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【医師論文解説】難聴検査で"想定外"の落とし穴 - コストは予想の2倍以上!?【Abst】


【背景】

非対称性感音難聴(ASNHL)の精査における標準検査は造影MRIです。

この検査の主な目的は聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)の検出ですが、その発見率は5%未満と低値です。それでも一般的にはコスト効果が高いと考えられています。しかし、これまであまり注目されてこなかった問題として「偶発所見(incidentaloma)」の存在があります。

【方法】

  • 研究デザイン:後ろ向きコホート研究

  • 対象期間:2012年1月から2022年11月

  • 設定:米国中規模都市の1つの教育機関

  • 対象:ASNHLの精査目的でMRIを実施した患者記録

  • 分類:

    1. グループ1:正常

    2. グループ2:異常所見あり/正常変異

    3. グループ3:異常あり - ASNHLの原因となる所見

    4. グループ4:異常あり - フォローアップが必要な所見

経済的評価方法:

  • Medicare(公的保険)料金表

  • 民間保険のデータ

  • 無保険者向け医療費推計を使用

【結果】

  1. 総症例数:600例

  2. 内訳:

    • グループ3(ASNHLの原因となる所見):18例(3.0%)

    • グループ4(要フォローアップの偶発所見):40例(6.7%)

  3. 治療介入:

    • グループ4のうち3例(7.5%)で偶発所見に対する治療介入が必要

  4. 経済的影響(追加精査にかかる患者1人あたりの費用):

    • Medicare:744ドル

    • 民間保険:1,534ドル

    • 無保険:2,260ドル

【考察】

  1. 頻度の比較:

    • 偶発所見(6.7%)は、ASNHLの原因となる後迷路性病変(3.0%)の2倍以上

  2. 経済的影響:

    • 治療介入が必要な症例は比較的少数(7.5%)

    • しかし、追加検査や経過観察に伴う経済的負担は無視できない

  3. 医療システムへの影響:

    • 個々の患者レベルでの経済的負担

    • 医療保険システム全体への影響

【結論】

ASNHLの精査におけるMRIでは、目的とする病変の2倍以上の頻度で偶発所見が発見されます。実際に治療が必要となる症例は少数ですが、追加検査などによる経済的影響は決して小さくなく、患者個人と医療システム双方の観点から考慮する必要があります。

※注意: この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスではありません。具体的な治療や生活習慣の改善については、医師に相談してください。

参考文献

Lee L, Islam AS, Sterlin L, Coelho DH. Incidental Findings on MRIs for Asymmetric Sensorineural Hearing Loss: A Clinical and Economic Analysis. Otol Neurotol. Published online October 21, 2024. doi:10.1097/MAO.0000000000004353

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