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室井慎次 生き続ける者
2024/12/5投稿
ダメです。
一体何だったのだろう、この前後編は。
敗れざる者も相当どうかしていると思いましたが、それでも本作でのどんでん返しに一縷の望みを託していました。
結果的に、見事に裏切られたと言えます。
というより、そもそも前提を間違えていたということでしょう。
踊るであるならばこうといった、シリーズの延長で刑事ドラマ的展開をイメージしていたことでの肩透かし感。
この2作品はあの世界線、キャラクターを用いた「北の国から」であり、ホームドラマに過ぎないのです。
そこを理解すれば、一応納得はできます。伝えようとしていることも。
でも、でもしかし。
大々的にリブートした劇場版として、このようなものは見たくなかった。
配信でやれよと声を大にして言いたい。
不要な心理描写やまどろっこしい説明が多すぎて、2作品分の尺が必要だったとはどうしても思えません。
既視感のある設定やトラブル、解決手段。
また、”大人はこうあるべき”、”子どもに対してこう接するべき”といった説教臭い思想がそこここに垣間見えることにも辟易します。
そもそも本作で描かれる良い大人像って、一般的に評価されうるものでしょうか。
黙っていて導けるものでしょうか。
どうにも腑に落ちず、良さを感じ取ることができませんでした。
なんだこれはという戸惑い、落胆や悲しみ、虚しさ、やるせなさ。
喜びと楽しみ以外の感情がないまぜになって胸中を占める、そんな映画体験でした。
そのためか、ラストのサプライズも盛り上がることなく、はいはい、そうでしょうね、としか思えなかったのが非常に残念。
言うまでもありませんが、前編から引っ張ってきた事件のオチがこれかという点も。
しかも真相は不明瞭でますますモヤる。あの前置きって必要あったのでしょうか。
約束を守らない男、室井。
ひたすらにこすられる青島との約束、きりたんぽの約束。そこに「リクは私が育てる」が加わりました。
とくに今回はあまりにも無責任な着地となっており、宣言した直後にあの展開はあまりにも。
なんのための物語だったのだろうと首を傾げます。
厄介なよそ者とはまさにその通りなんですよね。
死体は見つかり、監視カメラがそこら中に設置され、火事を起こし、遭難し、子どもたちを残す。
そのたびに多くの人が駆けつけ、対応に追われる。
そんな人、周りにいますか。いません。
すべてに悪気がない分、余計にタチが悪く、コミュニケーション下手も相まって本当に厄介。
なぜこうまで不器用かつ迫害される側に非があるかのような設定にしたのでしょう。
する側に一理あると思わせる時点でどうかしてるとしか。
食事シーンを多用する割に、さほど効果的でないことも気になります。
家族の関係性と状況をステレオタイプ的に捉えているだけで、そこから伝わる情報があまりにも少ない。
会話に主眼が置かれすぎて、箸をつけない食事シーンほど鬱陶しいものもありません。
人々の心のなかで生き続けるとでも。
もはや予告編は優良誤認ではないでしょうか。
一体、何だったのだろう。