ほやたろう

アフター6ジャンクション2のコーナー、週間映画時評 ムービーウォッチメンに送付した感想…

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アフター6ジャンクション2のコーナー、週間映画時評 ムービーウォッチメンに送付した感想メール公開用。 原文ママ。木曜に先週分を公開。 メール投稿用の文章って、記事としては読みにくい。ネタバレお気をつけください。 文章書く用 https://note.com/kuronokou/

最近の記事

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

2024/10/24投稿 ほめです。 ですが、純粋に面白かったかと問われると言葉に詰まります。 色々思いを馳せた結果、あとからじわじわくるパターンです。 人生の底にいるかのようなわびしい男が、ある意味で夢を叶えた前作。 一方、物語の続きとして新たな生きがいを見つけるも、演じるということ自体を諦めてしまった本作。 それはいわば、本質的に陰と見せかけた陽の話と、陽と見せかけた陰の話という、きれいな表裏一体のストーリー構成になっている。 さらに、どちらも「人生とは」というテーマ

    • シビルウォー アメリカ最後の日

      2024/10/17投稿 ほめです。 自分なら、どういう選択をするのか。 法が機能しなくなれば、人間社会はこうまでも野蛮で粗悪なものに成り下がるのか。 もしも、という思考実験が見せるやだみにおいて、切り口は違うが「ニューオーダー」のディストピア感も連想する。 あちらは社会が変貌した末に人間がいかに醜悪となりうるかが強烈だったが、本作はそのような状況下でどういった選択をするのかという部分に焦点が当たっている。 そのため、起きてしまったことへの良し悪しは語られておらず、徹頭徹尾

      • 侍タイムスリッパー

        2024/10/10投稿 ほめです。しかし残念な部分もあります。 ややこしいことは何一つ起こらず、それこそ時代劇における勧善懲悪を地で行くかのような、ストレートなタイムスリップ物。 手垢がつきすぎて誰もやらないネタが、枯れた技術の水平思考よろしく、驚くほどまともな仕上がりとなっています。 やはり主役である山口馬木也の演技力があればこそで、彼なしでは到底これほどの盛り上がりは見せなかったでしょう。 今年から始まった鬼平犯科帳の「本所・桜屋敷」での演技が記憶に新しいですが、本職

        • スオミの話をしよう

          2024/10/03投稿 ダメです。 舞台向けの脚本を映画に翻案した、誰しもそんな印象を受けたのではないでしょうか。 それほどに会話劇が全体を占めており、セリフは説明的で回想シーンを除けばほぼ屋敷での長回しです。 三幕構成における設定の部分に大きく時間を割き、また、アイリスアウトの多用など映画の歴史に対するリスペクトと言えば聞こえはいいけれど、それが本作のエンタメとしての面白さにはつながっていません。 のめり込めるような展開にも至らず、ただひたすら”スオミ”に対する執着の提

        ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ

          ナミビアの砂漠

          2024/09/26投稿 ほめです。 前半の恋愛における疾走感、そして小気味良いタイトル以降の倦怠感や暴力性、虐待とも取れる支配欲の対比は苦しい。 とはいえカナとハヤシの間で成り立つ関係性は、ある意味釣り合っているのでしょう。 しかしながら、ここまでの尺が必要だったかという疑問もあります。 行き場のない、解決もしない感情が多すぎて、ちょっと胸焼けします。 同棲を始めてから一転して、主に癇癪と暴力が描かれます。 その内容自体も理知的なものではなく、カナの感情のストレートな発

          ナミビアの砂漠

          エイリアン ロムルス

          2024/09/19投稿 ほめです。 正直、期待以上でした。 OPからタイトルまで文句のつけようがなく、むちゃくちゃ洗練されており、この時点で5億点やも……と。 また、植民地のルックや宇宙船の雰囲気等々、直近でStarfieldにのめり込んだプレイヤーであればものすごい既視感と心地よさを味わうことができます。 1への多大なオマージュもさることながら、まるでゲームかのようなステージ設定と、段階的なミッション、攻略のための試行錯誤。 人間関係については必要最低限の描写に抑えられ

          エイリアン ロムルス

          ランサム 非公式作戦

          2024/09/12投稿 どちらかといえばほめですが、良くない点が目立つ映画でした。 外交官の脱出というと「モガディシュ」が思い出されますが、比較すると今作はそこまでシリアス路線でもなく、とはいえファンタジーにもなりすぎず。 「神と共に」ぶりの、主演2人の掛け合いに重きをおいた形で構築されていると感じました。 違った個性を持つバディもの、困難を乗り越えていく中育まれる友情云々といった流れは容易に予想がつきますが、いかんせんイ・ミンジュンが冒頭でかますムーブの卑屈な小物感が

          ランサム 非公式作戦

          モンキーマン

          2024/09/05投稿 どちらかといえばダメでした。 ヒット作の何番煎じかと思える部分もあるものの、要素ごとに考えてみれば王道な展開であり、一定以上面白くなるはずなのですが。 しかしながら、全体を通してどうにも盛り上がらず、テンポが悪い印象でした。 見どころ毎に高まったテンションが続かない構成であり、退屈さすら感じる場面もあったのです。 作中でも言及されていたジョン・ウィックと比較すると、やはり力不足が否めません。 ああいった外連味とエモさ、アクションに振り切った作風と

