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【第2章】50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け

最終更新日:2024年5月23日

本連載では、当社マネジャーの柳瀬大地が「月刊 人事マネジメント」にて執筆した、企業業績向上のための50代社員の活躍を引き出す人事の仕掛けについてご紹介いたします。

本記事では、50代社員の既存スキルの活用方法について検討していきます。

*本記事は、5~7分程度で読むことができます。

「50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け」は、全6回にわたる内容ですので、ぜひ全てご覧いただけると嬉しいです!

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スキルの可視化と人材活用戦略

第1章では、50代社員の現状を整理し、活躍の可能性をスキル・モチベーションの2つの側面から考察しました。
そのうちスキルについては、スキル自体のアップデートと、既存スキルの活用方法を検討することが必要であることをご説明しました。

今回は、50代社員の既存スキルの活用方法について検討していきたいと思います!

50代社員のスキル活用可能性の検討

50代社員は、20年以上の就業経験を通じて、様々なスキルを蓄積しています。

しかしスキルの中身の具体化や可視化まではできていないのが現状です。

そこでまずは、スキルの定義を明確にした上で、活用可能性の観点から整理・可視化します。

1 )スキルの定義
ここで、スキルを「性質」「活用範囲」それぞれの側面で分類して整理します。(図表)

性質
スキルの性質を、「知識」「能力」「関係性」の3種類に分類します。

  1. 知識
    知識は、純粋に「何ができるか/何を知っているか」という観点から分類されます。
    日々の業務や研修・自己研鑽等から得られる、インプットを重視したスキルです。

  2. 能力
    能力は、知識を利用しながら物事を成し遂げる、課題解決に導くスキルです。
    知識と比べて、アウトプットを重視したスキルといえます。
    今回は一般社団法人人材サービス産業協議会主催のポータブルスキル活用研修テキストを参考に、以下の 5つに区分します。

    ・情報収集・分析力
    ・課題設定能力
    ・計画立案能力
    ・課題遂行能力
    ・対応力

  3. 関係性
    そして関係性は、「成果創出のための対人関係」という観点から分類されます。
    こちらも上記研修テキストを参考に、上層部や関係部署と良好な関係を築き意見を通す「社内対応力」、顧客や取引先を巻き込む「社外対応力」、同僚や部下をまとめる「マネジメント」の3つに区分します。

活用範囲
次に、活用範囲を整理します。
活用範囲はスキル発揮によって生み出される成果の影響範囲を示したものです。
今回は「組織領域」「企業領域」「業界領域」「ビジネス・一般領域」という4 階層に分けて考えてみましょう。

  1. 組織領域
    組織領域は、経理・営業などの機能組織や事業部単位の事業組織といった、特定の組織内を指します。
    この領域のスキルには業務としての専門性に加え、過去の慣例や慣習などに起因するものも含まれます。

  2. 企業領域
    企業領域は、複数の組織領域をまとめた1つの企業体を指します。
    この領域のスキルは、企業内の組織構造、文化、社内ITシステム運用などに起因するものが挙げられます。

  3. 業界領域
    業界のスキルは、業界特有の法規制や顧客、取引先などに起因するものが挙げられます。

  4. ビジネス・一般領域
    ビジネス・一般領域は、汎用的かつ戦略的な領域です。
    企業価値向上に向けた経営課題解決能力や必要なリソースを調達・活用して、成果を生み出すスキルが挙げられます。

ビジネス・一般領域におけるスキルは活用範囲が広く、どのような環境でも適応可能であることが特徴です。
他方、その他の領域は、活用範囲が相対的に限定され、求められる役割や周りの支援等の有無の影響を大きく受けます。

2 )スキルの棚卸と深掘り
以上のスキルの定義をもとに、実際にスキルの棚卸をしていきます。
棚卸作業については、一般性を持たせるために、なるべく人事部あるいは外部コンサルタントに依頼することがおすすめです。

・棚卸を進める際のポイント
棚卸担当は、まず過去の評価シートや社員データベースを確認し、社員の業務歴や研修受講歴、保有資格など基礎情報を整理します。
場合によっては本人が保有できていないものもあるかもしれませんが、極力、外部視点から「この組織にいたのなら備えているであろうスキル」をピックアップしていきましょう。

そのうえで、棚卸したスキルの確認と深掘りをします。
深掘りの際は、本人へのインタビューが有効です。
自分自身で話してもらうことにより、自己肯定感を高めていける副次的効果も期待できます。

なお、深掘りを自社内で実施する場合には、キャリア研修のカリキュラムに組み入れることや、評価シートにスキルに関する本人記述欄を設け、自己確認を促したりするなど、既存のツールのアレンジがおススメです。

・スキル情報の管理
棚卸後、スキルを個別に整理し一覧化することで、人材配置の見直しや新たな人材活用の検討につながります。

整理・一覧化にあたっては、スキルデータベースを備えたHRテック系の各種システムを活用しましょう。
システムを活用することにより、社員のスキルや資格などを一元管理することができます。
また、スキル情報のアップデートや検索も容易になります。

棚卸結果をもとにした50代社員のスキル活用方法

棚卸の結果をもとに、まずはスキルの活用方法を検討しましょう。

1 )スキルに関する客観情報を基にした適材適所の実現
スキル情報を整理することで、50代社員がこれまで積み上げてきたスキルの性質や活用範囲を再確認できます。

例えば、「関係性」×「企業領域」のスキルがある方なら、大規模な組織変革プロジェクトにおける社内調整役を任せられるかもしれません。
「知識」×「業界領域」のスキルが豊富な社員であれば、デジタルマーケティングプロジェクトでの既存顧客の課題抽出や、業界分析などに携わることが考えられます。

2 )新たな視点での人材活用
一方で、「組織領域」のスキルしか保有していない社員はどうでしょうか?
例えば、同じ部門のルーティン業務にだけ長年従事してきた社員などのケースです。
そのような場合においては、まずは後輩の育成などのスキルの伝承を指示しましょう。
そのうえで、既存業務の改善を後輩と協力しながら進められるようになれば、その成果は組織領域を超え、企業領域にまで拡大する可能性もあります。

まとめ

本記事では、企業の成長につながる50代社員の既存スキルの活用可能性をご紹介しました。

50代社員の既存スキルは使い方次第で企業の成長に寄与すると考えられますが、もちろん限界があります。
また、それだけで50代社員全員に活躍の場を与えられるわけでもありません。

第3章以降、50代社員のキャリアに対するマインド変革とスキルのアップデートに向けた教育のあり方についてご紹介しますので、ぜひご覧ください!


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