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ドット絵ですし(後編)
さて今回もドット絵おすしをにぎにぎしていきましょう。前回はおすしの代表格として『まぐろ』をチョイスしましたが、今回は自分が一番食べたいのをにぎります。
そう、おすしと言えば……『ソールスシ』です!?
「たまごじゃないんかーい」というベタなツッコミがそこかしこから聞こえてくる気がしますが、いやいや。ネットスラングにもなっている「ですしおすし」で有名なアレ、原点は『ソールスシ』ですから。
縁側で茶飲み話?
「ですしおすし」は、ぼくもプレイしている(ようでサボっている)MMORPG『FINAL FANTASY XI』(FF11)のあるプレイヤーのブログを発端に広まった言葉です。
ただ、FF11プレイヤー以外の多くは正確な由来を知らないようで、『ニコニコ大百科』にも以下のように記載されています。
ちなみに、そのプレイヤー本人は「ですしおすし」とは言っていないらしく、あくまで「スレ住民の間で使われていたスラング」という事らしい。
「おすし」が組み合わされた理由としては、「このプレイヤーが好んで用いた料理がスシだったから」と説明されることもあるが、この説明は少々怪しいようだ。このゲーム『ファイナルファンタジーⅪ』のアイテムに「スシ」が存在することは確かであるが、スレッドの過去ログに「スシを好んで用いている」という読み取れる記述はあまり見当たらない。単に「ですし」からの連想で、「おすし」が好きだという架空のキャラ付けがなされていったように見える。
はい、デマです。なぜ知りもしないのに大百科を書こうと思ったのかわかりませんが、こんなのが放置されるようでは「南京大虐殺はなかった」みたいな言説も広まるわけですね。
「ですしおすし」がプレイヤー本人(Cさん)ではなく匿名掲示板で言われた言葉であるのはそのとおりですが、そのCさんのブログ記事にたびたび見られた語尾「~ですし」に、「おすし」が加わった理由は別にあります。
当時のFF11はまだ強敵相手に攻撃を命中させることが難しい時代で、それをゲーム内の命中率アップ食事「スシ」によって補っていました。なので「スシ」好き(というより食べざるをえない)は多くのプレイヤーたちであり、スシ食は「常識」として求められる状況でした。
Cさんのブログが匿名掲示板で話題になったのは、この手のFF11の常識に毒されてフォーマルな振る舞いを是としすぎる傾向が垣間見えて、カジュアルなプレイヤーたちに強い反感を買ったためです。特に、ある日いっしょにパーティーを組んだメンバーのひとりの働きが悪かったことを責め、それがきっかけでCさんはFF11で広く知られる人物になりました。
そういった愚痴系のブログ記事はいくつもあったのですが、その中で「おすしくらい食べてほしい」という発言がありました。ゲーム内のアイテムとしては「ソールスシ」「トゥーナスシ」といった名称で、FF11のプレイヤーたちは一般的に「スシ」と呼んでいるところを、Cさんは丁寧に「おすし」と言い変えているのも特徴的で、ひどい言い草の記事とのギャップがひときわ注目されてCさんの言葉遣いがマネされるようになっていきました。
ネトゲの外、実生活ではむしろ「誕生日はお寿司とろうか?」といった具合いに「おすし」と呼ぶ方が普通ですから、ブログのなかで「おすし」という言い方をしたこと自体が特徴的だというのは当時を知らないとわからないかもしれません。
当時の匿名掲示板では男言葉やいわゆるタメ口で話すのが普通になっていたため、少しでも女性っぽい言葉を使ったり、ときには「ですます」で話すだけでも「○○○(性器)見せい」などとセクハラを受けていた時代でした。Cさん本人の性別は不明ですが、キャラクターは女性だったためターゲットにされたという側面もあると思われます。ぼくもゲーム内では「ですます」で話すタイプですが、女性と勘違いされることがありました。キャラも男なのにですよ?
と、いうわけでいくらCさんのブログが感じ悪い内容が多かったとはいえ、「ですしおすし」はネットいじめを発端に広まった言葉ですから、ご利用の際にはご注意くださいね。それではまた次回~。
じゃない!
本題に戻りましょう。その当時、FF11の常識として求められたスシ食のなかで、特に有用とされたのが『ソールスシ』でした。FF11では調理職人だったぼくは、これでさんざん稼がせていただきましたフヒヒ。自分で食べるのは、安く作れるサーモンスシでした。
なお、ソール(sole)とはヒラメのこと。現実のおすしで言えば「えんがわ」ですね。ただし「えんがわ」は魚の種類ではなく、"魚類のひれの基部にある骨や筋肉"を指すそうで、えんがわ=ヒラメとは限らないそうです。
では「縁側の茶飲み話」は終わりにして、さくさく、こりこりとソールスシをにぎっていきます。
ドット絵メイキング『ソールスシ』(えんがわ)
ごはんの部分はマグロ寿司から流用できるので、ヒラメの縁側部分の切り身を用意しましょう。マグロの切り身は基準として使いやすいので、まぐろのアタリをベースにして作業を始めます(手順①)
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手順②でヒラメの切り身のかたちを決めます。
ヒラメは大きな魚ではないので、その切り身はマグロのように一部をカットした四角い形状ではなく丸みのあるものになります。またふにゃっとやわらかいので平坦にせず、部分的に垂れた感じも出しました。
色は基本的には白身ですが、お米との差別化のため"純白"にはしたくありません。赤身がかった肉を使う場合も多々あるようなので、少し赤味のある白としました。
続く手順③ではマグロのときと同じく筋肉の層を示す明色のラインを入れますが、そのラインもふにゃっと波打たせています。ちょっとだけ。
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さらに手順④でハイライト色をいれつつ全体をツヤっとさせます。
そして、あとあとイカとの差別化が必要になったときのため、手順⑤では端に少し赤味を持たせることにしました。奥に少し、手前にごくわずかに赤味をつけます。ただ、赤味を増やしすぎるとエビに見えたり、ハマチになったりしてしまうので注意が必要です。寿司ネタは基本的に白身と赤味ばかりなので、差別化はなかなかの難題ですね。
ともあれ、これで切り身はできあがり。
手順⑥ではこれをごはんに乗せます。今回は、ごはんに切り身の影を少しだけ付けています。
え、「ワサビどうした」ですって? ワサビ嫌いなので、前から「サビ抜き」にしているんです。それで完全に失念していたのですが、おかげで「白身にうっすら透けるワサビの緑」なんて細かい表現をせずに済みました。余ったワサビは、別の機会に使います(?)
はい、あとは2個そろえてお皿に乗せて……
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え、皿の色がマグロと同じなのはおかしい?
うーん、仕方ないですねえ……
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というわけで、お皿の色を変えてみました。
これにて『ソールスシ』のできあがりです!
でも、もう完全に回転寿司ですね……。
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スピードが速すぎるって?
それならやはり、おすしを食べて命中率を上げるしかないですね。
余りもので作られたワサビ寿司をつかまされるのは、いやですし。
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(おしまい)