくらいあるでしょう。
今日のショートセミナーでも話したのですが、なぜか事業単位の責任者には、権限を与えていないことが多いのです。
もちろん、無責任に権限を与えるわけにはいきません。
だから多くの新規事業においては、事業計画と、それに基づいた予算案を作っているはずです。
それらについて承認をしているのなら、その範囲での決済において、稟議承認をややこしくしなくてもよいはずです。
なのに、なぜか横やりが入ることを良しとしてしまっている。そんな会社が多いのです。
新規事業のような、現場に合わせた迅速な意思決定が必要な場面では、しっかり権限を与えて、結果で評価をする仕組みを作ることが有効です。
ある程度安定的に動いている既存事業のように、プロセス管理を徹底する段階にはないからです。
事業責任者に対する業績評価が機能するためには、ちゃんと彼らが戦えるだけの武器を与えなければいけません。
人事はそのことを理解した上で、仕組みとして評価制度に反映することが重要です。時にそのことについて、経営層に働きかけ、承認を得ることも必要です。
人事とは、事業を成長させるためのツールに他ならないのですから。
事業責任者を支援し、彼らをヒーローにすることが使命なのです。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)