ランサム 非公式作戦
2024/09/12投稿
どちらかといえばほめですが、良くない点が目立つ映画でした。
外交官の脱出というと「モガディシュ」が思い出されますが、比較すると今作はそこまでシリアス路線でもなく、とはいえファンタジーにもなりすぎず。
「神と共に」ぶりの、主演2人の掛け合いに重きをおいた形で構築されていると感じました。
違った個性を持つバディもの、困難を乗り越えていく中育まれる友情云々といった流れは容易に予想がつきますが、いかんせんイ・ミンジュンが冒頭でかますムーブの卑屈な小物感がすごい。
嫌悪感すら感じてしまうとある行動があるのですが、その印象が強すぎて出世欲にかられた嫌な男にしか見えません。
これが後半にかけてのギャップとしてうまく機能しておらず、兄貴分としての責任や義憤にかられて自らを犠牲にするという流れに若干白けるというか。
成長譚と言うよりは、アドレナリンが出て利己的な判断ができなかっただけではないかという風に感じてしまう。
キム・パンスのキャラクターで中和されていますが、主役として魅力がある人物像ではないんですよね。
正直、中盤に至るまではさほど盛り上がるシーンもなく、ただひたすら右往左往するイ・ミンジュンに不安しかありません。
また、タイトルになっているランサム、身代金という重要なファクターが後半以降は機能していないのも肩透かし。
提示されていた人質救出までの制限時間もその後言及されなかったのは、不要な設定だったのではないでしょうか。
ところが、暗号でオ・ジェソクの心を開かせる辺りから風向きが変わってきた印象がありました。
孤立無援となり3人で脱出しなくてはならなくなってから、見どころといえるシーンが多数出てくるのです。
あまりにも博打すぎるハシゴ渡りや、運任せのビル降下。
到底当たるとは思えない距離でのハンドガン狙撃や、泥臭いカーチェイスもまあ、お約束どおりで悪くありません。
あとに引けない状況でメディアに訴える機転は脚本としてよくできていると思いますし、安易な生還とならなかったのはちゃんとしてるなと。
しかし、実話ベース物にありがちな、その後どうなったかのエピローグが割と胸糞悪い話で、結果後味が悪い。
救出に命をかけた面々も報われたとは言い難く、外交官たちの思い、訴えも国家繁栄のためには些末なことと言わんばかり。
「ハント」における安全企画部のことを思い返せば、さもありなんといったところでしょうか。
この肌感覚は、あの時代を取り上げる韓国映画、とくに政治がらみなサスペンス物の基本概念と言ってもいいかもしれません。
そのモヤッとした気持ちが、本作のイメージを決定づけてしまったんです。
2047年に情報開示された頃、また取り沙汰されたりするのでしょうか。
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