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ヤマトノミカタ#47「天日干しの魔法」

「THE世界遺産」ロケでのお話。
コロンビアのコーヒー農園を撮影した。ヘリで空撮すると急な斜面には見渡す限りコーヒーの木。
コーヒー産地の文化的景観として世界遺産登録。
日本の棚田を連想させるように、非常に厳しい地形でコーヒーの木が栽培されている。
コーヒーはコロンビアの主力農業で、日本の農村と同じように家族で営む中小の農園によって支えられている。

番組では数ある農園の中からおじさんが1人で営む農園を取材した。
収穫の時期だけはアルバイト1名を雇っての作業。質素な自宅に一人暮らし。
大きな農園は多くの労働者を住み込みで雇って、作業の多くは機械化されている。
しかし、おじさん1人の農園はすべてが手作業。
コーヒー豆を摘み取って洗浄し乾燥させる作業がある。ほとんどの農園は機械で強制的に乾燥させるが、おじさん1人の農園は乾燥機を購入する資金がなく、昔ながらの天日干しで自然乾燥に頼っている。
時間と手間もかかり、品質を揃えるのは難しい。
それでも出来上がったコーヒー豆の評判はとても良いと聞いた。貧乏が理由で天日干しを続けているが、それが幸いして上質のコーヒー豆が出来る。
この点では日本のお米と同じ。天日干しにより作物の質が向上するのは世界共通のようだ。手間をかけてお日様の恵をいただく。
昔は当たり前だった天日干し作業が効率化と生産量向上のためにコロンビアではレアなケースとなっていた。

日本ではどうか?そう言えばいつの間にかお米の天日干しを見なくなった。
商店で天日干しを売りにした割高な新米を見ることはあっても、風景の中での天日干しは絶滅危惧景観となっている。

奈良で天日干しと言えば、すぐに連想するのが三輪そうめん。
昔は冬の寒い時期に三輪を歩けば、そうめんの門干し(かどぼし)はどこにでもある普通の風景。三輪でのロケでは三輪山、大神神社の大鳥居、そうめんの門干しは冬の風物詩3点セットだった。
今では門干しという言葉もあまり聞かなくなり、天日乾燥ではなく屋内で門干し(乾燥)作業が行われているようだ。

ご紹介する映像は今も昔と同じように天日干しで自然乾燥させた三輪そうめんを製造販売している玉井製麺所。今では奈良県景観資産に登録され、ホームページには天日干しのスケジュールが掲載されている。

私は天日乾燥と機械乾燥の優劣を語っているのではない。どちらも美味しい三輪そうめんを消費者に届けたいとの気持ちは同じ。実際にどちらも間違いなく美味しい。

カメラマンとして思うのは時代の流れと共に昔は当たり前だった風景が見られなくなるのは少し寂しい。そして、昔ながらの製法で三輪そうめんが作られていることは意味のあることだと思う。手延べそうめんの技術が継承されるという点でとても意義深い。

ただ、余談ではあるが、県外の人に「どこのそうめんがオススメですか」と聞かれることは多い。これも好みの問題だが、私の答えは決まっている「三輪素麺工業協同組合の認定品(鳥居印の帯商品)」をお勧めしている。これは個人の好みですが。

*三輪そうめん
https://youtu.be/OahaLoQaOwI

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保山耕一
皆様からのチップは映像作家として奈良を撮影する事に限って活用させていただきます。 撮影での経験をnoteに綴ります。 撮影のテーマは「奈良には365の季節がある」 奈良の奥深さ、魅力を多くの人に届けたいです。