【ALGS】クラッチ力を評価する

「クラッチ」の定義

FPSゲームにおいてクラッチとは、不利な状況からの勝利という意味の言葉で、具体的には味方が落ちて1人になった状況からの勝利を指します。
今回はALGS Year4 プロリーグのデータからこのクラッチについて見ていこうと思います。前述の定義のように1vs1, 1vs2, 1vs3をクラッチシチュエーションとしますが、以下の条件に当てはまるファイトに絞ってみていきます。
・ファイトの勝敗が付いたもの
・1人になった後に蘇生せずに戦った
・1人になった時点での相手の人数ごとに集計
上の条件に当てはまるファイトのうち、第三チームの介入(Dmg・キル数)の多さと交戦距離も考慮してクラッチシチュエーションを特定します。
結果として、Year4各地域のプロリーグ495試合分のデータから6240個のクラッチシチュエーションを特定しました。

人数状況ごとのサンプル数と成功率

クラッチ成功率と人数差を考慮した評価

以下の表は、APAC Northと全地域でのクラッチ率ランキングです。状況別の勝敗内訳も併記しています。

APAC North Clutch%上位
ALGS Year4 Clutch%上位

Clutch%では1vs1と1vs3が同じように評価されるため、そこを補正するために1人になった時点の状況のファイト勝率を期待値ファイトの結果から、期待勝率との差を合計します。
例えば1vs2ファイトに勝利した場合、一人になった時点での勝率期待値0.092を、期待値を1にしたとして1-0.092=0.908ポイントの評価をし、敗北の場合は期待値を0にしたとして0-0.092で-0.092ポイントの評価となる。
このように各クラッチの勝敗に重みをつけて合計したものをクラッチ機会で割り、わかりやすくするために100を掛けたものをClutch Pointとして紹介しました。

Clutch Point上位

「クラッチ力」について

今回はクラッチについてのデータを紹介しましたが、実際にクラッチをする力があるのか、クラッチ状況において本来の実力以上/以下のパフォーマンスを発揮することがあるのかを判断するにはあまりにデータ量が少ないと考えます。
例えば、野球ではデータ分析によって打者の勝負強さを表すとされる得点圏打率にシーズンごとの再現性が見られないことからデータ的な観点からは勝負強さという能力は存在しないとされています。


同じように今回のクラッチ評価についてもそもそも母数の少ない事象であること、1vs2, 1vs3については勝率から見ても基本的に負けるファイトであるため選手間で成績の差が付きにくいことを考えると、クラッチをしたという結果を表しても、選手にクラッチ力がある/ないと決定付ける数字ではないと思っています。

クラッチ機会が増えればClutch%は平均近くに落ち着いていく


しかし実際にクラッチをしてチームに貢献したという結果は確かにあるので、そこに対する評価や単純にデータとして面白いだろうと思ってこのようなデータを紹介するに至りました。

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