読書録『SUPER MTG』
「MTGが変われば会社が変わる」というと大げさですが、「総人件費の15%を占める仕事の質が変われば会社が変わる」といえばどうでしょうか。この15%という数字は、ゼロックスで製造開発部門の社員24,000人を対象に行った調査結果だそうです。
実際に何%かはともかく、多くの人がかなりの時間をMTGに費やしていると思います。そして役職が上がる程に1日に占めるMTGの時間の割合は大きくなるでしょう。
だからこそ、MTGの質あるいはMTGのリーダーに対して評価を行うことを著者は推奨します。これを実際に会社内のさまざまなMTGで試してみたら、ひょっとすると恐ろしい結果が出てしまうかもしれません。
さて、僕が本書『SUPER MTG』を手に取ったのは、ファシリテーションのヒントを期待してのことでした。
読んでみると、ファシリテーション[skill]のことはそれほど目新しいものはなかったのですが、もっと大事なことを見つけられたように思います。それは、ファシリテーターがいること[presence]自体にすでに大きな価値があるということです。
ファシリテーターはMTGを生産的にすることを目指します。なぜなら、MTGには相応の機会コストがかかっており、漫然と執り行っていてはいけないと、知っているからです。また、しっかりとデザインされたMTGがいかに有意義で、チームのモチベーションを高めるかも知っているからです。
言い換えれば、MTGが変われば組織が変わると信じているのです。
本書では、MTGのリーダーにサーバントであることとギバー(Give and TakeのGiveを率先して行う人)であることを求めます。これはファシリテーターにとっての基本姿勢です。
さらに本書は、「感情は空気感染する」として、全体的にポジティブな空気であることが議論を活性化し、創造的で有意義になるとも説いています。これもまたファシリテーターにとっての基本です。
本書の中でインテルの元CEOアンディ・グローブが、すべての新入社員を対象に「ミーティングトレーニング」を行なって、自ら教壇に立っていたという話が紹介されていました。これはぜひ見習うべきだと思います。人件費の15%も費やされるMTGですから、そのスキルを一定水準に高めるための投資は合理的だと思います。
僕はファシリテーションの基礎的な技術や考え方を、「会議のリテラシー」として新入社員研修に組み込みたいと思っていたので、このアンディ・グローブの話にはとても共感しました。
著者の言う「MTGを大切にする文化」を組織に根付かせることができれば、それは社員にとっても素晴らしいことだと思います。
ご関心のある方はぜひ読んでみてください。
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