膜のなかからきみに出会うまで #01
どうして君は生まれてきたと思う?問いを重ねるうちに根源的な問いにたどり着いた。人より哲学に詳しかった部活の元同期の口ぶりを思い出す。酒が入るとド真面目な顔つきで思考実験を繰り広げようとする厄介な奴だが、その価値があるような、ないような夜更けの時間が、私は嫌いではなかった。
でもここは深夜の居酒屋ではない。
私は調整を済ませたばかりの万年筆をゆるく握って、朝方のカフェの端っこで肘をついていた。絶賛転職活動中。履歴書に丁寧な字で経歴を書き連ねながら、自分の市場価値について考える。