ロイヤルホテル
2024/08/01
どちらかというとほめです。
辛く厳しいワーキングホリデーにようこそ。
ハンナとリブの感じる恐怖、感覚を体験できます。
時として演出や画角、音楽がホラーのそれで描かれるので、人というものはなんと不可解で恐ろしいものかということを、まざまざと見せつけられるのです。
ところが、一概に主役2人が可哀想、とは言い切れない絶妙なバランスとなっているのも確か。
それは誤解を恐れずに言うのであれば、自業自得としか思えない描写も多々あるからに他なりません。
ハンナとリブの対比が、より状況を悪化させていきます。
一見、適応していくリブ、拒絶しているハンナという形に見えます。
しかし、明確にストレスを溜め込んでいって、自身が保てなくなっているのはリブの方なんですよね。
忘れてはいけないのは、冒頭のシーンなどから垣間見える、2人の性格や性質。
性というものに対して真面目なのはどちらの方なのか。
そして、楽しい旅行を続けるために手っ取り早く金を稼いで、さっさと先に進もうという都合の良い仕事への向き合い方。
この状況から察するに、本質的にはハンナの方が奔放であり、リブはそうでもないという点を頭においておくべきです。
ストレスに対応できなくなっていくリブが不安定になっていく様は、もっとも注視しておくべきポイントではないでしょうか。
絶対に受け入れられないことや、価値観にそぐわず嫌な気持ちになることは、どのような場所においても起こり得る。
それは人や土地、国を問わず、人間関係が発生する以上、避けては通れない。
基本的に我々は”普通とされているもの”という曖昧なものさしで世界に対応するが、その尺度は万能ではありません。
差異はあって当然であり、それ自体が命にすら関わるものだったりもします。
その上、アップデートされないままのPCのような、とんでもない状況に直面することだってあるわけで。
このような状況で、主役2人にふりかかる性の搾取、侮蔑や差別は見ていて胸が苦しい。
しかし、これは私達が良しとするものさしで見ているからであって、この尺度が違えばなんの違和感もなく受け入れる人が存在するであろうという事実。
分断された世界で何をもって正しいとするべきなのか。
幕引きはとっても爽快。
クソみたいな価値観、場所を文字通り盛大に炎上させる。
とはいえ復讐を果たしてしまったとなると、ちょっと印象が変わってきます。
被害者とはくくれなくなってしまうという側面もあるのではないでしょうか。
最後まで燃える音が続くことでの、あの余韻。
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