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「Job-Us x セルフジョブ定義」 戦略的提携により実現されるHR-DX
トップ画像はクリスマスイルミネーションをモチーフにしたものだが、今回の提携発表は、「ジョブ型移行」に苦慮している多くの日本企業にとって一足早いクリスマスプレゼントとなるだろう。
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「セルフジョブ定義」について
株式会社SP総研は、これまでも多くの日本企業に「セルフジョブ定義サービス」を提供してきた。これは、どうしても経営戦略、事業戦略からトップダウンで職務要件定義(人材要件)に落とし込むというアプローチが日本企業にはフィットしない、という大きな課題を克服するために考案された独自手法だ。詳しくは下記のような記事を参照されたい。
そして、数々の事例の中でも最も先進的な取り組みであり、かつ、大規模なものがこちらの事例だ。SP総研はパナソニックインダストリー社のジョブ定義を支援した。6カ月にわたるプロジェクト期間に190セットのワークショップが行われた。対象は部課⻑クラス以上の全てのポストで、総数はおよそ1,000 名、という規模に及んだ。
これまでは、下記のようなExcelのテンプレートを使用してワークショップを行っていた。最終成果物もこのExcelシートであった。
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課題となったこと
このような、若干アナログ的ともいえる方法にも一定の利点はあった。例えば、人と人との密な対話、コミュニケーションが生まれるという効果はあった。しかしながら、次のような課題が浮き彫りになった。
バージョン管理がExcelのファイル単位となるため、ジョブ定義の数が相当数に及ぶと管理・メンテナンスが煩雑になる。
ローカルに保存しているExcelファイルの滅失、破損のリスクがある。
成果物としてのジョブ定義書もExcelファイル形式だが、(CSV形式にてUpload等も可能ではあるものの)タレントマネジメントシステム等への直接的な連携に難がある。
「横横の連携」といわれるような、例えば人事部長と経理部長を並べて同じ部長職に求められそうな共通要素は何か、を確認しながらの調整作業が行いにくい。
Job-Usとの出会い
このような課題を克服するためにも、Job-Usのようなプラットフォームが
必須となった。
Job-Usの思想には以前から共感しており、株式会社Ex-Work代表の馬渕氏とは何度も意見を交わして、日本企業の「再浮上」に向けて壮大な夢(野心にも近い)を語り合ってきた。何らかの提携、連携は既定路線であったが、ちょうど前述のような課題にSP総研が直面していたところ、馬渕氏から嬉しい連絡が入った。
それは、
「この度、数万名規模の大企業へのJob-Usの導入が決定した。用途としては、従業員がJDを作成・更新し、上司や人事がレビューしてFixするまでをJob-Us上で行う、というものだ。その後、その企業がすでに導入しているタレントマネジメントシステムに、作成したJDがJob-Us上から自動連携される仕組みを構築した。SP総研がセルフジョブ定義サービスを企業に提供される際にも、上記のような用途でJob-Usを活用できるのではないか。」
というものだった。
そこで、「Job-Usを活用することにより、ジョブ定義ワークショップそのもののDXにつながる、のみならず、単なる便利ツールとしてではなく『データドリブン人事』『HR-DX』に向けた最初の一歩を踏み出してもらうためにも最適なツールだ」と直感した。そして、具体的な連携についてすぐに構想を描いた。それは次のような内容だ。これまでも提供してきた「セルフジョブ定義」の実際のワークショップの進め方に沿って紹介する。
セルフジョブ定義ワークショップにおけるJob-Usの活用
「下書き」パート(ワークショップ1日目)
ジョブタイトル
自由な発想で、モチベーションが上がるようなジョブタイトルを自分でつけてみる。複数挙げても良い。その場合は「/」(スラッシュ)で区切る。
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ジョブの概要
社外の人から「どんな仕事をしているのか?」と聞かれた場合、分かり易く、かつ、魅力的に伝えるとしたらどのような表現になりそうか。文章形式で自由に記載する。
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任務・職責
自分としては、どのような任務あるいは職責を負っていると認識しているか。あまり細かなタスク単位にならないように気をつけながら、主観的な表現で良いので自由に記載する。「4本柱」にまとめる。任務・職責毎の「タイトル」は後で決めても良い。
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スキル
「スキル」を「Knowledge, Skill, Ablity and Ohters (KSAOs)」と広義にとらえ、上記の任務・職責それぞれの遂行、全うにあたり「役立っている」と自己認識しているものを可能な限り多く記載する。このとき、「表現」にはこだわらなくて良い。(SP総研にて世界通用性あるスキル名称に変換するため。)
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「標準化」パート(ワークショップ2日目)
ここではJob-Usからentomo(旧KPI Soft)にバトンタッチをして、世界通用性のあるスキルライブラリー(40,000件以上のスキルが登録済み)を活用しながらスキルの名称を整えていく。同時に、自己評価によってレベル4段階の設定を行う。
なお、将来的にはこのような「バトンタッチ」をせずとも、Job-Us上からentomoのスキルライブラリーを呼び出したり、シームレスな連携をして自動的にentomoに画面遷移していくような仕掛けも検討中である。
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「清書」パート(ワークショップ3日目)
スキル
entomo上でリスト化されたそれぞれのスキルについて、SP総研の知見を入れながら日本語化と詳細説明の付記がJob-Us上で行われている。それらの内容を確認しながら、「レベル」の最終決定と「重要度」(高、中、低)の設定も行っていく。
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任務・職責
任務・職責の「4本柱」それぞれについて、「タイトル」を決めて説明書きの表現も整える。
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ジョブの概要
全ての任務・職責につき表現を最終化したら、さらにそれらを集約したような表現を考えて「ジョブの概要」の最終表現とする。
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ジョブタイトル
最後に、「ジョブの概要」の内容を体現するようなジョブタイトルを一つに決定する。もちろん、組織として公式に用いたいジョブタイトルが事前に決まっているのであればそれを記載する。
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その後の調整、メンテナンス
例えば、等級が同じ、しかしながらジョブファンクションを異にするようなジョブ定義同士を左右に並べて、共通するスキルのレベル感を合わせたりジョブの概要説明の表現を調整することができる。
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また、「縦」(ジョブグレード別)と「横」(ジョブファンクション別)でどのようなジョブ定義が存在するかを、下記のような画面にて俯瞰することができる。
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タレントマネジメントシステムとの連携
Job-Us上で作成したジョブ(JD)データを、使用しているタレントマネジメントシステムのフォーマットに合わせたCSVで出力し、アップロードすることでデータ連携を行うことも可能だ。
なお、一部のシステムにおいては、サーバーを介して自動的に連携される仕組みも構築されている。
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その後、ジョブ(JD)の情報を、採用・異動・配置、目標・評価管理、スキルアセスメント、ラーニング(リスキリング)、後継者管理(サクセッションプラン)などに活用していく。
これにより、ジョブをベースにした人材活用を実現することができる。
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今後、組織改編などで必要になるジョブの定期的なメンテナンスもJob-Us上で実施し、それをタレントマネジメントに連携することで簡単に最新のデータを保つことができる。
その他JD運用を手助けする機能も搭載
ワークフロー:
作成したJDのレビュー・承認、コメント、担当者の割り当てなどが可能。メールでのファイルのやりとりが不要に職務評価:
各ジョブに対する職務評価をシステム上で実施。項目やウエイトのカスタマイズも可能バージョン・ステータス管理:
自動的にバージョンやステータスが管理される。面倒なファイル管理が不要にセキュリティ機能:
シングルサインオン(SSO)や監査ログなど、大企業向けのセキュリティ機能を搭載