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ヤマトノミカタ#45「私の愛した奈良公園」
ガラパゴス諸島では、人間と野生動物との距離がとても近い。
イグアナやペリカンなどは人を恐れることはありません。
私が港のベンチでうたた寝していて目が覚めると、体を休めるアシカに囲まれていました。
アシカと一緒に同じベンチで寝ていたのです。
それは人と野生動物が共生しているおとぎ話のような世界でした。
しかし、ゾウガメ(陸ガメ)だけは例外でした。
大航海時代に食料として乱獲されたゾウガメ。
現代、ガラパゴス諸島の森で野生のゾウガメに出会っても、人間を恐れて甲羅の中に身を縮め、人影が消えるまで動かなくなるのです。
野生動物と人間との関係は、長い時間をかけて積み重ねられた結果だと、ゾウガメは教えてくれました。
奈良公園の鹿と人間との関係も同じではないでしょうか。
人間が鹿を神様の使いとして向き合って来たことで、他の野生動物とは違う今の関係が出来上がったのです。過去の経緯があって今の距離感が生まれたことを忘れてはなりません。
奈良公園はサファリパークではないのですから。
もし、人間が鹿に危害を加えるようになれば、その関係は崩れてしまって、簡単には元に戻らないのではないでしょうか。最近の鹿と人間の関係を見ていると、少し心配になります。
「奈良公園のベストワン映像」
奈良公園は人の暮らしと野生の鹿、人々の祈りが長い時間をかけて作り上げた地上の楽園だと思っています。
そして、テレビカメラマンとしてレンズを向け続けて来た大切な場所。
これまで撮影した奈良公園の映像の中でベストワンを紹介します。
特別な瞬間ではなく、誰でも目にすることの出来る鹿の当たり前の仕草。
それは、子鹿がピョンコピョンコと弾むようにスキップするように走っている姿。
私が大好きな瞬間。
リンクした映像は、2020年なら燈花会の記録。
https://youtu.be/gKl-qFpxaWo?feature=shared&t=136
(2分15秒あたりからの鹿がそれ)
3頭の子鹿が広々とした春日野園地で楽しそうに飛び跳ねています。
なんとのどかで心温まるシーンでしょうか。
3頭の子鹿は薄暗くなるまで仲良く走り回っていました。
いつまでもこのような鹿が当たり前に見られる奈良公園であって欲しい。
本当にこの3頭の鹿の映像を観ていると、心が締め付けられるほど愛おしくなり、この環境を人間が積極的に守らなければならないと感じるのです。
それが出来るのは、人間だけなのですから。
春日野園地は奈良公園では最も広い場所。春日大社の神山・御蓋山、東大寺大仏殿、興福寺五重塔が見渡せる鹿の楽園。
映像からも分かるように、日が暮れても鹿は山に帰ることはありません。
夜の闇の中であっても群れで芝生を食べていることもあります。
鹿はカラスではないので、日が沈んだからといって直ぐにねぐらへは帰りません。
鹿の主食は奈良公園の芝生だと言われていて、奈良公園の中でも春日野園地の芝が最も生育がよく、人間から見ても美味しそうに見えます。
それは、日当たりが良く、観光客が比較的少なく、芝を日陰にするようなイベントが開催されない、そんな理想的な環境が維持されているからです。
(2023年から春日野園地でなら燈花会は開催されていません)
私にとって春日野園地は奈良公園にとって最後の聖域でもあります。
私は映像作家としてテレビカメラマンとして、奈良公園を見続け撮り続けてきました。
そんな映像を一人でも多くの人に届け、この奇跡の楽園をもっと多くの人に知ってもらいたいのです。明日明後日の奈良ではなく、100年後、1,000年後を見据えて、神様の使いである鹿がガラパゴスのゾウガメにならないように。
*なら燈花会2022:初日_4K
記事中のリンク映像ですが、最初からご覧いただけると嬉しいです。
https://youtu.be/gKl-qFpxaWo
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