          インサイド•ヘッド2

          2024/08/29投稿 どちらかといえばほめですが、感情のキャラクターが増えたことにより、とっ散らかった印象も受けました。 そしてライリーのあまりの痛々しさに、共感性羞恥がバシバシ刺激されるスリリングな内容です。 なんだか生存のための苦しさ詰め合わせで、辛い。 10代のあの頃にしかない感情の乱高下や身体の変化。 大人になってしまえばそんな事もあったくらいのものですが、誰もが通った道である分、共感は得られやすいでしょう。 だめな自分も受け入れるという自己肯定は、諦めととも

          インサイド•ヘッド2

          フォールガイ

          2024/08/22投稿 ほめです。 ブレット・トレインぶりのデヴィッド・リーチ監督の新作は、自身のキャリアを主役2人に託したなんとも解像度の高い作品となっています。 劇中では愛ゆえにという行動原理が一貫しており、それは映画の裏側と、そこで描かれる人々の情熱と狂気が垣間見えます。 そして、映画というものはこう作られているという状況説明を逆手に取り、それを一周回ってエモく描写するというロジカルな魅せ方。 オペラハウス前の海から上がってくるシーンや、ヘリからの落下シーンなど大変

          フォールガイ

          ツイスターズ

          2024/08/15投稿 ほめですが、ちょっと引っかかる部分もありました。 シンプルでテンポが良かった前作と比較して、やはり冗長だった印象は否めません。 つながりといっても冒頭のドロシーくらいのものですが、中盤に至るまでの構図と展開は踏襲しているといってもいい。 そのうえでケイトの内面、トラウマに深く迫る脚本であり、それは現代的にチューンされた人間関係の上に成り立っています。 とはいえ、タイラー、ハビとの三角関係は必要性をさほど感じず、ちょっと筋がぶれていないかとも。 また

          ツイスターズ

          デッドプール&ウルヴァリン

          2024/08/08投稿 ほめです。 正直めちゃくちゃおもしろかったです。 しかし、これはメタやサプライズの部分が大半を占めており、ストーリー自体はものすごくありきたりともいえます。 そうとは感じさせない様々な要素に彩られた稀有な作品であることに違いはないのですが。 めでたくMCU入りを果たし、今後X-MENも合流する流れはファンにとってたまらない展開ですよね。 デッドプール過去2作で行ってきたウルヴァリン、ヒュー・ジャックマンネタが結実した本作。 有終の美を飾っていた「

          デッドプール&ウルヴァリン

          ロイヤルホテル

          2024/08/01 どちらかというとほめです。 辛く厳しいワーキングホリデーにようこそ。 ハンナとリブの感じる恐怖、感覚を体験できます。 時として演出や画角、音楽がホラーのそれで描かれるので、人というものはなんと不可解で恐ろしいものかということを、まざまざと見せつけられるのです。 ところが、一概に主役2人が可哀想、とは言い切れない絶妙なバランスとなっているのも確か。 それは誤解を恐れずに言うのであれば、自業自得としか思えない描写も多々あるからに他なりません。 ハンナと

          ロイヤルホテル

          密輸1970

          2024/07/25投稿 どちらかといえばほめです。 世にも珍しい一大海女スペクタクルであり、ここまでどんでん返しありのストーリーとは思いもよらず。 クライムアクションではあるが、そこまで真面目な設定でもない。 やはり、全体的にコミカル路線であることは間違いないです。 チュンジャとジンスクのシスターフッドは主題といってもよいもので、愛憎は表裏一体。 尊いなどというつもりはないが、目的が一致してからのバディ感あふれるムーブは見ていて心地よかった。 また、上映回数が少ないため

          フェラーリ

          2024/7/18 どちらかといえばほめです。 伝記映画ではあるものの、なんともドラマ仕立てであり、エンツォ・フェラーリという個人、会社に起きた事実をエンタメとして切り取る。 フェラーリのみならず、マセラティ、フィアット、フォードといった、現在でも残り続ける一大メーカーのそうそうたる顔ぶれ、実在の人物たち。 史実が、演出、音楽、構成でフィクションの様相を呈する。 マイケル・マン監督が製作総指揮であったフォードvsフェラーリも念頭におきつつ、一個人の悩みも苦しみも、情熱の2文

          ルックバック

          2024/07/11投稿 ほめです。 ひたすら背中で生き様を見せつけるマンガことルックバック。 コマ間を想像で補完していた部分が余すことなく映像化され、解像度が大きく上がった。 積み上げる姿をこれでもかと言わんばかりに提示されるのだが、 京本との初邂逅後、雨の中走り出すシーンに思わず落涙。 努力が誰かに認められることほど深く喜べることなどこの世に存在せず、それまでの背中が報われる瞬間のカタルシスたるや。 また、藤野と京本の関係性が強調され、手を繋ぐシーンや木を挟んだ会話など

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