「BAKERU」のお話 #01 作品の概要
「化ける」とか「変身する」という行為は世界中で、太古の昔から現代まで続く興味深い文化です。面をつけたり衣装をまとったりすることで自分ではない、神に近い、強い、何者かに変化する行為。その奥深さを感じられる作品を作りたいと思ってきました。
BAKERU
「BAKERU」はWOWによるオリジナルの体験型映像インスタレーション作品です。東北に古くから伝わる4つの郷土芸能をモチーフにし、その世界観の中で配布されるお面を身につけることで神の化身に「化け」て様々な体験ができる、という作品です。
体験用のお面は、作品の空間に入る前にチケットの代わりとして配布されます。スクリーンに映る自分の身体は、お面を身につけることで様々な姿に変化します。その姿は自分の体の動きに連動していて、それぞれの芸能のシーンで芸能に特有な動き(雨乞い、おじぎ、とびはねる、なげる)をすることで様々な体験をできるようになっています。
4つの芸能とシーン
4つのシーンは、それぞれ4つの芸能(なまはげ、早乙女、鹿踊、加勢鳥)をモチーフにして背景とキャラクターがデザインされています。ローポリゴンで全体のトーンとしては淡い、ノスタルジックな雰囲気。年齢問わず多くの人が受け入れやすいデザインになっています。
空間
空間には3つの要素があります。右側のインタラクションのスクリーン、左壁付近の大きなペーパークラフトのお面、左の壁の影映像です。それぞれデジタルな表現、デジタルなポリゴン造形をリアルなオブジェにしたもの、実際の芸能を映像化したもの、と「デジタル -> リアル」のグラデーションになっています。
音
音の演出も作品の大きな要素です。会場には様々な芸能のお囃子をリアルタイムに合成し、変化し続ける音が流れています。また、各シーンのインタラクションには個別のSEがあてられています。見落とされがちですが、音は作品の世界観や、自分の行動がどう反映されているのか、といったことを知るのに大変重要な要素です。
BAKERUは、WOW仙台を中心とした、グラフィック、映像、プログラミング、音を得意とするクリエイターチームで制作したオリジナル作品です。このテーマを選んだ時から「伝統文化の表面をなぞるだけの薄い作品はやめよう」と皆で覚悟を決めて、様々なリサーチや有識者へのインタビューも交えながら半年ほどをかけて完成させました。(その多くは商業案件と並行した、合間をぬった作業です。大変だった。。)
制作の経緯や、演出の解説、その後の展開などに続きます。