引き出しから取り出した、物語の続きを
幼い頃の記憶なんてたいして残っていない、あてにならない。そう思っていたけれど、意外と体に染みついているみたいだった。まるで何回こすっても落ちない、洋服に付いた染みのように、私の頭の中にいつまでもぼんやりと輪郭が残る。ふとしたきっかけで、輪郭から細部までうっすらと、まるで漫画の空想シーンの吹き出しのようにふわふわと蘇る。
人には消したい記憶、残したい記憶、そのどちらでもない記憶があると思う。どれも引き出しの中にきれいに並べられていて、普段は使わない奥底に眠っている物語たち。そ