日本人のアイデンティティと自立について
これまで北斎を通した自立についてお話ししてきましたが、この回で終わりです。
詳しくはこちら https://note.mu/hozuyamamoto/n/n4d89dd53916d
北斎が我が国初の近代的なアーティストになった上記の3つの自立の条件は、現代社会に暮らす私たち市民にも当てはまるのです。
まず3つの自立のうち3番目の「社会環境」を見てみましょう。
表現と収入の自立を助けているのが、市民革命から始まる民主主義体制です。この社会環境が近代人の個を確立させました。北斎では疑似民主的な小布施になります。
次に2つ目の自立「収入の自立」です。私たちの経済システムは、個人の時間の一部を社会に提供して収入を得る資本主義体制です。
北斎も「収入を得るため」の作品制作の時間と、「新しい表現を追求するため」の時間を分けていました。
では私たちにとっての表現の自立とはなんでしょうか?
仕事の仕方も表現ですし、作品のコレクションも表現だと言えますが、もっとも大切な表現は「選挙の立候補と投票」だと思います。いまの日本では選挙の投票率が50%前後となり、約半分の人々が表現の自立を放棄しているのです。
それがポピュリズムの原因となり、批評性を欠くフローなサブカルチャーが蔓延することになりました。それでも批評性のある漫画などは、将来メインカルチャーに成ると思います。浮世絵も風俗を描くだけでなく、外光派のように新しい視覚を取り入れたり、幕末の風刺画のような批評性ある表現してたから日本のメインカルチャーになったのです。
重要なのはこの批評性です。
巷で良く耳にするアイデンティティ(自己同一性)とは、この批評性を他者ばかりでなく自己に向けることです。今ここにいる自分は本当の自分なのか、それを確認するために3つの自立の条件が不可欠なのです。もし批評性が無ければ自分の価値評価ができず、フローとなって自分をストック出来ません。
近現代のアーティストたちはこれを繰り返して制作をしています。私たちはその過程を作品で体感し、自分のこととするわけで、それが芸術の社会的役割なのです。21世紀の日本人のアイデンティティに繋がるメインカルチャーとはなんでしょう!
私のアートの記憶が役立つのかわかりませんが、次に向かう所存です。
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